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おばあちゃんと未来のクリスマス

◇◇ショートショート

家の蛇口をひねったらみかんジュースが出てくると言われるくらい、みかんがたくさん採れる愛媛県のある町のクリスマスプレゼントのお話です。

未来みくはおばあちゃん子で、小さい頃から母親の実家がある愛媛県の八幡浜やわたはま市によく遊びに行っていました。

八幡浜は蜜柑王国と言われる愛媛でも、特に美味しいみかんが採れる場所です。

みかん農家をしているおばあちゃんは、未来によく言っていました。

太陽の光と、海からの反射があって、その上段々畑は水はけがええけんね、美味しいみかんが採れるんよ、ばあちゃんはここのみかんが日本一じゃと思とる、未来たくさんお食べよ

八幡浜のその地域で獲れるみかんは、ずば抜けて美味しく、都会に出荷されると、いい値段がついて店頭に並びます。

未来はみかんを見るといつもおばあちゃんの事を思い出していました。
デパートでもスーパーでも、みかん色を目にすると、みかん畑で麦わら帽子を被って作業するおばあちゃんのやさしい笑顔を思い出すのです。

未来は大学を卒業して就職してからは、中々田舎に帰れませんでした。
都会での一人暮らしと、ここ2年以上のコロナ禍で、寂しい毎日を送っていた未来は心が折れそうになっていました。

おばあちゃんの声が聴きたいなー」そう思った未来は、おばあちゃんに電話をしました。
一人暮らしで耳が遠くなっているおばあちゃんはいつも中々電話に出てきません。
何度も何度も電話して、5回目でやっとおばあちゃんが出てきました

「もしもし、あー、未来かな、久振りじゃねー、あんた元気でやっとるかねー、婆ちゃんはいっつもあんたのことを心配しよるんよ

「おばあちゃん、私、元気でやりよるよ、もう長い間そっちに行ってないけん、おばあちゃんの顔を忘れそうなわい
未来がそう言うと、おばあちゃんは「未来がおばあちゃんの顔を忘れるはずがないわい、私はいっつも未来の写真を見ながらご飯を食べよるよ、あんたが何を考えとるかもよう分かっとる、そろそろ愛媛のみかんが恋しなった頃じゃろう、ほじゃけんこの間送ったんよ、クリスマスプレゼントにしょうおもて

未来はおばあちゃんの元気な声を聞いて、つられて笑顔になりました。
「おばあちゃん、未来もおばあちゃんに送ったんよ、手編みの帽子とマフラー、白とオレンジのボーダーにしたよ、何となくみかん色にしたかったけんね」

おばあちゃんは嬉しそうな声で「あんた、手編みなんかしよったかなー、そりゃ嬉しいわい」
すると未来は「おばあちゃんが編みよったろ、それを見て思い出しながら編んだんよ

二人はそれから暫く会話しました。
電話を終えてから未来は元気が湧いてきました。
「今年のお正月はお母さんを誘って、おばあちゃんのとこに行こう」そう思ったのです。

翌日二人のもとに郵便が届きました。
おばあちゃんは、孫が編んだオレンジと白のボーダーが若々しい帽子とマフラーを鏡の前で付けています。

未来の部屋には瑞々しい紅まどんなが届きました。
未来は早速スマイルカットにして一口頬張りました。
ジューシーで甘い香りがたまらないその味を口に含んで、未来はおばあちゃんの優しい笑顔を思い浮かべていました。

二人はそれぞれの場所でお互いを思いながら、「今日も頑張ろう」と小さなガッツポーズをしたのです



【毎日がバトル:山田家の女たち】

《みかんを食べたら故郷を思い出すけんね》

※92歳のあばと娘の会話です。

離れとってもお互いの心は通じるんよ、愛媛のみかんは美味しいよ、みかんを食べたら故郷を思い出すけんね、私もそう思って東京の娘に送りよるんよ」

「喜んで電話かけてくるもんねー」

お互いの心を確かめるんにクリスマスはええ機会じゃわい

クリスマスのプレゼント何にしようか悩みますが、親子の絆が深くなることは間違いありません。


最後までお読みいただいてありがとうございました。
たくさんある記事の中から、私たち親子の「やまだのよもだブログ」にたどり着いてご覧いただき心よりお礼申し上げます。
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また明日お会いしましょう。💗








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