いしいしんじ『トリツカレ男』を読んで
『トリツカレ男』いしいしんじ 2006.3.28 発行 新潮文庫
ジュゼッペがさまざまな趣味や興味に熱中しながら、風船売りの少女ペチカに恋をするという物語。
まぶしくピュアなラブストーリーという特徴を持ちながらも、深いストーリーが織り込まれています。
ジュゼッペの熱中するさまざまな趣味、そして彼の情熱的なアプローチによって、凍りついたペチカの心を温めようとする様子が描かれています。彼は周囲の人々から奇妙な存在と思われていますが、自分が満足するまで情熱を注ぐ姿勢は真摯であり、自然と周りに影響を与えています。
ジュゼッペは風船売りの少女ペチカに出会い、彼女にとりつかれます。ジュゼッペはペチカの悩みや困難を解決するために、自身の趣味などを駆使し、ペチカの笑顔を取り戻すため、自分自身を犠牲にしてまで努力します。
しかし、ペチカが愛していたタタンが亡くなっていることを知ったジュゼッペは、彼女のために自ら変装し、タタンの姿を演じます。ジュゼッペはペチカを幸せにするため、自己を捧げる覚悟を決めます。
最終的にはペチカがジュゼッペの真実を知り、彼の存在に感謝と誇りを抱きます。
これは、人生にも置き換えられます。
転ぶ瞬間というのは、人それぞれ。一生懸命生きていても、転ばない人なんていません。まるで、どんなに絶望しても、大事な人のことを決して忘れるなと言われているように思います。
物語の展開は早く、サクサクと進んでいくため、一気に物語に引き込まれました。童話のような優しい世界観が作り出され、また、ジュゼッペとハツカネズミの友情も物語に彩りを与えています。
誰かのことを想う気持ちの大切さに気付き、自身も大切にする。心温まる物語でした。
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