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【ものづくり】手製本は本の未来

私は二年前、本作りをはじめました。

と言っても、機械を使った大がかりなものではありません。自分で紙や布を切り貼りして作る「手製本」と呼ばれるものです。

今は機械製本が主流の時代です。よほど本好きの方を除いて、みなさんの本棚には、おそらく手製本は一冊も無いと思います。

そんなマイナーな手製本ですが、自分で作るからこそ、素材やデザインを選べる楽しさはあるし、また作っている最中、のめり込んでしまうような中毒性があります。

スケッチブック制作過程

手製本づくりは、「紙をミリ単位で裁断せよ」とか、「複数の糊を混ぜ合わせよ」とか、そんな細かくて地味な作業の連続です。

しかし、そんなミクロの世界での格闘を繰り返しているうち、いつしか私の頭には、

「手製本は本の未来かもしれない」

という、とてもスケールの大きな考えが芽生えるようになりました。どうやら、あまりに細々した仕事をしていると、逆に頭の方は、広い世界へ羽ばたいていくようです。

今日は本の未来と手製本の可能性について、少しお話させてもらいたいと思います。

本とデジタル

昔は本も一冊一冊、職人が作っていました。手製本が当たり前の時代です。

しかし、本の需要が高まるにつれ、手製本では追いつかなくなり、機械による大量生産が始まりました。そして、全国の書店に、大量の本が並ぶ時代が到来したのです。その結果、手製本は個人の趣味として、細々と命脈を繋ぐのみとなってしまいました。

しかし今、本を取り巻く状況が一変しています。まさにこのnoteの記事のように、インターネットを介して、デジタルデータとして文章を読むことが可能になったのです。

本を作るのには時間も費用もかかります。それに、紙という資源を浪費するので、環境への負荷も大きいです。

その点をデジタルはみごとに解決しているわけですから、これから先、もっと文章を読む行為がデジタル化していくことは間違いありません。

本の魅力

では、みなさんは、これから先すべての文章がデジタル化され、紙の本は姿を消すと思いますか?

おそらく、ほとんどの人は「そんなことにはならない」と考えているでしょう。私もそう思います。

例えば、書き込んだり、ふせんを貼ったりする参考書などは紙でなくてはなりませんし、画集などは色味や紙面サイズを指定したいので、紙の本が有利です。

そして、忘れてならないのは、本の持つ「物としての魅力」です。

紙の質感であるとか、表紙のデザインであるとか、そういった要素が一体となって生まれる、「佇まい」というものを、むしろデジタルに親しんでいる若い世代ほど、強く意識しているのではないでしょうか。

「好きな作家の作品は本で読みたい」
「部屋に飾れる美しい本が欲しい」

このような意見はよく聞きます。

手製本の時代

しかし、そんな要望は、機械製本では叶えられません。そもそも、機械というのが画一的なものを大量に作るためのものですから、「少数でいいから個性的なものを作りたい」という要望と矛盾しています。

そんな時代に活躍する可能性を秘めているのが手製本です。

手製本は一冊一冊が手作りですから、使う紙を自由に選ぶことはもちろん、本の形を変わったものにしたり、表紙に凝った装飾を施したり、場合によっては、布・革・宝石などの異素材を取り入れたりすることも可能です。

それはもちろん、高額になるでしょうし、たくさんは作れません。しかし、紙の本に求められているものが、その美術的価値であったり、物としての佇まいに重心が移っているのですから、安く大量に作る必要はないのです。画家の手書きの絵や、インテリアの置物などを買うような感覚で、手製本を買う人が増えても不思議ではありません。

手製本が本の未来と言った理由がわかっていただけたかと思います。

私には無理

とはいえ、私が手製本文化の担い手になるのは無理なようです。

「そんな無責任な」

と言わないでください。無理です。

手製本作りには、とんでもない几帳面さと根気と美的センスが求められます。本当に、伝統工芸品と同じような技術なんです。私が片手間でできることではありません。

しかし、私みたいに趣味で手製本を作ることは、とても楽しいし、それこそ、自分の小説や家族写真を自らの手で本にできたら、その達成感は至福のものでしょう。

私は細々と、こそこそと、陰ながら手製本文化を応援していきたいと思います。

ぜひ、この機会に、みなさんも手製本というものに、興味を持っていただきたいです。

スケッチブック
豆本
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