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50代で田舎に移住&再起業した元金融マンが語る、起業にいちばん大切なこと。

※2023年10月21日に配信されたトークライブ「くらしとしごと」をもとに構成されたコンテンツです。


トークライブ「くらしとしごと」とは

世界にはひとの数だけ、「くらし」(ライフ)と「しごと」(ワーク) の形がある。そのひとつひとつにスポットライトを当て、生き方のヒントを探るシリーズ企画です。

兵庫県のまんなか、神河町に拠点を置くOFFICE KAJIYANOが企画。2018年にスタートし、コロナ期を経て2023年からは月1ペースでインスタライブにて発信中! @office_kajiyano

Staff
動画撮影 @hiro78_2
フード @meguri.handmade

Creator
たねまを @tanemaooo  (グラフィックレコーディング)

#22 ゲスト:藤田実さん(株式会社Dreamaway専務取締役)

金融系企業での営業職やSE職を経て、独立。私立保育園のフランチャイズ運営や不動産管理事業を軸に事業を伸ばすも、公私の転機がおとずれ会社を譲渡。50代でゼロから兵庫県神河町に移住し、再企業。現在はイオン社と連携し独自の地域ネットワークで音楽等のイベントや催事を企画運営するほか、兵庫県神河町の「グリーンエコー笠形」@green_echo_kasagata、同町の旧上小田小学校校舎を活用した体験型教育施設「碧河舎(あいこうしゃ)」も手掛けるなど中山間地域におけるアクティビティ活動や教育フィールドの可能性を広げるビジネスも展開している。


起業は、誰でもできるのか?


世の中には、「持ってる人」がいる。そう確信させられるのが、今回のゲストである藤田さんだ。

「そのときそのとき、どんな状況でも楽しめる性格してるから楽なんやろな。なんとかなると思ってる」

それはきっと、”成功者”に必要なマインドであり、運の神様にも好かれる姿勢なのだと思う。


運の神様


トークライブ収録後のこと。

歓談のさなか、藤田さんの手が当たり、三脚がコーヒーカップの真上に!

だれもが悲惨な光景と拭き掃除を覚悟したその瞬間、意思を持っているかのように三脚は取っ手の横をするりと抜け、机に着地した。

無事。

無事・・・?

キョトンとする一同。

「あぁ〜、こういうことよくあるんよ」

論理を超えた説得力

ロン毛のまま面接に行ったのに採用された金融機関からキャリアをスタートし、金融機関を渡り歩いていた37歳のときにはバイクで全損事故。

その際にも、一命を取りとめたどころか、「ボンネット越しにポーンと飛び越えて、道に立ってた」

運なのか、「運」動神経なのかはさておき、その事故がきっかけで「いつ死ぬかわからない。好きなことしよう」と思い立ち、藤田さんの人生が大きく変わっていったのだという。


「起業して、やること」は向こうからからやってきた。


「好きなことをして生きていく!」と決めたものの、具体的なアテはない。

「何しよ。できることもない。資格もない」

サラリーマンを続けながら、たまたま新聞広告で目にしたのが認可外保育園のフランチャイズ事業

当時はバブル崩壊後。なかなかお金を貸してくれない銀行に通い、事業計画を書き、なんとか調達できたのが500万。

「絶対計画通りにはいかない。銀行もわかってる。だけど、それだけの気持ちがあるなら貸そうとなる」

借入金を元手に営業を始めたものの、人件費や固定費がかさみ1年ほどで早くもピンチに・・・。

「どうしよう!」

さすがに焦ったものの、「高級車1台壊した程度と思って開き直ったら、とたんに黒字になった」のだそう。

グラフィックレコーディング泣かせの謎エピソード

姫路でスタートした事業所が軌道に乗り、加古川に2店舗目。そのタイミングで、グループから脱退・独立。

「自由になった!」

藤田さんの人生の、次の扉が開いたのだった。


遊ばなあかん。

元はドラマー。会社が回るようになると時間も生まれ、音楽活動を再開。すると、仲間からレコーディングやライブのサポートで入ってほしいと声がかかるようにも。

今は少し落ち着いたそうだけど、音楽のほかにも、ダイビング(ライセンス保持者)。冬はスキーやスノーボード。

「遊んでても、頭が常に仕事モードになっちゃうんやけどね。スキーやスノボしてても、こんな音楽流れてたらいいな!とか思う」

「いま自治体の指定管理の仕事してけど、普通に遊びに行っても指定管理の施設を見ちゃう。で、ホームページで、自治体からいくらもらってるんやろうとか見て(笑)」

そう、ご本人曰くの「出たとこ勝負の人間」であり天才肌ではありつつも、何も考えていないわけではないのだ(失礼)

「日本の教育って、遊びを否定してたときあったでしょ?でも、遊びは大事。遊びから生まれるものが絶対あるから」

筋金入りのJeepオーナー。Instagram @theplatinumage_ より

恩返しの50代(移住・再起業)


藤田さんは、50代のはじめに、当時20歳だったご子息を喪っている。

「それまで好き放題やってきた。勉強もせず、努力もなく生きてきたけど、これからの人生はお返しやと。こどものためになる、役に立つことをしたいって思い立って」

自然豊かな兵庫の丹波篠山で子ども向けの施設運営に携わりながら、ドラム教室や金管バンドのコーチも。現在も、廃校を活用した体験型教育施設を手掛けるなど教育に軸足を置いている。


