愛される親でいたかっただけなのに
私はシングルマザーだ。娘が二人。
生活は苦しい時もあった。
ペットボトルの飲み物が買えなくて、麦茶を飲んでいたし、国産の肉も買えない時期も長かった。
それでも途中から自営での仕事もうまくいくようになって、奨学金も借りることなく子供たちはそれぞれ一人暮らしをしながら私立の大学に通っている。
世間的にみれば立派なお母さんだろうか。
そういわれることもある。
再婚は考えたことはなかった。
子供たちが別に父親を望んでいるわけではないのに、再婚するっていうのはただの私のわがままだ。
子供たちがそれぞれに生きていく道ができるまで私の人生はどうでもいい。
自分の人生、自分の幸せを優先して考えるのはそのあとだ、と思って生きてきた。
私は自分のことをそれなりに頑張った母親だと思ってきた。
誰に相談をすることなく、子供たちはちゃんと学校に通い、問題を起こすこともなく、希望の大学に入学した。
勉強のこと、部活のこと、友達のこと、ずっと自分の事のように心配して見守ってきたつもりだった。
上の子はほとんど反抗期もなかった。
下の子は中学3年の頃から大学に入ってからもずっと私に距離を置いた。
本当につらかった。
返事はしてくれるが必要以上に会話を続けてくれることはなかった。無言で「これ以上話しかけないで」と言っているのがわかった。
かける言葉を1つ1つ選びながら、どうやったらまた私に笑顔で話をしてくれるようになるのかずっと探っていた。
結局は時間が解決しただけかもしれないが、ようやく最近少し打ち解けてきてくれたように感じていて、すごく嬉しかった。
「長い長い冬がようやく終わってくれるのかな?また子供の時のように楽しく話ができる日々が来るのかな?」そんなふうに思うと、日常のちょっとしたことなどどうでもいいくらいに幸せだと思った。
子供が心を閉ざしてしまっていた時期は本当につらかった。
何のために生きてるのかさえわからなくなっていた。
子供のためにと思って生きてきた毎日がどうしてこうなってしまったんだろう・・・と。
死んだら楽になれるだろうか・・・私が死んだら泣いてくれるだろうか・・・とか思うことも多かった。
とはいうものの、子供たちが曲がった道に行ったわけはないもだ。しっかりまじめにやりたいことのために大学に通っている。
それでも子供に愛されたかった私は子供が私を拒否するのがつらかった。
なぜ心を開いてくれないのか私にはわからなかった。だからどうしていいのかもわからなかったのだ。
ただただ、どうしたらこっちを向いて話してくれるのか、探ることしかできなかった。
だから話ができるようになってずっとあった頭のモヤモヤが一気に晴れた気がした。
でも彼女の心の中にはまだまだ私に対する恨みがたくさんあったようだ。
和解したとかいうレベルではなく、たぶん私のことを心底恨んでいたようだ。
ちょっとしたことからそれがわかってしまった。
つい、カッとして声を荒げて怒ってしまったこと、これは何度かあった。
私が未熟だったのだ。
言い訳はいろいろある。仕事のこと、お金のこと、一人で生きていかなくてはならなかったこと、私もたぶんいっぱいいっぱいだったんだと思う。
手を上げて怒るということはなかった…と思う、でも声を荒げ怒る母親は子供にとって恐怖しかなかったんだろう。
私は甘えていた。子供に。
だから愛しながら愛して欲しかったんだろう。
私自身も親の愛情がよくわからない。無条件で愛されたという実感がない。だから子供にだけは自分のことを愛して欲しかったんだろう。
最低だ。
子供は愛される存在であって、私を愛するための道具じゃないのに。
それなりに頑張ってきたこともある。
でも私は自分をいいお母さんだと思い込んでいた。バカだなあ。
最低じゃないか。
子供に自分を愛することを強要してたんだ。
結局自分が幸せになりたかったんだろうな。
愛じゃないよ、こんなの。
満たされない人間が子育てをするとこうなるんだなぁ。
いつか謝れる時が来るのだろうか。
私が死ぬときだろうか。
人につらい思いをさせるくらいから死んでしまいたいと思って生きてきたのに、一番大切な人に一番つらい思いをさせてしまったんだなあ。
どうして人はこんなに未熟なんだろう。
どうして私はこんなに未熟なんだろう。
何をもって償えば許されるんだろう。
たぶん人は幸せに生きなくちゃだめなんだな。
幸せのふりをしてもこうやって結局ぼろが出る。
自分の心のつらさが人にナイフをむけることになってしまう。
それも弱い人間にむかって。
自分が最低すぎて‥‥心の治まりどころが見つからない。
過去は変えられない。
自分の過去は自分が解釈を変えれば変えることはできる、でも人の感じた過去は変えることができない。
私はこれからどうやって償っていけばいいのだろうか。
でも本当に、それなりに頑張ってきたと思っていた子育てが、実は最低の母親やってたんだなって気がついて…涙しか出ない。
その過去も背負って生きていかなくてはならないんだな。
でも、何も知らずに傷つけてたよりはいいのだろう、私の心がもっともっとグサグサになって涙も枯れるくらいに泣いたら少しだけ前に進めるだろうか。
子供の過去は変えられないのだから、私がやってしまったことは変わらないのだから。私がそれを知らなかっただけで。
前に進む許可を与える勇気が持てるまで自分の心にナイフを刺そう。
大丈夫。ずっと子供の頃からそうやって一人で生きてきたんだから。
またそうやって立ち直ればいい。
きっとまた歩けるはず。
ただ学んだことは、私は「愛して欲しい」と願ったことが間違いだった。
本当にごめんね。
ママは未熟でした。
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