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レーベルがサービス化する時代に、周回遅れの日本でアーティストが取るべき道は?そして起業家よ大志を抱け!

 驚く記事でした。そしていつもは構造的に洞察するJay君の解説が珍しく表層的なことに、状況変化の速さを感じました。
 AWALは、without labelの略とも言われていたアーティストを中心に置いて音源の流通をサポートするサービスです。その会社をソニー・ミュージックが買収したのは驚きなのですが、その現象を「インディーアーティストを大事にするレーベルサービスを提供」と捉えるのはあまりに表層的です。従来のレーベルの役割が揺らぎ、パワーシフトとともにビジネス生態系の再構築がグローバルメジャー3社にまで及び始めたと認識するべきです。親会社のコバルトやAWALの経営陣も「この辺が売り時」と判断するくらいこの分野も飽和に近づいているのでしょう。もはやレーベルの役割は細かく「因数分解」してアーティストが「アラカルトサービス」として選ぶ時代がやってきているという解釈が正しいと思います。

レコード会社はアドミン型サービス提供に業態変換!?

 資金を出して権利を得るのではなく、サービスとして必要な機能を提供する「アドミニストレーター型」にレコード会社の役割が移り始めているのです。ユニバーサル、ソニーミュージック、ワーナーのグローバルメジャー3社も、特定のアーティストに集中投資して、より広範囲で儲けるというモデルだけではなく、自社の持つ資産を適切にアーティストサイドに活用させて、そのアーティストの段階、状況に応じたやり方を選んでもらう方向で、収益性を上げようとしているのでしょう。インディーズ向けのディストリビューターの買収は、そんな「全方位型サービス」へのシフトの本格化を感じます。
 配信事業者への音源提供(ディストリビューション)自体は数多くの会社があり、サービスの質の差はほとんどありません。小さな差異の中でアーティスト側が選ぶ時代になっています。一方、音楽消費がデジタルサービス上が主流になったことで、デジタルマーケティングの重要性が急激に高まっています。プレイリストPRなどのインフルエンサーマーケティングや、Tiktokに代表されるユーザーに遊び的に使ってもらうUGM活用の広め方、適切なターゲティングによるインターネット広告、それらの基礎となるユーザーデータ解析が音楽ビジネスの成否を決める時代になりました。レーベルも自ら権利を持ってヒットを狙っていくだけではなく、むしろそれらのリソースをアーティストがスムーズに行うためのサービスとして提供するというスタンスの方がビジネスとしての勝算はあるといえるでしょう。レコード会社のサービス化というのはそういう意味です。
 デジタル化の進展による様々な変化は、トップクラスのアーティストの収益金額を押し上げると共に、ミドルレンジの売上を持つアーティストの層を厚くしていきます。ファンベースを拡大させることとデジタルサービス上での再生回数を相乗させながら、音源以外の収益源で差別化して稼ぐというのが、これからのアーティストのビジネスモデルになっていくでしょう。

日本でも音楽業界外のプレイヤーから成果が

 日本は、欧米と比べて、デジタル化については周回遅れ、しかも3〜4周遅れてしまっているので、比較の仕方が難しいのですが、適切なデジタルマーケティングで成果を上げる例が少しずつ出てきました。

 日本人アーティストNaoYoshiokaでグラミー賞に挑むSweet Soul Recordsの山ノ内さん

「#君の虜に」現象でTiktokで成功を収めたGridgeの藪井さんと柚木さん。

 ニューミドルマンコミュのイベント「MusicTech Radar」でそれぞれお話を伺いましたが、どちらの会社も従来の音楽業界とは無縁の出自の方たちであることが象徴的です。従来の音楽業界人が苦しむのを知り目に、ITビジネスの常識で音楽をやると結果が出るということを彼らが証明してくれています。

日本の音楽起業家に生態系の変化は見えているのか?

 さて、日本人起業家たちはどうなのでしょう?僕が不満なのは、日本で音楽関連で起業を志す人達の発想のスケールが小さいことです。
 革命的な構造変化が起きる時は、従来のプレイヤーでは対応できないことが多く、スタートアップの発想とスピード感が有利に働きます。僕が聞く音楽にまつわるビジネスプランは、重箱の隅をつつくようなアイデアが多く、投資家を魅了するスケーラビリティに欠けています。すでに成熟している日本市場で、しかもインディーアーティスト向けのサービスで、コアなファン向けに、、みたいなことでイノベーションが起こせるのでしょうか?
 「日本の音楽市場って7000億円あったんですよね。CD市場が無くっていき、デジタル市場がまだ1000億円てことは、日本市場だけで6000億円の伸びしろがありますよね?」と言い出す起業家がいないことが残念です。
 僕も含めた音楽ビジネスを知る人達が、著作権ルールの難易度や音楽業界の既存プレイヤーのコンサバぶりを語りすぎて、音楽分野での起業を「去勢」してきたのではいかと反省しています。
 デジタル化による音楽ビジネス生態系の変化は、スタートアップに大チャンスです。コロナ禍で業界が萎縮している今は、起業家がビックビクチャーを描く好機です。
 Studio ENTREでは、内部で「Label as a Service(LaaS)」という仮称で、次世代型のレーベル機能を提供する事業を検討しています。創業チーム組成中ですので、興味のある人は連絡下さい。
 ちなみに、ブロックチェーン技術、人工知能それぞれの音楽ビジネスへの活用プロジェクトも行っていて数ヶ月以内に発表できそうです。
 もっとぶっ飛んだこと考えている起業家がいたら是非、話を聞かせて下さい。日本を絡めて音楽関連で起業するのだとしたら、おそらく僕が世界で最も役に立つメンターです。イノベーションに挑む起業家と一緒に新規事業に取り組むことを心待ちにしています。

  次世代型のビジネスに取り組みたいアーティストやスタッフ志望の方は、ニューミドルマンコミュを活用して下さい。知見とネットワークを貯めることができるコミュニティになっています。


モチベーションあがります(^_-)