今こそ知りたい「コーライティングの基本」。初心者の始め方から、海外キャンプの実態まで経験者と共に語ります
日本でも広まってきたコーライティング・ムーブメント
伊藤涼と二人で「山口ゼミ」を始めた2013年。日本の音楽関係者でコーライティングを語る人は他にいませんでした。大手音楽出版社の国際部が、外国人作曲家にJ-Popを作らせるために日本人作家と行うコーライティングを行なっていたのですが、外には隠されて情報はありませんでした。
次世代の作曲家を育てるとしたらテーマは「コンペに勝つ」ことと、「コーライティングを身につける」ことがポイントだと思った僕たちは、テーマに掲げて活動を始め、卒業生のコミュニティは「Co-Writing Farm」と名付けて、作家自身がセルフマネージメントする姿勢とそのための必要な情報を提供していきました。
プロ作家が集まるキャンプだけではなく、誰でも参加できるワークショップなども行なってコーライティングを広めていきました。2015年4月には『最先端の作曲法・コーライテイングの教科書』を上梓しました。
そこに必要な知識は全部書いたつもりなのですが、コーライティングムーブメントが広がったほどには、書籍は読まれて無いようで(苦笑)、趣旨がずれたやり方をして失敗したという話を耳にすることもあるのが残念です。
作曲家の「基本スキル」としてのコーライティング
音楽制作がプロフェッショナルスタジオが中心の時代から、個々人の音楽家のPCがベースに変わっています。もちろんスタジオでしかできない作業も創れない音もあると思いますが、ほとんどのポップスはPCのDAWソフトベーズで作られているのが現実です。これは音楽創作/制作がパーソナルな作業がベースになっていることを意味します。
弊害があるとすれば、作曲家がクリエイティブにおいて成長する機会が減っているということです。音楽スタジオでの第一線のレコーディングエンジニアとの交流が、一流の作編曲家を育てていった時代を僕はよく知っています。日本の音楽シーンの豊穣さの一端はエンジニアが担ってくれていたのです。そういう機会が大幅に減って、作曲家が新たな知見を得て、センスを磨く場が減っているのは残念なことです。コーライティングには、そこを補う機能もあるのです。
ターゲットを定め、イメージを共有して、キャッチボールすることが結果的に学びになります。他人のDAWの画面を見ることで得られる情報は多いですよね?
コーライティングの基本は、クリエイター同士が対等なパートナーしてチームを組むという原則です。個人にパワーシフトしたデジタル時代の音楽においては、最も重要な楽曲制作の「起点」になっています。
初心者のためのコーライティングの始め方
「山口ゼミ」を開始した頃は、受講してからコーライティングを知り、徐々に取り組み始めて、「山口ゼミextended」という次のコースでコーライティング実習を行うというやり方をしていました。近年は、「山口ゼミを受ければコーライトができるらしい」と思って受講する人が増えてきました。受講初期にコーライティングの基本を伝える必要があると思い、おそらく日本で最もコーライティング経験がある(なんと1000曲超!)山口ゼミ3期生のペンギンスに手伝ってもらって「初心者のためのコーライティングの始め方」という回を1年くらい前から加えています。その内容を今回のセミナーでは共有しようと思います。「プロ作家はコーライトするのが普通だ」「自分より実力のある人とやると成長できる」と言うだけでは、経験のない人は何から手を付ければよいかわかりません。そこに対してのヒントをお渡しする講座は、山口ゼミ受講生だけに限定せず、広く伝えたい内容だなと思いました。
コーライティングキャンプとは?
コーライティングのやり方が様々であることはこのセミナーでもご説明しますが、一番の醍醐味はキャンプです。泊まり込みで集中して、3~4人のチームで1日で楽曲を仕上げるという経験は、魅力的な楽曲を作る方法ですし、成長の機会になります。
Co-WritingFarmのデータでも、「キャンプ参加経験者はコンペ採用率が高い」ことがわかっています。コロナ禍でお休みしていた合宿型キャンプも昨年から復活しています。先月3日間、真鶴木の家で行われたキャンプのレポートがこちらです。雰囲気がわかると思うので、ご覧ください。
Co-Writing Farmが主宰し、有志の「キャンプ委員」が 中心になって運営するキャンプですが、外部の作家にも声をかけて行なっています。
夜の飲み会で酔っ払って記念撮影したインスタの写真は、前迫潤哉、麦野優衣、Uccaといういずれも大活躍中。シンガータイプの素晴らしいクリエイターたちです。
「コーライティング」は和製英語!?
コーライティングと表記することに決めて、日本で言葉も含めて広げてきましたが、グローバル基準で見ると、和製英語になっています。何故なら、
日本以外の国では、作曲≒コーライティングなので、わざわざco-をつけずに、writing session、song writing campと呼ぶからです。
そんな海外でのキャンプの様子も今回はご紹介したいと思います。Da-iCE『CITRUS』でレコード大賞作曲家となったKaz Kuwamuraは、初採用を取る前に、自腹で欧州キャンプに参加していました。まさに武者修行という経験が今の活躍に結びついています。
海外キャンプの実態(欧米編・アジア編)
欧米では本当に、一般的に行われているソングライティングキャンプ。とはいえ、実績がないまま、参加費を負担しての参加は円安の今は、大きな出費になるので薦められませんが、外国人とのコーライティングのTIPSについてはこの日にお話したいと思います。2018年にスウェーデンに行ったときのペンギンスのブログがありましたので、紹介します。
アジアでも、コーライティングの波は広がってきています。K-Popはコーライティングが基本です。音楽創作事情を知らない方による「K-popの成功は共同制作方式を取ったことにある」みたいなピント外れの記事をたまにお見受けしますが、洋楽的なサウンドを取り入れるために欧米の普通をやっただけですね。韓国の影響だけではなく、世界の音楽シーンはつながっていますので、アジア各国でもコーライティングムーブメントは起きています。
僕たちは、経産省の「ビジネスマッチング事業」の一環で、台湾・台北や、タイ・バンコクで現地のプロ作曲家と日本人作曲家によるキャンプを行いました。今年も10月にアジア各国に枠を広げて、バンコクで行う準備をしています。セミナーをやる頃には、詳細発表できるはずです。
今年2月のバンコクキャンプは大成功でした。こちらにレポートを書いています。
アジアキャンプの成果の楽曲もいくつか紹介しますね。
「把所有的愛都揮霍 /Love with No Reservation」李佳歡 Kaia Lee
「I (don't) MISS YOU (JP VER.)」 - SERIOUS BACON
AI全盛時代の作曲家に必要なマインドセットとスキル
6月に出版した「AI時代の職業作曲家スタイル」では、 これからの作曲家に必要なビジネス知識とAI活用法をまとめました。セルフマネージメント・セルフプロデュースというのはその前提で、コーライティングのマインドセットと通じるものです。まだの方は、この本も読んでみてくださいね。
8月24日のセミナー「コーライティングの始め方」は、これから作曲を始めたい超初心者から、活躍を広げたいプロの方まで、どなたにも役に立つ内容のはずです。是非、ご参加ください!!
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モチベーションあがります(^_-)