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ホグ。| ロッキー山脈格安ツアー旅行記①

2023年8月。念願だったバンフ、ウィスラー、ヨーホーを巡る旅行に3泊4日で行ってきた。韓国のリタイアした老夫婦がメインの客層になっている韓国のツアー会社に友人と2人、唯一の日本人として乱入して。

元々バンフへはツアーを使わずに行く予定だった。ツアーって高いイメージだったし。

「バンフに行くならレイクルイーズは絶対にみたいし、あとコロンビア大氷原と…ジャスパーってバンフより人が少なくて星空もきれいなんだって。あとそれからヨーホーも行きたい」

私と友人は計画性というものを持ち合わせていなかった。仕事後に時間をとってバンクーバーからカルガリーまでの飛行機を調べ、カルガリーからバンフまでのバスの時間を調べ、バンフに到着したところでお互いスマホから目を離し、静かに見つめあう。

「…ウーバー?」
(カナダ全体が映る地図の中でバンフ⇔ジャスパー間を確認し速攻でボツ)

「やまち国際免許って持ってるんだっけ?」

「海外旅行保険って死亡保障が手厚いやつに入ってる?」

恋に落ちそうな勢いでもう一度互いの瞳を覗き込む。静寂の後一気に耳に飛び込んでくる怒涛の中国語。そう、ここはリッチモンド…

さて、一瞬で行き詰った。

現地集合現地解散のツアーを2,3個組み合わせてホテルを別でとる方法も考えたが、あっさり$1500くらいかかる。絶望で心なしか暗くなっている私たちのスマホ画面に救世主のように舞い降りたのがこのツアーだった。3泊4日で私たちの行きたい場所をすべて回ってくれて、しかもホテル、数回分の食事、移動手段すべて込みで一人当たり$529。怪しいくらい安くない??と興奮しながら言い合いつつ画面をくまなく見続けること数秒。

OK TOUR · Canada's No.1 Korean Travel Agency

KOREAN TRAVEL AGENCY!!!

速攻で少し前に韓国の旅行会社を使って旅行に行ったと言っていた韓国人の友人に連絡を入れた。

i don’t know haha は関西人の知らんけどに相当するらしい

5秒ほど悩み、今度は直接会社に連絡を入れた。

カナダにいながら非韓国人としてforeigersに含まれたのかと新鮮な気持ちになる

…とにかく、問題なく参加できるらしい。なんかやけに胸騒ぎがするけど。

というわけで、申し込んだ。

当日

集合場所のカナダプレイスの前で友達とだべっていると、いかにも仕事ができそうなブラウスとパンツ、パンプスを身に着けた物腰の柔らかなお姉さんが近づいてきて、「やまちさんですか?初めまして、OKツアーのガイドです!」と流暢な英語で話しかけてくれた。ほっ。

俺の獲物に手を出すのかという顔で睨み付けられた爽やかな朝

トロントからやってきたという同年代の韓国人の女の子2人とも挨拶をかわし、そのほかにもちらほらと集まってきた数名を載せてバスがカナダプレイスを出発する。

出発してからしばらくは韓国語と英語1:1くらいの割合ではきはきとこれからの旅程を連絡してくれ、最後部の座席に座った私たちはこれは想像していたよりだいぶ期待ができそうだぞとほくほくした顔を見合わせた。

普段なら絶対に近づけないヘイスティングストリートも車高の高いバスの車窓から覗くと異国情緒にあふれ、旅情をかきたてる。

バスはその後3ヶ所ほどで止まって乗客を乗せ、最後のポイントでは一気にいかにも今日のために韓国から来ましたー!と言う感じのおじさまおばさま(おそらくこのツアー会社が韓国におけるクラブツーリズム的な位置付けなのだと思われる)が一気に乗車しほぼ満席になった。

それまで静かだった車内が俄かに活気付き、最初の事務連絡以降一番前の席にたおやかに腰をかけていたバスガイドさんがおもむろにマイクを手に取って振り返ったかと思うと

ドゥ&リラ?ラリ@!! アンニョンハセヨオオ!!!!!!!!

オォォォォ!!!(沸く客席、響く拍手)

(顔を見合わせてとりあえず手を叩く私たち)

トゥラリラリラリラ......

あかん。めっちゃ、韓国語。

しかし我らは現代文明の申し子Z世代。CMに使えそうなくらいスマートな動作でGoogleの音声翻訳をオンにした。

30秒ほどかざし、ひと段落ついたところで翻訳終了ボタンを押す。難解な文章を組み立てていますと言った風情で読み込んでいる画面を見つめること数秒。


無敵のZ世代だったはずの私たちは、ただ、言語の深淵にそっとつま先を浸しただけだった。ホグ。

時が止まった私たちをよそに、バスガイドさんは講談師も尻尾を巻いて逃げ出す勢いで喋り続ける。

笑うことしかできないのでひとしきり涙が出るほど笑った後、友人は急に真顔に戻って最新のノイキャン機能付きiPodsを装着した。この、薄情者。バンフ行き4日前にスタバの狭いスタッフルームで片耳のイヤホンが神隠しにあった私は、精神統一を図ってから車窓を流れる景色に目を向けた。

バンクーバー郊外を抜けてから1日目のホテルがあるヴェルモントまで約10時間、衝撃的なくらい景色に変化がなかった。カナダには木がたくさん生えていた。

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