見出し画像

『D2C』はバズワードではなく、アフターデジタルの本質的な変化を象徴する言葉

 バズワードになっている感もあるD2C(Direct to Consumer)を、表層的に捉えずに、その構造と具体事例をわかりやすく説く良書です。
 アメリカから始まったムーブメントなので、発生の背景をアメリカ市場の性質から説明していますが、構造的には日本市場にも適合する考え方だと思いました。DNVB(Digital Native Vertical Brand)とも称され「デジタル起点で、生産から販売までの垂直統合を志向している企業群です。
 サブタイトルにもあるように、各ブランドは、企業としての哲学を持ち、「世界観」を売りにしています。僕は不勉強で知らなかったブランドがいくつもあり、本書を読んで興味を持ち、紹介されているいくつかのブランドの商品を検索しました。
 Awayのスーツケース良さそうですね。Casperもマットレスはいらないですが、枕元のスモールライトは買ってしまいそうです。 
 AWAYの創業者が、「context is everything」と言っているのが象徴的です。世界のイノベーターが集まると言われるSXSWのトークセッションで2010年代半ばに「ストーリーテリング」関連のテーマにフォーカスされていたのを思い出しました。
 ワーディングが得意な広告業界出自の著者らしく、納得させられる表現がたくさんありました。 僕に刺さったものを紹介します。

 「刺激〜反応モデル」から「語りかけ〜理解モデル」へ。(P47)
 顧客とのコミュニケーションの在り方、いわゆる宣伝が、単方向にバズらせる量を求めるやり方から、双方向かつ継続的に質を深化させていくという変化です。それに合わせて、使うメディアも、Pocastや雑誌、映像といった、手間をかけてしっかり伝えるコンテンツに変化しているという指摘です。

 ブランドのメディア化とプロダクトのコンテンツ化、そして、メディアのブランド化(P69)
 ユーザーとのダイレクトなコミュニケーションが最重要になったブランドは、メディア的な存在になっていくし、商品もコンテンツの様になっていくという指摘です。そして、そういう環境変化は、従来のメディアが哲学と世界観を持つ、ブランド的な方向に向かうので、そこの差がなくなっていくんですね。

 インフルエンサーよりもアンバサダー(P112)
 短期的に認知の量拡大を図るインフルエンサー型から、長期的に質を高めるアンバサダー型の重要性が増していると。そうなるとフォロワー数の多い有名人を闇雲に求めるのではなく、本物のブランドのファンが大切という話です。

   AIDMA、AISAS,そしてSIPS(P119)
 購買行動を整理するマーケティング的なワードとして、AIDMA(Attention/注意→Interest/関心→Desire/欲求→Memory/記憶→Action/購入行動)やAISAS(Attention/注意→Interest/関心→Serch/検索→Action/購入行動→Share/共有)は有名ですが、SIPSは知りませんでした。Sympathy/共感→Identify/確認→Paticipate/参加→Share&Spread/共有拡散、というのはなるほどなという感じです。

 全産業、全企業はD2C化していく(P197)
 そして、この結論には賛成です。
 ユーザーの嗜好の変化に敏感で、時代の変化を踏まえた哲学を持った起業家がD2Cモデルでスタートアップ企業を起こしていく流れは世界中で広まるでしょう。
 日本市場はアメリカ市場とは違いはありますが、toCのプロダクトについては同様の動きが進んでいくでしょう。ユーザーとのコミュニケーションを重視するエンターテインメントビジネスとの親和性も高いので、StudioENTREとしてもD2C事業について積極的に取り組んでいきたいと思いました。Beaty-Techとかわかりやすいですよね。相談がある起業家は遠慮なく連絡下さい。


この記事が参加している募集

モチベーションあがります(^_-)