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砂の惑星 では 水が富です

 映画「砂の惑星」の映像がすごかったです。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の他の作品の「ボーダーライン」も面白かったですし、「メッセージ」も良かったです。映画「砂の惑星」の続きが知りたくて小説の方を読みました。その感想です。

 砂の惑星とは文字どうり地表の大部分が砂漠の惑星です。そこに住む独特の文化を持つ砂漠の民の様子がよく書かれています。その砂漠に住むサンドワーム巨大な砂虫(サンドワーム)が移動する描写は面白いです。サンドワームはナウシカの王蟲のイメージのもととなったとも言われています。

 惑星全体が砂漠なので当然のことながら水が貴重です。人体にある水もその人の財産のうちに数えられます。そんな中でもコーヒーが飲まれるのです。私は毎日コーヒーを3杯くらい飲むのでコーヒーの描写には敏感になります。例えばその場面を引用してみたいと思います。

  コーヒーをたのもうと思いたち、その思いとともに、フレメンの生活様式の中でつねづね気になっている矛盾を改めて感じた。地溝地帯に住む基底民とくらべて、シチエの洞窟系に住むフレメンはなんと豊かな暮らしを送っているのだろう。といっていも、フレメンが新たな住居を求めて砂漠の聖探を行うさいに耐える苦労は、ハルコネン家の奴隷たちが耐えるどんな苦労よりもはるかに大きいのだが。
ふいに、そばの垂れ幕のあいだから色の浅黒い手が差し出され、テーブルの上にカップを置いてさっと引っこんだ。カップからは香料コーヒーの馥郁たる香りが立ち昇っている。(誕生祝いのおすそわけね)
カップを手にとって、コーヒーをすすり、思わずほほえんだ。

砂の惑星 下

 戦争になったときに、前線ではコーヒーのような嗜好品は欠かせないといいます。人体の水分ですら決して無駄にできないこの惑星で、コーヒーを飲むというのは、なんと贅沢なことでしょう。

 コーヒーを飲むというのはもしかしたら浪費なのかもしれません。水分を補給するためなら、水をただ飲むのがいいはずなのに、わざわざ苦い液体を飲むのです。多分浪費するのでなければ、私達は富を感じることができないのです。

 ただ補給するだけの行為ではなく、浪費する行為が富と関係があるのでしょう。それは水だけでなく、あらゆるものがそうなのかもしれません。もしかしたら、命でさえもそうなのかもしれません。


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