見出し画像

はじめに(全文公開)〜『音楽業界のカラクリ』サポートページ〜

はじめに(全文公開)

~音楽ビジネスと音楽業界について正確な知見を持とう~
 本書は、音楽業界への転職就職を考えている人や音楽ビジネスに興味のある人を対象にしています。音楽ビジネスはデジタル化によって根本的で不可逆的な構造変化が起きています。既存の音楽業界の会社は生存の危機に瀕している一方で、新しいプレイヤーが音楽界を活性化させ始めています。五年前といまはまったく状況が違いま すし、五年後は大きく変わっているでしょう。既存の音楽業界の人々の言説が必ずしも的を射ていないことが多いのは、 構造変化を受け止めることができていないからです。業界関係者の発言だからと真に受けて、誤解しないように気をつけてください。
 インターネットという荒波が、音楽ビジネスを構造的に変え続けています。音楽ファイルのデジタル化が、音楽流通と 音楽体験を変えました。クラウド化という変化が、音楽市場をグローバルにしました。スマートフォンを持っていれば世界中つながれる時代に、既存の会社を介さない音楽家個人へのパワーシフトが強烈に始まっています。
 デジタル化とインターネットの普及は、あらゆる産業、社会全体に大きな構造変化を起こし続けていますが、音楽は ずっと、その実験場になってきました。Spotify と YouTube が主役のいまも過渡的な状態に過ぎないはずです。テクノロジーや投資の分野での注目分野は、Web3であり、バズワードはメタバースですが、ここでも音楽は先行的なトライアルの場になるでしょう
 筆者自身は、音楽プロデューサー兼音楽事務所社長として1990年代にキャリアを開始しました。音楽ビジネスに 真剣に取り組んでいる中で、取り巻く環境の強烈な変化に直面しました。日本音楽制作者連盟という業界団体の理事も務めていましたので、業界内のデジタル化対応の遅れも肌で感じました。自分が育った音楽業界が駄目になるという危機感を持ったことがきっかけで、2010年頃から執筆活動やセミナーなどのオーガナイザー、人材育成、新規事業開発 などを手掛けるようになりました。エンターテック・エバンジェリストと名乗るようになり、いまの主な活動は、イノベー ションにつながる新規事業を起業家と一緒に創出するスタートアップスタジオStudio ENTREの代表です。自己紹介では「本籍は音楽業界、現住所はITスタートアップ」と自己定義しています。

 音楽業界の迷走は、日本の産業界のあちこちに見受けられる典型的な負けパターンです。一方で、製造業で勝ち組でなくなった日本では、テクノロジーの進化によって始まる次のフェーズで、広義の文化力、ソフト力を活かすことが、世界トップランクへの再浮上の鍵を握っています。そのためには的確な処方箋が必要です。音楽業界低迷の原因を分析し、復活の可能性について考えることは日本の産業界全体に意味があるのではないでしょうか? 「神は細部に宿る」といい ますので、本書ではできるだけ具体的に記述していきますが、同時に抽象化、普遍化のヒントを散りばめていますので他の業種の「再生」にもお役に立てる内容になっているはずです。
 本書では、俯瞰した視点から、できるだけわかりやすく、かつ正確に、音楽業界の過去と現在と未来をお伝えします。 扱う対象は音楽なので、楽しみながら読んでいただけるような工夫もこらしたつもりです。音楽ビジネスに興味がある方の現状把握に少しでもお役に立てれば嬉しいです。

出版記念のオンラインイベント行います!


この記事が参加している募集

推薦図書

モチベーションあがります(^_-)