現在の拠点である神河に移り住んだのは54歳のとき。空き物件を訪れた際、景色をみて一発で気に入った。

「家の中も見ずに、ここ!って決めて」

写真はイメージです

もともと生き物に関わる仕事に就きたかったこともあり、「いつかは農業をしたい」「いつかは自然の多いところで暮らしたい」と若い時から移住先を探していた中での出会い。

「近所の人が野菜くれるのとか本当に嬉しくて。帰ったら食べものが冷蔵庫に入ってることもあったり(笑)」

「楽しく暮らさせてもらってるけど、生かせるものいっぱいあるのに、もともと住んでいる地元の人が気がついてなかったりするよね」

「地域が元気になるような役に立ちたい」

その眼差しは、惚れ込んだまちの未来に向けられている。


若い人のやることに手を出したらダメ。

「昔の人は55歳で定年。だから55過ぎたら引退させてくれとずっと言ってきた」

予定よりも少し延びたものの、60歳を過ぎ正式に引退。年齢を重ね、影響力を持つようになったからこそ、若い人の壁にならないよう心掛けているという。

「ある程度歳いくと、昔のくだらん肩書きを見てほしいお年寄りがいっぱいいる。そうはなりたくない」

「年寄りが考えて、経営に口を出したら絶対ダメ。若い子の方が市場のニーズや世の中の動向わかってる」

「質問とかあった時には返してあげる。だけど、こうしたほうがいいよ、やめときなさい、とか自分から言ってしまうと違う。そこはぐっと我慢して」

その哲学は、死生観にも及ぶ。

「死に方も決めてる。財も残さず名も残さず、大木が朽ち果てるように死にたい。みんなから忘れ去られて」

「動物でありたい」

不謹慎かもしれないけれど、そのことばを聞いたとき、眠るように生をまっとうした荒野のライオンを思い浮かべ、「なんだか似合うなぁ」と思ってしまった。


起業において大切なものとは?

さいごに、藤田さんが考える起業のポイントを聞いてみた。

①パートナーの存在

「ひとりで思いつくこと、できることには限りがある」

「結婚してから独立しようとするなら、理解してもらうのが大事。今から結婚をするなら、どんな人をパートナーに選ぶか」

「その子といて、何ができるかと考えて、価値観というのか、ぴったりだ!と思える人といると起業もうまくいくと思う」

たしかに、配信中も奥さまからは合いの手やコメントが続々届き、お二人の信頼関係や結びつきの強さが感じられた。

「ぜったい一度は結婚したほうがいいよ」

「あ、今こんなこと言ったら炎上するんかもしれんけど」

(たしかに・・・)

②気持ちの余裕

「起業するためには、自分に何ができるやろ?を考えるだけでいい」

ニュートラルに手広く構えて、チャンスがやってきたら、自分の個性や能力をどう生かせるか考える。

「あとは、失敗してもなんとかなるわと思えること。仕事選ばなければ、絶対食べれるから。そう思うと気が楽。」

「自分はこれしかイヤ!これしかできん!って思うと、起業は難しい。日雇いでもなんでもしたらいい と思っておけばいい」

意外と人間生きていける、と。

③創造的であること

「いま、ITやコンピュータ関係のキャリアを選ぶ子が多いけど、その仕事の多くはAIに取って代わられると思う」

「どんなジャンルでも、創造的であるかどうか。デザインにしろコピーライターにしろ、AIでは書ききれないものがあるやろしね。文法どおりにならないことがある」

「そっちを選べば、きっと仕事はある」

大丈夫な気がしてくる不思議。

エピローグ

「今やってるバンドって、18歳のときに1年だけ組んでたメンバーが集まってるんよ。すごいでしょ?」

「でもおじいさんやから、すぐ忘れる。前回こうしよ言うたやん!って(笑)そしたらピアノの嫁が、『介護しとんちゃうんやで!』ってツッコむっていう」

藤田さんの人生は、いつも楽しそうだ。

「出たとこ勝負。起こってから考えたらいいやん」「すべての責任を自分に向けると楽になる」

さらりと言いのけつつも、そのことばには、楽しむための覚悟ともいうべき熱と力が宿っている。

「起業を考える人の参考に」という趣旨だったのに、聴けば聴くほど「再現性がない」と感じてしまった今回のトークライブ。でも、それこそが起業の真実なのかもしれない。正解もないし、誰かのコピーもできないけど、正しく自分の現実と向き合い、進んでいけば悪くはならない。そんな風に背中を押してもらった気がする。

クドカンのドラマ『不適切にもほどがある!』じゃないけれど、世代を超えて知見をクロスオーバーするのって面白い。そしてありがたい。

「若い人がやることには口出ししない」とのことだけど、相談には乗ってくださいね。

今回のおやつ:米粉のパウンドケーキ

Information

藤田 実(ふじた みのる)
@super_zy_zy

▽グリーンエコー笠形(兵庫県神河町)
@green_echo_kasagata

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