弁理士が、ドラマ『それってパクリじゃないですか』を全話観た話(※ネタバレ少々あり)
メインキャラが弁理士のドラマ
連続ドラマでは、弁護士が主要キャラクターとして登場するものが多いです。それ以外の士業は影が薄い印象です。
特に弁理士は、知的財産権(知財)という抽象的なものを扱うため、娯楽作品にしにくいと思っていました。
https://www.ntv.co.jp/sorepaku/
2023年4月~6月、弁理士がメインキャラのドラマが放映されました。
『それってパクリじゃないですか』です。
飲料メーカー「月夜野ドリンク」に新設された知財部に異動した藤崎亜季(芳根京子さん)と、親会社から出向してきた弁理士の北脇雅美(重岡大毅さん)が、知財トラブルを解決していく話です。
各話に出てきた知財関係の用語など
毎回、知財の専門用語などが出てきました。
セリフに知財用語があると、ついつい身を乗り出してしまいました。
※ネタバレに通ずる部分があるため、ドラマ未視聴の方はご注意下さい。
第1話
冒認出願、先願主義が出てきました。
冒認出願…登録が認められるべきでない特許出願です。
盗んだ発明を第三者が勝手に出願した場合などが、該当します。
ライバル会社の、キラキラボトルに関する特許権が、冒認出願でした。
先願主義…同じ発明をした人が何人かいた場合に、一番先に出願した人に特許権を与えることです。
北脇が言っていた「陣取り合戦」ですね。
対立する理論として、一番先に発明した人に特許権を与える「先発明主義」があります。
第2話
商標権侵害訴訟をするか否かで、揉める回でした。
訴訟以外の手段として、「不正使用取消審判」も出てきました。
不正使用取消審判…自身が持っている商標権を、他人の商標と混同させるなど間違った使い方をした場合に、その商標権を消滅させる手続きです。
「緑のオチアイさん」と「緑のお茶屋さん」が混同を生じさせていた場合は、審判を請求できたかもしれません。
第3話
先行特許を調査するツールとして、Jプラットパットが使われていました。
Jプラットパットでは、発明の名称の他、出願人名や番号などでも特許権を調べることができます。実用新案権、意匠権、商標権も調べられます。
私は毎日使っているので、亜季が使っていると親近感が湧きました。
第4話
商標権の「区分」の話が出てきました。
区分…商標を使う商品やサービスの範囲です。
商標登録出願の際には、必ず区分を指定します。
区分が違う商品・サービスは、原則として似ていないと判断されます。(例外もあります)
同じ商標「ツキヨン」について、違う区分で出願すれば大丈夫です、と亜季が親会社に説明していました。
第5話
分割出願が出てきました。
分割出願…特許出願に複数の発明がある場合に、その一部を新しい特許出願にする手続きです。
拒絶理由通知への対応に悩んだ亜季達は、分割出願で解決へと導きました。
第6話
新規性喪失の例外、営業秘密が出てきました。
新規性喪失の例外…特許出願が登録になるようにする手続きです。
原則は、公に知られた(新規性がない)発明は、特許出願しても登録されません。
しかし、「出願人自身が学会で発表した」などの一定の理由がある場合は、救済する必要があります。
所定の書面を提出することで、特許庁の審査において、自身が学会発表した発明を、公に知られた発明から除外してもらえます。
学生達と亜季達は、炭酸飲料の発明をいつ特許出願するかで、対立しました。
営業秘密…秘密として管理されている、事業活動に有用な情報(公然と知られていない)です。
北脇は月夜野ドリンクの技術のひとつを特許出願せず、営業秘密として管理することを選びました。
第7話
虚偽表示の罪が出てきました。
虚偽表示の罪…特許発明でない製品に、「特許取得」と表示を付けた人に課される刑事罰です。
3年以下の懲役、又は3百万円以下の罰金が、課されます。
北脇の上司・又坂先生は悪徳企業に、さらっと恐ろしい事実を告げていたことになります。(相手は全くひるみませんでしたが)
第8話
手続補正書が出てきました。
手続補正…特許出願の内容に不備がある場合に、一定の条件下で修正できる手続きです。
ドラマでは、この制度が悪用され、出願人の名義が勝手に変えられてしまいました。
第9話
スーパー早期審査が出てきました。
スーパー早期審査…特許出願した発明が登録にふさわしいか、特許庁に見てもらう制度「出願審査請求」のひとつです。
特許出願は、審査を経て問題がないと判断されなければ、登録されません。
スーパー早期審査は、通常の出願審査請求よりも早く判断してもらえるので、早く特許権を得られるメリットがあります。
月夜野ドリンクから漏洩した技術は、スーパー早期審査を経て登録されてしまいました。
第10話
第1話と同様、冒認出願が出てきました。
第1話では、技術漏洩の疑いをかけられおどおどしていた亜季。
第10話では営業秘密を漏洩させた張本人に対し、涙ながらに説得を試みていました。一皮向けた印象を受けます。
まとめ
抽象的な知財が、こんなに面白いストーリーに組み込まれることに、感銘を受けました。
また、優しいけども流されやすかった亜季が、最終話ではきちんと意見を言えるようになる過程は、清々しかったです。
そして、「緑のお茶屋さん」「グルっとヨーグル」「カメレオンティー」などの飲料が、とにかく美味しそうでした。
日テレさんには、続編を製作して欲しいです。
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