土器土器ヘッダー

小説『縄文人のオレが弥生人のアイツに土器土器するなんて』第六章 胸が土器土器する。

            
            
 草の繊維で編んだむしろに粘土を入れて、それを棒で担いで僕とルルは村に帰ってきた。一緒に歩調を合わせないと粘土を落としてしまうので、ルルは何度も僕を叱りつけた。

 そう言えば僕は、人と行動することが少ない。バイトは工場でひたすら、右の物を左に動かしたり、ダンボールに物を詰めるだけの仕事だから、人とこんなに近くにいることがなかった。
 ルルは小さな獣みたいな女の子だ。人間も、言ったら元は獣なんだろう。獣なのに、家を出たら自然と、一人で生きなきゃいけないなんて。なんだか現代社会っておかしいのかなあと思ってしまう。
  

「今日は、粘土と砂混ぜるところまでやって、形つくるのは明日にするから。ほら、クルミ。がんばったから、オヤツ。石で割って食べなよ」
 そう言ってルルは肩から下げた山葡萄の蔦で編んだポシェットから、オニグルミを取り出して僕にくれた。
「こ……これ、三内丸山遺跡で見たことある……! 本当に縄文ポシェットって、ポシェットとして使われていたんだ……!」
「ん? 何言ってるの? さっさと食べなって」
「あの……ルル。僕は、子ども一人産んだら、元いた国に帰れるんだ。だから、アシリのことは本当は好きじゃないけど、ないけど……」
 口ごもっているとルルが言った。
「ああ、怖いんだね。うん、わかる。わかるよ」
(いや、そういう女子的な意味じゃなくて! 本当に嫌なんだよ、アシリのことが!)
「タカユキ、夜にそういうことになったら、力を抜きな」
「えっ……」
「アタシもお嫁に来る前に母さんからそう言われたんだ。力、抜きな」
「ち、力を抜くって……ど、どうやって?」
 ルルは一瞬で顔を赤らめると、そっぽを向いた。
「そんなの、言えないよ。ただ、力入ってると入らないから。脱力するの! 脱力!」
「だ……脱力……」

 ルルはしゃがみ込んで地面に棒で、絵を描いている。小さな子どもの絵。

「ムラでさ、子どもができてもちゃんと生まれてくる子って、少ないんだ。出産の時に失敗して、死産になったり、母親ともダメになったりする。だから村長の息子のアシリは、たくさんお嫁さんをとらなきゃいけないんだよね。あたし、知ってたけどやっぱり悲しかった。でも……ムラのためだもんね。
「ルル……」
「大丈夫。タカユキ、アンタのことはもう、嫌いじゃない。もっと嫌なヤツだったら、良かったけど」
 
 その夜、アシリは寝ている僕を抱き上げて森に連れて行った。僕は、ものすごく怖いのを我慢して、自分が乗ってる舟がどこへたどり着くのかと考えていた。

 続く

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