カフカ『変身』を読んで
『変身』カフカ 1952.7.28 発行 新潮文庫
『変身』は、常識とかけ離れていて、一回読んだだけでは、容易に理解できない小説でした。
突然前触れもなく、人間が何かよくわからない虫に変身することは、童話や異世界だったらまだしもこの現実世界ではありえないこと。
そして、グレーゴルの変身した姿を見て驚きはしていましたが、なぜか周りの人たちはあり得る話みたいに状況を受け入れているように思えます。
なぜ、変身したのか、この小説では全く説明されていません。
これは、実際に起きたことではなく、幻を見ているのか、もしくは夢のことではないかと思いました。
グレーゴルの夢ならば、現実から逃げたいという感情が根底にあったのでしょうか。
この話として、人間だった頃と虫となってからも家族だけが唯一の場所であったにもかかわらず、最初はなんだかんだ言って心配されていましたが、最終的には家族から見捨てられる。
相手の言葉は理解できるのに、自分から話すことはできない。
グレーゴルは、最後には消えてなくならなければならないという思いを抱く。
何も役に立たず、迷惑だけをかけている状況で、自分が自分でいなくなることは辛いことだと思いました。
この小説についてカフカは不完全であり失敗作であり、また、『変身』は恐ろしい夢、恐ろしい表象とも述べています。
カフカ自身にある内面的な感情がこの小説に現れていると思うと、グレーゴルの変身した姿のように、こんな醜い姿を誰かに見られたくないという思いがあったのかもしれません。
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