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近未来の前に今を見つめる。音楽家にとってのレコード会社とプロダクションのRIGHT NOW

 音楽ビジネスに興味のある人達による実践的コミュニティ「ニューミドルマンコミュ」はゲストをお招きするMusicTech Raderとは別に、MeetupExtraと題して、1テーマを掘り下げるオンライントークイベントを行っています。今月、一緒に主宰しているワッキーこと脇田敬が言い出ししたのが、「レーベルと事務所の今!をやりましょう」でした。

音楽ビジネスにおける3レイヤー

 脇田による紹介文の〜「個人レベル」「事業体」「プラットフォーム」と分けた時〜という整理が秀逸です。音楽ビジネスは強烈な「個へのパワーシフト」が起きているのは紛れもない事実で、近未来の姿が少しずつ見えてきている中で、そうなると音楽家とプラットフォーム的なスタンスの事業者の2者の対比を考えることが多く、その間の「事業体」は、中抜される存在として軽視されることも多いです。僕自身、未来の話をすることが多いのですが、「今のこと」「今すぐ始めようとしている人」にとっては、脇田言うところの「事業体」という言葉でくくられたレコード会社とプロダクションについて考えること、向き合うことは必須なのもリアルな現実です。

 この「事業体」も分類的な整理が必要です。ユニバーサル、ソニーミュージック、ワーナーミュージックというグローバルメジャー3社は、資金力も規模も桁違いで、関連会社ITサービスも数多く抱えています。個へのパワーシフトの中で、虎視眈々と良いポジションを取ることを狙っています。ソニーミュージックによるAWALの買収などはわかりやすい事例で、「Artist without label」というコンセプトの会社をメジャーレーベルが買収するって、虚構新聞みたいな皮肉な話ですが、彼らもそれだけ生き残りに必死なのでしょう。ただグローバル3社も日本法人の経営方針は、本社の影響を受けつつも、微妙に違った(独自性の発揮?)りするのが、音楽家にとっては、わかりづらいところです。

レコード会社の今日的な価値と形骸化している専属契約

 ドメスティックメジャーと呼ばれる日本のレコード会社は、デジタルサービス主導の時代の構造変化で存在意義が危うくなっています。配信サービスに楽曲をアップしてソーシャルメディアで拡散するというプロセスにはレコード会社がノウハウを持っていない、CD店での大規模展開や地上波番組のタイアップなどの有効性が大きく下がっている時代に、どういう戦い方に活路を見出すのか難しいところです。でも音楽好きの人材とチームで戦える強みは残りますから、各論的な戦略次第なのでしょう。
  日本の多くのレコード会社が新人アーティストに強いる、「専属実演家契約」が今となっては経済的合理性を失っていて、ほとんどの場合、百害あって一利なしであることは、改めてしっかり書きますので、ちょっとだけ待ってくださいw

事務所ってなんだったんだっけ?

 プロダクションも同様です。アーテイストに寄り添うのがマネージメントの基本姿勢ですが、以前よりも事務所がいないとできないこと、無くて困ることは随分、少なくなりました。やろうと思えば、セルフマネージメントも可能な時代に、「わざわざ」事務所に所属するには相応な理由が必要でしょう。一方で、業界歴の長い僕から見ると、最近増えてきた、YouTuber/ライバー向け事務所、地下アイドルの運営さん、インフルエンサー専門の事務所などは、スタッフの出自もわからず、どの領域が専門で責任を持って取り組むのか曖昧に感じることも少なくありません。語弊のある喩えになりますが、従来の芸能事務所との比較で、北野武監督のヤクザ映画の台詞「✗✗✗よりチンピラが怖い」とでも言いましょうかww
 僕が音楽事務所の団体、日本音楽制作者連盟の理事だった頃、理事同士で飲むと「弁護士でも会計士でも無い俺たちがマネージメントとか言ってられるのはいつまでかね?」と話してました。15年位前から事務所社長たちは問題意識は持っていた訳です。その仲間の一人、小杉茂さんは、Hi-Standardの成功を支えた大功労者で、HR/HMの分野で世界的なネットワークを持っていましたが、その後大学で心理学を学び直しして、カウンセラー、コーチングのプロフェッショナルになりました。数々の音楽家の悩み相談を受けて、「マネージャーってメンタルケアの専門家だよね」って飲みながら話していたのですが、本物のプロになった訳です。
 僕は音楽事務所社長/アーティストマネージメントがルーツですから、この種の話を始めると実は熱いですww

音楽家のための音楽ビジネスRIGHT NOWとは?

 未来の話をするのは、楽しいですし、有意義ですが、音楽家にとっては、来月リリースする作品が生命ですし、常に「今が勝負」です。

 大阪音楽大学ミュージックビジネス専攻の専任教授としての自負と責任から、「インテリ系音楽業界人」を名乗り始めた脇田敬は、ShowRoomや17などをステップに音楽で成功したい若い才能とも日々向き合っています。アカデミックな言い方だとフィールドワークの経験が豊富なわけですね。そのリアリティと、5年後の音楽業界がどうなるか見えている僕(はい、答えを知っているので知りたい人は僕を利用してください)が話す場は、価値があるかなと思います。

 コミュメンバーではなくてもpeatixから参加可能なので、興味のある方は、是非、いらしてください。おそらくそういう音楽家やスタッフが知りたいことは全部知っている二人だと思います。


モチベーションあがります(^_-)