見出し画像

定性調査を実効性高く楽しくやるために(2)

続きは4)インタビューフローからですね。

1)背景や目的を定める
2)誰を呼んで/どんな話を/どういう形態で聞くのかの概要をまとめる
3)スクリーニング調査をかけて対象者を集める
4)インタビューフローを決める
5)日程やオペレーションを定め、見学者を集める
6)実査を行う
7)実査と同時に解釈のすり合わせを行う
8)報告書をまとめる

そもそもインタビューフローを作成する前に、インタビューは誰がやるのかを決める必要があります。これは2)のパートで決めておくのですが(書き漏れですごめんなさい)、大まかに

①モデレータ外注 × 売り手側インタビュー参加
②モデレータ外注 × 売り手側見学のみ
③モデレータ売り手

の3パターンのうちいずれかから選択します。
状況によってどれを選択するかは様々ですが、事前知識として持っておくべきことは、プロのモデレータはインタビュースキルに強みがあるが実務に精通しているわけではない、ということです。

従いまして、必ずしも調査テーマになっている課題感を共有してくれるわけではなく、これがインタビューの最中に頓珍漢なモデレーションに繋がる可能性もなきにしもあらずです。一方で、インタビューのプロフェッショナルですので、誘導尋問的な変な質問を入れないとか、そもそもちゃんと打ち解けた雰囲気をつくるとか、インタビューに諮る商材と冷静な距離を保てるとか、メリットも計り知れません。

私個人としては②を選択することが多いです。この場合、我々売り手側はインタビュー対象者と接触はせず、実査を別室から見学することになりま す。聞きたいことをその場で即座に聞けるようなフレキシビリティが多少犠牲になりますが、商材に対する忌憚のない意見が聞きやすく(誰しも開発者を目の前にその商材の悪口は言いにくい)、解釈に全力を注ぐことに集中しやすいという利点がありま す。じっくりインサイトを考えたいときには最適と思います。

ただし、これにはモデレータに調査の背景や目的、課題感、インサイト仮説などを相当しっかり事前インプットすることが必要となります。モデレータにインタビューフローに書かれたこと以上のことを聞いて欲しくないならば別ですが、それだと定量調査で自由回答を取得しているのとあまり変わりません。モデレータには、会話の流れをより筋の良い方向に向けて欲しいですし、瞬間瞬間の判断はこれら事前知識を解像度高く持ってもらわないとできません。とにかく、調査の背景と目的をはっきりさせるのは大切です。

※宣伝

なお①は顧客と共創したいとき、③は簡易的なインタビューや、逆にUXリサーチなど観察まで伴うものの際に選択することが多かったです。
このように自分がインタビューするときに気をつけることは、インタビューフローをどうつくるかと被るところが多いので、その話に移ります。

インタビューフローはモデレータが参加する場合はモデレータに作成をお願いし(もちろん後でチェックしてすり合わせます)、自分がモデレーションするときは自分でつくりますが、だいたい以下のパターンになりますね。

I.自己紹介など、打ち解けた雰囲気をつくる
II.調査テーマに関する普段の関与、行動を聴取する
Ⅲ.調査テーマそのものについて聴取する
Ⅳ.必要に応じて派生情報的なものを聴取する

例えば、ある商材に関するCMについての調査ならば、

I.自己紹介など、打ち解けた雰囲気をつくる(ここは共通)
Ⅱ.ある商材のことを知っているか、使っているか、好きか、周りの人はどう関与しているか、などを聴取する
Ⅲ.ある商材のCMプランを見せて、評価を聴取する
Ⅳ.競合他社の製品やCMで気になるものがないかを聴取する

などが考えられます。

なぜⅢの前にⅡを聴取するかですが、例えばⅢしか聴取しないと、それはほぼYES/NOの回答を得るだけになります。定性調査の目的の多くは顧客インサイトを見出すことですから、単にYES/NOだけ聞けても意味はありません。それがどんな価値観や原体験などに紐づいているのかを解きほぐしていく必要がありますので、IIのパートは不可欠となります。

逆に、インタビューフローをつくっていて、YES/NOの回答を得るだけになっているようでしたら、そのインタビューは割と高い確率で失敗に向けて驀進していると考えていただいて、ほぼ間違いないと思います。これははっきりとした危険信号です。すごく売り手のわがままな目線(≒顧客に答えを教えて欲しい)に基づいたインタビューフローになっています。

もっとも、調査の背景と目的がしっかりしていれば、YES/NOの回答を得るだけでは不十分との判断は自然になされると思います。その情報だけで、意思決定はできませんものね。

このような売り手目線の質問は油断するとすぐに顔を出して来るもので、典型的な例としては「何で○○を買わなかったのですか?」とか、もっと極端な例だと「なぜ×× に興味を持たなかったのですか?」という質問が挙げられます。

この質問を、仮に自分がされたと考えてみましょう。
自分が顧客の立場に回った時に、その商材が積極的に嫌いなので買わないケースは別にしますと、買わない理由や興味がない理由を合理的に説明できないことに気づかれることと思います。

このような質問のリクエストをもらった場合、私はよく「例えばあなたが結婚式のお土産で頂いたカタログの、3ページめ左下の商品を選ばなかったとして、その理由を説明できるのですか?」と返します。
そりゃ無理ですよね。

自分たちが精魂込めてつくり上げた商材やサービスがマーケットでは興味すら持たれないというのは、それがある意味で普通のこととはいえ、作り手としてはやはり辛いものです。だから売り手としてこの理由を聞きたい気持ちは痛いほど理解できるのですが、マーケティングは顧客目線に立たなければなりません。こういった売り手目線の質問はNGです。

ちょっと長くなりましたので、キリが悪くて申し訳ありませんが次回に。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?