見出し画像

人生のターニングポイント

◇◇ショートショート◇◇

還暦を迎えた美子よしこは、自分の人生に満足していません。やり残したことがまだまだあると思っているのです。

「もっと違った生き方をしたかったはずなのに、当たり前の人生しか生きていない、私の人生はつまらない」と、感じているのです。

ある時、街角でささやく声が聞こえました。

「あなたは、今の自分に満足してるの」
交差点で、すれ違いざまに声を掛けられた気がしました。

美子は「えっ!何、誰、どうして私に聞くの、今の自分に満足しているのって・・・」

美子は、それから考えていました。
「私、60年生きてきて、今の自分に満足してるかしら・・・、してるはずがないよ、違った生き方をしていれば、別の人生があったはずだもの」

美子は高校時代に応募した雑誌のミスティーンコンテストの地区予選を勝ち抜いた経験がありました。
彼女には他の女生徒には無い、独特のオーラがあったのです。

「コンテストの全国大会に出場したい」と担任に相談すると、「それは校則に違反するから、もしそうするのなら、先生は知らなかったことにしないとダメだね」と言われて、美子は考えた挙句に、大会出場を断念した過去がありました。


それは美子にとって人生の大きなターニングポイントでした。
自分で決めたことではありますが、全国大会出場を諦めたことがずっと心のどこかに引っかかっていたのです。

その時、美子に変わって全国大会に出場した女性は、それがきっかけで芸能界入りし、華々しいデビューを飾り、20年近く芸能界で活躍していました。最近こそメディアで彼女の顔を見ることは無くなりましたが、美子は彼女の姿を見る度に、ずっと自分の決断を悔いていました。

高校時代、美子は自分の可能性を自分なりに試してみたいと思い、コンテストに応募したのです。無謀だと言われても、自らの手で自分自身を夢に向かって送り出すために、思い切ったチャレンジをしたのです。彼女にとっては大きな挑戦でした。

しかし、学校から了解が得られないことで、未来への道を自分の手で絶ってしまいました。

彼女はその時のことをずっと後悔していたのです。


「あの時、私が勇気を持って一歩踏み出していたら、私の人生はきっと違っていたはず」
「結局、私が自分で道を閉ざしたのだから仕方がないんだけど、私に勇気があったらもっと違った人生があったはず・・・」

そんなことを考えながら日々過ごしている自分が情けなくもありました。
「後悔ばかりしていても仕方がない、自分の選択を自分で納得しなきゃ」

そんなことを思っていた時、美子はテレビ番組で久しぶりにあの女優の姿を見ました。

「あの人は今」そんなコンセプトで、最近姿を見なくなったあの女優を取材していました。

彼女は今、大学で学んでいると言うのです。
「私、高校生からそのまま、芸能界に入って、後悔してたんです、どうして大学に行かなかったのか、もっと別の人生もあったはずなのに、そう思ったら、いてもたってもいられなくなって、今また勉強を始めています、将来は福祉の仕事につこうと思ってるんです」

美子は、彼女の姿を見て衝撃を受けました。
昔のオーラこそありませんが、彼女から人としての真摯な魅力が放たれていました。

美子は思いました。
「私は、後悔するだけの人生で、何も始めていない、やり残していると思うんだったら、私も今から始めよう」
そう決心した彼女は、地元のシニア劇団に入団の手続きすることにしました。

それから美子は主演を勝ち取りました。演じたのは、還暦から女優を目指す、いつまでも夢を忘れない女性です。
美子は今、自分がやり残した人生を後悔の無いように生きようと一生懸命楽しみながら生きています。



【毎日がバトル:山田家の女たち】

《自分らしく生きるより仕方ないわい》

※92歳のばあばと娘の会話です。

「その人の覚悟があっても世の中は変わっていくけんね、何が正しい選択なんかは分からんわい、大臣が変わっても世の中の動きが変わるけんね

「何かお母さん、難しい事考えよる」

「自分らしく生きるより仕方がないわい、人に左右されたらいかんのよ、自分で自分の道を切り開いていったらええ、脱落する人も、成功する人も居るんよ

母は、私のショートショートから、私の人生を考えてみたようです。
人には様々な生き方がありますが、最後に後悔しないように、立ち止まった時に、考えたらいいのかなーと思っています
いつでも遅い事はないはずです。


最後までお読みいただいてありがとうございました。
たくさんある記事の中から、私たち親子の「やまだのよもだブログ」にたどり着いてご覧いただき心よりお礼申し上げます。
この記事が気に入っていただけたらスキを押していただけると励みになります。

また明日お会いしましょう。💗


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?