見出し画像

対話はつらいよ ケアとセラピー、エンパワメント、マネジメントと...

 今ここから書き上げる文章は、何かの解答ではありません。今後少なくとも1年ほど探求したい「問い」を書いていきます。あるいは、問いより曖昧模糊としたテーマくらいなもんかもしれません。

 「対話をインフラに」と掲げ会社経営やファシリテーションに勤しむ中で、「対話」に対する視点・角度・解像度にバラつきがあることに辟易としてきました。VUCAな時代情勢が手伝って「対話が大事だよね」という合意を取ることはさほど難しくありません。ただ、だからこそ掘り下げること・そして何かしらの形式でまとめて提出することに意義を感じています。

 以前書いた「対話の参考書」は抽象度が高すぎたと反省しています。エッセンスを探る目的で書き上げたので、あれはあれでさほど問題はありません。しかし、今自分に必要なのは「分けて理解できること」ではないかと考えます。だからこそ、表題にあげた4つのテーマに関する文章を書きたいと思っています。「ケア」「セラピー」「エンパワメント」「マネジメント」です。

対話と口にする時、出自が違う!

 例えば組織開発周りでのそれとカウンセリング周りにおけるそれで、対話に関する解釈が大きく異なると気づいたのが初めです。カスってはいるんですが、結構重大に異なります。そのモヤモヤにも満たない「モヤっ」ないし「モッ」くらいのものは、ラップをして冷蔵庫にしばらく放置されていました。そんな中、こんな記事を発見します。

 僕はこの記事、組織開発理論・実践において「ケアの理論」が見過ごされているのではないかという問いを受け取りました。もう少し踏み込むと仕事・組織における「女性性」の欠如にまさざしがあるのではないかと。

 この問題提起に痛く関心しリサーチを進める中で、僕は反対側にも問いが潜んでいると気づきました。組織開発において「ケアの理論」が取り残されているように、カウンセリングにおいて「マネジメントの理論」が置き去りになりやすい傾向があるということです。この問題は表裏一体かもしれないと思うようになりました。

※本記事で使用する「女性性」と「男性性」という言葉は便宜上のものであり、セクシュアリティやジェンダーイメージを固着化させる意図は一切ありません。むしろ違和感を持ちながら使用しているので、ふさわしい表現に気づかれたらご教授ください...

対話の女性性と男性性

 この気づきを「対話の解釈のバラつき」に当てはめてみました。すると、対話にも女性性的なエリアと男性性的なエリアがあるのがわかります。例えば対話にはケア的なものとセラピー的なものがあります。ここでは臨床心理士の東畑先生の著書を参考にします。(ええ、タイトル鼓舞されていますとも)

 ケアとセラピーを女性性的なものと置くと、男性性的な対話のエリアは何がくるでしょうか?僕は一旦エンパワーメントとマネジメントと置きました。例えばコーチングは強くエンパワーメント的です。クライアントが答えとリソースを持っていることを強く信じて関わり、クライアントが人生や仕事の主導権を取り戻していくことにコミットします(特にセッション初期)コーチングの多くは目標達成や目標の上方修正すらもたらす上昇的な側面が強く、エンパワーメントは男性性に振り分けました。マネジメントは言わずもがなかもしれませんが、社会価値の早出と利益獲得における計画→実行→管理→分析→計画更新のサイクルです。そこで必要な対話は非常に男性性的です。

 つまり対話について話すとき、ケアから話す人もいれば、セラピーから口を挟む人もいる。エンパワーメントを信じている人もいるし、マネジメントを大切にする人もいるわけです。

正しい対話はあり得るのか

 僕の問いはそうして浮かんできます。「正しい(適切な)対話はあり得るのか。いかに行うのか」というのを漠然と思っていました。これを言い換えるならば「ケア、セラピー、エンパワーメント、マネジメントを適材適所で活用することで、正しい(適切)な対話と健全で効果的で人間的な関係性が実現可能ではないか」というものです。(役に立つか考えている時点でだいぶ男性性的なフィルターな気がしてきましたが、闇堕ちしそうなので続けます)

 すると指針が見えてきます。まずはケア、セラピー、エンパワーメント、マネジメントの各エリアにおける対話についてなるべく正確に理解する必要があります。問題提起ようの粗い粒度で、各概念整理しておきます。まず先にあげた『居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書』からのざっっくり引用です。

ケア、セラピー、エンパワーメント、マネジメントの4象限

ケア:傷つけないこと
セラピー:傷つきと向き合うこと

 本書にはもっと引用がなされているのですが、一旦これでいきます。サクサクいきたいから!では、この粒度でエンパワーメントとマネジメントについても言葉にしていきます。

エンパワーメント:パワーやリソースに気づき目的を創ること
マネジメント:目標を達成すること

また、ケアとセラピーを女性性的、エンパワーメントとマネジメントを男性性的の横軸とすると、縦軸には「垂直」と「水平」がきて以下のように整理できます。ケアやマネジメントは質的な変化を意図しないのに対して、セラピーやエンパワーメントは結果的に段階やクオリティ(質感)の構造的変化をもたらすからです。

画像1

自分がどのレンズから見ているのか

 「発達とは自己中心性の減少である」という旨のことを、何人かの発達心理学者は共通して述べます。インテグラル思想の研究・実践のインテグラルジャパン鈴木代表は「視野に入れられる目・視点の数が増えていく」と言い換えていました。

 対話に統合的に向き合うことを考えるのであれば、自分が一体どのレンズから切り取りがちなのかを把握しておくことは意味がありそうです。また、レンズを時に付け替えて異なる視点から世界(ここでは対話)を観察することによって、さらに広汎で深淵な気づきを得ることができ得ます。ここには正しい(適切な)対話の可能性を感じます

次なる課題

 本記事では、対話について語るときの「漠然とした焦点の合わなさ」に端を発し、ケア/セラピー/エンパワーメント/マネジメントという4つのエリア(4象限)があるのではないかと整理した上で、各エリアからの視点を行き来する重要性が正しい(適切な)対話に寄与するという趣旨に落ち着きました。

 ただ、ここには穴しかないのも事実です。あくまで問いの出発点として、今後以下のようなリサーチ・検証を行っていく必要があると考えています。このあたり、ぜひアドバイスいただけると幸いです。

・ケア/セラピー/エンパワーメント/マネジメントの各論についてのリサーチ
・上記4エリア/象限に対する批判
・4エリアを「男性性/女性性と水平/垂直」以外の軸でプロットする実験
・4象限を組織にインストールした上での対話にどのような変化が起こるか

などと、無理矢理まとめてみたもののまだまだ空気を掴んでいるような感覚です。ご縁あってお読みいただいた方と意見交換ができると幸いです。気軽にフォロー・ご連絡ください!

https://twitter.com/ryujin_edu


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?