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エンターテック起業ネタ帳〜「ファスト映画クリエイターネットワーク」事業

 「エンターテック・エバンジェリスト」を名乗り、書籍出版や、セミナーの企画、大学での客員教授などもやり、起業家と伴走して新規事業を創出するスタートアップスタジオの代表が本業ですから、エンターテインメント関連で事業アイデアを思いつくことは無数にあります。社内でディスカッションし、その領域に詳しい人に意見を伺ったりして、構想を練りますが、CEOをやる起業家が見つからないと、そのまま事業案は宙に浮いてます。プロジェクト化前もしくは、検証途中で頓挫した事業アイデアを、noteに公開してくことにしました。起業を考える人のヒントになれば嬉しいです。斬新さがどこまであるかはわかりませんが、エンタメ領域のエキスパートを自認している以上、実現性や市場性などには一定のリアリティを持っています。「それやりたい!」という人がいたら、連絡ください!
 また、このnoteを読むことで新たな事業アイデアを生み出すきっかけになれば嬉しいです。壁打ちはいつでも歓迎ですよ。新規事業創出に挑戦したい人を待っています。

「ファスト映画」現象を事業化しよう

 ファスト映画の存在を知った時には驚きました。クオリティの高い「予告編」や「ダイジェスト版」がつくれる素人クリエイターとそれを観たいというユーザーのニーズがあることにです。これは「著作権違反だよ、ひどい人がいるね。」で終わらせるのではなく、映像市場の活性化に繋ぐチャンスにすべきだと、ニューズを知った時から直感的に思っています。

キャッチ案:「ファスト映画」をポジティブ活用!

サービス名案:ファスト映画提供サービス「Fast is Love(ファスラブ)」
事業アイデア:著作権違法行為とされているファスト動画制作を、新たな映画宣伝/拡散の方法として捉え直す。一定のルールの元に映画素材をNFT付きで合法的に提供、映画予告編をクリエイター生態系で作成、拡散、そしてマネタイズの機会にしていく。
領域:クリエイターエコノミー、映像、映画、n次創作
収益ポイント:クリエイターの参加費( 映像素材使用料)
       ファスト動画の再生時の広告費
       視聴者ユーザー課金 
        等をMVPで事業検証しながら検討
市場規模に関する情報:MPA(Motion Picture Association)による2021年の世界の興行収入の合算が213億ドル(2兆7600万円)。日本の映画興行市場は前年の13億ドルから微増の15億ドルで世界第3位の市場。
ネットフリックスの通期の売上高は250億ドル(約2兆5915億円)
コンペティター/類似サービス: 今のところ見当たらない
起業家ペルソナイメージ:映画が好き、映像編集に興味がある、クリエイターエコノミーに可能性を感じている、イノベーションを起こしたい

映像サービスはみんな違法から始まった

 YouTubeが一番わかりやすい例ですね。ユーザーが勝手にアップロードして権利者からクレームが入ると、削除するというやり方でした。ニコニコ動画も同様でしたね。クレームから削除までの仕組みをできるだけ迅速にすることから始めて、コンテンツIDという独自の管理制度を導入、Googleの技術力で、音声や映像の判別技術(フィンガープリント)を高めていって現在に至っています。CISACやIFPIといった既存の団体と一緒にではなく、勝手に精度の高い仕組みを作ったことで、Youtubeが権利管理のイニシアティブを握りました。強みはユーザーがアップロードし続ける膨大な動画とそれを見る世界中のユーザーでした。自動化を徹底したのは当然ですね。

 最近、ソニーが買収したアニメを中心とした動画サービス、クランチロールも、最初は違法サイトでした。アメリカで影響力を広げている様子を見て、アニメ会社GONZO社長の石川さんが、単身乗り込んで交渉。許諾と同時に出資をするという選択をとって、作品の宣伝のためにも役に立ち、そのごクランチロールの成長によってキャピタルゲインを得ました。EXITは映像会社の雄でもあるソニーの買収という結末はwin/winですね。ファスト映画サービスもこんな着地イメージに持って行きたいです。

