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はじめに:これからの音楽家に必要な2つのこと〜『AI時代の職業作曲家スタイル』6/12出版(全文公開)

「ビジネスリテラシー」が求められる時代

 デジタル化の進展が音楽を取り巻く環境を構造的に変えました。世界中の音楽がスマホで簡単に聴くことができるストリーミングサービスは、音楽シーンの国境を取り払いました。Tiktokにユーザー投稿した動画がヒット曲の震源地になり、マスメディアの役割が大幅に下がりました。自宅で高品質の原盤制作が可能になり、レコーディングのコストが著しく低下しました。これらの変化は、音楽ビジネスを個人でも可能にし、大きな資金や大きな組織が必要ではなくなっています。インターネットはあらゆる分野で「中抜き」をできなくして、ユーザーをダイレクトに繋いできましたが、音楽でも個人ベースでビジネスをすることが基本になり始めています。その分、ビジネスに関する知識と判断力、「ビジネスリテラシー」を持つことが重要になりました。

AI活用が武器になる

 創造の分野でのAIの進化は目覚ましいものがあります。AI自らに学ばせるディープラーニングという手法がブレイクスルーをもたらしています。音楽創作/音楽制作の領域もAIなしでは語れなくなっています。AIの進化が呼ぶことは「スキルの陳腐化」です。これまで「職人芸」とされて、取得に長時間が必要だったものをAIが瞬時に提供してくれます。適切にAI技術を使えば圧倒的な効率化が可能になり、よりクリエイティブな部分に集中できるようになります。上手に活用をすると音楽家の武器になります。

本書のテーマは「職業作曲家3.0」

 これからの時代に活躍するために「ビジネスリテラシー」と「AI活用」を持つ音楽家の姿=「職業作曲家3.0」を紐解くのが本書のテーマです。
 これからのクリエイターが自らの才能を活かして、音楽を通して自己実現していくために、みなさんの音楽活動が充実に役立てれば嬉しいです。

 本書は、個人クリエイターによるネットワークから生まれる力=クリエイターエコノミーが注目されている時代に生きる、あらゆるジャンルのクリエイターに共通するマインドセットを学べる内容になっていますが、あえて、できるだけ作曲家=音楽クリエイターにフォーカスしています

「クリエイターエコノミー」の実現に向けて

 理由は、2つ。クリエイターにとって、大切なのは具体ですから、考え方だけを伝えてもすぐには役に立たないだろうということ。細かな各論があることで、逆に応用はイメージしやすくなると考える方です。
 音楽に絞る理由はもう一つあります。音楽ビジネスがクリエイターエコノミーの先駆的実験場になると思われるからです。音楽はデジタル化の影響をダイレクトに受けて、個人が自宅でつくった作品が、これまでプロの職人達が作り上げてきたものと遜色ないクオリエティを持てるようになりました。アニメやゲームは、大きな資金がないと、「メジャー作品」は(まだ)つくれません。個人がビジネス上の基本ユニットになれるのが音楽です。同時に音楽は、あらゆるジャンルで使われますので、音楽クリエイターのネットワークが、今後のトンマナを決めていくことになるでしょう。このトンマナやルールは、Web3の時代の幹になる慣習になります。ブロックチェーン技術が社会の基幹技術になるWeb3の時代がくるという話は、本書の趣旨ではないので、掘り下げませんが、ビジネスリテラシーとAI活用に長けたクリエイターが個人と個人でつながっていくことがWeb3時代の中心的な動きになるでしょう、本書をWeb3社会への備えとしても活用してください。


モチベーションあがります(^_-)