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ばあばのおしゃれ心

ある朝、拡大鏡を覗き込みながら母がこう言った。
「あんた、明日カット行きたいんじゃけど」母はいつもこんな風に突然なのだ。私は「やっとその気になったんじゃ」と思った。私も母の髪が気になっていた。

母は髪が伸びてくると「妖怪から妖精にならんといかん」と言う。
笑い話のようだがそうなのだ。私も「妖精になって欲しいと思っていた」

最近、母が外出するのはまれで、外出の際は私が必ずサポートする。
本人の体調もあるのだが母は私に遠慮しているところもあると思う。
面倒をかけたくないと思っているのだ。

その上、「大安」「友引」「仏滅」と六曜を気にする母なので出かける日を決めるのはなかなか大変なのだ。母の外出の最大条件は「大安」であることなので、大安では無いその日に行きたいと言うとは思ってもいなかった。

しかし、母は鏡を覗き込んで「このまま妖怪でいるわけにはいかない」と思ったのだろう。

私は、早速サロンに予約を入れた。
その間、母がまた拡大鏡を覗き込んでいた。
妖精になった姿を想像しているのかも知れない。

カットサロンに行ったらきっと店のオーナーに言うだろう。「妖精になりに来ましたと」

母のおしゃれ心を見た気がした。




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