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【極ショート小説】白い音と共に オノマトペピアノ

「ヒュー ヒュー スー……」
 空気が抜ける音と共に目を覚ました。
「何だろう?」
 空を飛ぶ夢を見ていたら、落ちていった。
 天井がやけに高く感じる。
 メガネをかけて着る毛布を羽織る。
 白壁のリビングでは、子どもたちがピアノを叩いていた。
「ヒュー」
 サンプリングして楽しそうに叩く。
 白い鍵盤をなぞるように指を滑らせると、次々抜けていく。
 心の空気も抜けて、挨拶も忘れていた。
「パパ、おはヒュー」
「おはヒュー……」
 ピアノの上にかけたカレンダーが目に飛び込む。
 月曜日の朝。
「八ッ!
 弁当を作らねば!」
 飛び上がるようにして、キッチンに滑り込んだ。
「ハッ! ハッ! ハッ!
 弁当を ハッ! ハッ!」
 アップテンポに繰り返す。
 自然に口を突いてでた。
「スヒュー 弁当を!」
 音程が豊かに弾み、足踏みを加えテーブルを叩き始めた。
「ズン タタ ヒュー オーイエ―!」
 いつものジャズをかけることも忘れ、音楽を奏でていた。
 会社には遅刻しそうになったが、気分は白く塗り替えられた。


「利益」をもたらすコンテンツは、すぐに廃れます。 不況、インフレ、円安などの経済不安から、短期的な利益を求める風潮があっても、真実は変わりません。 人の心を動かすのは「物語」以外にありません。 心を打つ物語を発信する。 時代が求めるのは、イノベーティブなブレークスルーです。