映画ファンを巻き込むことで映画業界にもメリットを

 著作権違反との戦いでいえば映像より音楽の方が先輩です。ファイル共有アプリNapsterは、レコード会社との裁判に敗れて、サービス停止になりました。Grovesharkという違法丸出しのサービスも法的に謝罪付きの閉鎖に追い込まれました。それでももぐらたたきのように違法音源が広まっている中、
ダニエル・エクは「違法サイトを無くす一番の方法は、違法サイトより便利な合法サイトを作ることだ」とレーベルを口説いて、大手レーベル4社(その後合併して3社)全てから出資も受けてSpotifyを始めました。その後の成功はご存じのとおりです。大手レーベルは、Spotifyからライセンス収入だけでなく、株の売却益でも大きな収益を得ました。学びたい歴史です。

 そもそも、ファスト映画は、音楽における違法DL以上に、収益へのマイナス効果はありません。興行成績を下げることには繋がっていませんでした。
ファスト映画を活用することで、元々映画館に行かなかった層にも届けられて、結果、プロモーションにも繋がることでしょう。
 この事業が良い形でローンチできるためには、映画業界側にユーザーへの理解と意識改革が必要でしょうし、説得ができる熱意とITリテラシーと人間力を持った、ダニエルエクのような起業家の存在も必須でしょう。それが日本から起きることを願っています。

予告編を「作らせる」のが最も効果的な映画へのコミット

 映画への深い理解と愛情を持って、ファスト映画が作れるクリエイターは、映画業界にとって「敵」ではなく、活用するべき相手です。映像ソフトの普及などで、映像制作の低廉化と民主化が起きていることが背景になりますね。クリエイターたちを支援して仲間にする仕組みを作ることは、映画産業にとっては必ずプラスになることでしょう。
 前売りチケットと動画素材をセットにして、ファスト映画クリエイター用販売するイメージです。映画を観てから作って、長く作品を拡散して行くのがわかりやすいですが、劇場公開時を盛り上げたいなら、ファスト映画用の素材を提供して、「観る前に作る」というやり方も意外に面白いかもしれません。

「倍速視聴」の新たなコンテンツの可能性

 事業としてのマネタイズモデルをどうするかは、検討が必要ですが、予告編が大量にできて話題なること、ユーザーが見ることでメディアとして広告がとれるといのが、入り口のイメージです。予告編とは違う切り口の「ネタバレショート」は、映画を全編観る時間が取れない人から、しっかりお金をもらって見せるモデルもあるのかもしれません。そうなると、許諾の方法や時期の工夫も大切になりますね。熱心な映画ファンは怒りそうですが、「二倍速視聴」が広がっていると言われている中、求める人はいるでしょう。映画会社にとっては、従来の映画にお金を落とさない人からマネタイズできることになりますね。

ファスト映画サービスの事業イメージメモ

n次創作震源地としての可能性

 2次創作、3次創作は、世界で日本が最も得意とする分野です。ファスト映画ムーブメントが日本から起きても不思議はありません。人気ファスト映画クリエイターのセンスは、音楽などの他のクリエイターとのコラボレーションにも有効です。
 コミケなどでも盛んな、クリエイターがコミュニティ化して、日本の「本歌取り」的なn次創作の発信地になれると、新たなオリジナル作品が生まれてくることも期待できるでしょう。スタートアップとして、投資家からの資金調達対象とするには少しスコープが遠すぎる話になってしまいますが、事業にロマンが持てますね。

ENTREはガッツリ付加価値つけられます

 事業立ち上げ時からコミットして、Co-Founderとして参画するのがスタートアップスタジオの基本スタンスです。本事業でもエンタメ分野、著作権の実業的なノウハウおよび著作権許諾運用の知見、映画会社等エンタメ業界との太い人脈など、Co-Founderとして継続的に提供できる付加価値はたくさんと思っています。

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モチベーションあがります(^_-)