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第一章-1-クラウド化という革命(全文公開)〜『音楽業界のカラクリ』サポートページ

 音楽の歴史は人類の歴史と共にありますが、音楽ビジネスのルーツは楽譜の発生と捉えることが多いようです。本書で は、音楽が固定された録音物からデジタルファイルに変化し、 ユーザー体験が CD プレイヤーからスマホになっていった歴史的変遷をマクロ視点で追っていきます。テクノロジーの進化によってビジネスの生態系が構造的に変化した様子を捉 えてください。

1:クラウド化という革命

●音楽体験に革命を起こしたデジタル化

 デジタル化はあらゆる産業の構造を変えていますが、その最も典型的な例の一つが音楽ビジネスであるといえるでしょう。
 以前は、レコード/CDといった物理的なパッケージに音楽を固定させて聴くというのが一般的な音楽体験でした。(英語ではPhisycalと表現することが多いです)音楽を生ではなく録音再生する製品として最初に登場させたのは、19世紀後半のエジソンだと言われています。それまでは楽譜に書く以外に「固定」する方法はありませんでしたか、音楽においては革命的なできごとでした。デジタル化というのは、蓄音機の発明依頼の音楽体験の革命で、音楽ビジネスを変革し続けています。
 Compast Discという規格でのデジタル信号の固定が、次の革命への呼び水でした。
 楽譜の印刷〜蓄音機〜アナログレコード〜デジタル信号が固定できるCD(Compact Disc)という変遷をしていたところで、音楽がデジタルファイルとして流通できるようになりました。音楽を物理的なモノに固定して販売するというのが、音楽ビジネスの基本形が脅かされます。インターネットの普及によって、権利者の意思とは関係なく、簡単にコピーされて広まってしまい、音楽ビジネスに携わる人達を悩ませました。
 P2P技術で音楽ファイルが交換できるサービスNapsterはアメリカレコード協会の提訴で倒産に追い込まれましたが、ファイルの交換は根絶はできませんでした。

●著作権の根幹を変えたクラウド化

続いて起きたクラウド化という変化が決定的でした。
著作権は英語でCOPYRIGHTというのが象徴的です。マスターテープがあって、複製物があるというのが著作権の基本的な考え方です。著作権入門的な著書では、印刷機と共に著作権の概念ができたとの説明がが多いですが、「クラウド化」によって「マスターと複製」という著作権の根幹となる考え方が通用しない状況が、音楽を始めとしたエンタメビジネス全般に訪れています。クラウド上に楽曲データを置き、ユーザーに対してアクセス権をコントロールする形で収益を得るというモデルは、従来の複製を基本とする著作権の考え方を逸脱したものなのです。
 本来は、クラウド化という変化に合わせて、契約内容や業界慣習をアップデートする必要があるのですが、歴史が長く、ステークホルダーが多い音楽ビジネスでは現実的に不可能です。複製時代の著作権の法律、業界慣習をベースに、「木で竹を接ぐ」ように、解釈してなんとかやりくりしているといるのが現状なのです。


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