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母の宝物が見つかった
俳句王国愛媛には俳句をたしなむ人たちが多く、俳人正岡子規の故郷と言うこともあって毎年「子規顕彰全国俳句大会」が開催されています。
これまで毎年作品を応募している母は、今年もそろそろ創作を始めようして、突然思い出したのでしょう、私に言いました。
「私ね、平成27年の第50回大会で、選者の稲畑汀子さんに選んでもらって、冊子に出たことがあるんよ、尊敬する俳人じゃったけん本当に嬉しかったんよ」
「お母さん、その話前にも聞いたことがあるよ」と言うと、母が「その大会の入選句がのっとる冊子がないなったんよ、あんた子規記念博物館で買えるか聞いてみてや」と悲痛な顔で訴えます。
母は、私が大掃除をした時に捨ててしまったと思い込んでいるらしいのですが、捨てた記憶が全くない私は、「きっとどこかにあるはず」と家中の書棚を隈なく探ました。
そして見つけたのです。母の大切な宝物を。
その冊子は母の寝室の小さな書棚の中に、たくさんの句集と共に密やかに眠っていた。
私が母に「ほら、これじゃないの」と差し出すと、母は見るなり「それ、それ、あったんかね、良かった」と言って思わず両手で顔を覆っていました。
涙ぐんでいたのです。
私はその姿を見てびっくりした。
それ程、嬉しかったのです。
最近の母は自分が納得する句が出来ないととても嘆いていました。
「あんた、昔はなんぼでも句が生まれよったし、ええんも詠んできたんよ、俳句の先生からはもう程々にしとかんと言うて言われるくらいだいぶ詠みよったんよ」そう言いながら、私が探し出した冊子を愛おしそうに眺めていました。
「選んでもろたこの句は私も自信があるんよ、時代が変わっても変わらず伝わる句じゃけんね」と母はその句を私に教えてくれました。
「万緑の松山城を誇りとす」
「お母さん、それはええ句じゃと思うよ」と言うと母は上気した顔でにっこり笑いました。
母にとって大切な宝物が見つかって本当に良かったと思った瞬間でした。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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