配信サービスにおける著作権分配率アップはデジタル革命の「個へのパワーシフト」で、Web3に向かう流れであるという意味
サブスクで著作権分配比率がUP
ストリーミングサービスの売上分配の、楽曲の著作権部分の比率が上がるというニュースです。作詞家作曲家(および音楽出版社)取り分がこれまでの約12%かあら15%強に上がるとのことです。CD時代は6%でしたから、2.5倍になります。「サブスクは音楽家への分配が少ない」という乱暴で間違った言説が今でも時折ありますが、ユーザーが払った金額からソングライター側が受け取る金額は2.5倍になるというのが事実です。
原盤権者と著作権者のバトル
これをタイトルで「個へのパワーシフト」と呼んだことには理由があります。デジタルサービス事業者からの分配について、原盤権分との対比があるということです。バトルと言っても良いかもしれません。原盤権が5割強あることを考えると、15%という比率で収まるかどうかはわからないですね。
この背景に、デジタル化の進展で、レコーディングに関わる費用が著しく下がったという現実があります。
CD時代の日本のレコード会社のレコーディング予算は1曲100〜150万円でした。プロフェッショナルスタジオとレコーディングエンジニアが、メジャーレベルの音源を作るためにはマストでしたから、低コストにするのには限界がありました。今は、自宅のPCでDAWソフトで遜色のない音源がつくることになりましたので、原盤制作費の大きなコストダウンが可能になっています。プロの作編曲家であれば、自宅スタジオでデジタルリリースに耐え得るレコーディングを完成させることは不可能ではありません。
作詞作曲というのはクリエイティブな作業ですから、著しくコストダウンが可能なった原盤権とのバランスで、もっと高い比率の分配を主張することは理にかなっています。
レコーディング費用の低廉化という背景
以前より安価になったレコーディング費用を負担するだけで、レコード会社や音楽出版社が、原盤権を持つのが公平なのかどうか、微妙なところになっています。拙著『最新音楽業界の動向とカラクリがよくわかる本』でも紹介したようにイギリスの国会では、デジタル時代の公平な分配率について、調査と議論が行わています。
一方で、セルフプロデュースをしている音楽家にとっては、そもそもこの議論の前提が違ってきます。
作詞作曲編曲レコーディングをイニシアティブを持って行っているのであれば、原盤権著作権両方の売上を配信事業者から直接受け取って、参加してくれた音楽家と予め決めた割合でシェアしていくのが、最も自然なお金の流れになります。
現状の、著作権については、配信事業者⇒著作権徴収団体(日本で言えばJASRAC/NexTone)⇒音楽出版社⇒作詞作曲家という分配がされ、
原盤権については、配信事業者⇒原盤権利者(レコード会社との契約があればレコード会社⇒音楽家、無い場合は、ディストリビューターなどを通じて直接音楽家に分配)と別々に別れていることが、有効ではなくなってくる訳です。
音楽家に直接分配するのが合理的!?
そうなると、現状起きている、音楽著作権側と原盤権利者側の「バトル」も過渡的なもので、「結局、どっちも音楽家個人じゃん!」ということで、「個へのパワーシフト」の流れの中で、収斂されていくというのが未来の姿になります。
その際に重要になるのは、透明性の担保ですし、ストレスの低い集金分配です。膨大な数の個人と楽曲に継続的に分配するためには、ブロックチェーン技術が適任です。スタートアップの出番だなと思っています。
ブロックチェーンが社会に実装される際のモデルの一つが音楽になるというのは、BC技術の存在を知ったときから、僕が直感的に確信していることのなです。インターネットの実験場が音楽であったように、ブロックチェーンが社会実装されるWeb3においても音楽は壮大な実験場になるはずです。
音楽ビジネスの幹が、Spotifyを筆頭とするサブスクリプションサービスになった今、そこからの分配が個人単位で透明に、即時的に(少なくとも毎月着金で)行われることの意義が大きいですね。
デジタル化が産業を再定義し、社会を再構築している21世紀の世界。音楽の行方についてはこんな入口と道筋が見えているのです。
◯PODCAST「EnterTech Street」
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モチベーションあがります(^_-)