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祭りのあと ~アルケミー ネクスト恐竜調整録~

あらすじ

この物語は、オリジナルデッキで戦うことを一度諦めたJDが、またオリジナルデッキで戦うことを決めた、そんな物語である。


これまで

私は構築が苦手だ。
その話は1月にもしていた。

苦手なりに構築の戦い方を習得した。
そのために私はデッキビルディングを諦めた
これにより分かりやすく結果もついてきていた。
苦手なりに予選Day1を通過できるくらいになったのもその表れだ。

しかし、わだかまりのような感情は残っていた。
だって、私はデッキを作るのが好きだから。
好きだけど、実力がない。
競技では諦めないといけない。

そんな気持ちに悶々としていた。


祭りだ、祭りだ

そんな最中さなか、3月にアルケミー・フォーマットでのアリーナ予選が開かれることになった。
実に1年以上ぶりのアルケミーでの予選である。

ようこそ!豚ファリパークへ!

アルケミーやヒストリックといったアリーナ専用フォーマットは、スタンダード等の紙と共通のフォーマットに比べて人口が少ないため、環境理解のスピードが比較的遅いという認識がある。
加えて、今回はアルケミー:カルロフのリリースからもあまり時間が空かないこともあり、環境最強デッキが何か分からない中での予選になること請け合いであった。
デッキビルディングを諦めた私にとって、最強デッキがわからないことほど恐ろしいことはない。

言葉を選ばなければ過疎の村のようなフォーマットで行われる大会であり、普段マッチングに5分かかることも珍しくないアルケミーのラダーにこの時期のみ著名人が集まる様は、さながら盆に東京から田舎に帰る者で賑わう村祭りフェスティバルの様相を示していた。


チーム結成

環境理解と対策には調整チームが重要なことはよく認識している。
調整チームを組む上で弁えるべきこと・勝つための秘訣については、もりゆきさんの名記事を参照されたい。

翻って、私はリミテ専である。
構築の調整チームを組んだことなどないし、組み方すら知らない、分からない。

デッキの1/3見たけど分からない

そんな折に蒼紅杯サーバの存在を知る。
正確にはこちらのツイートの少し前にサーバにはjoinさせていただいたが、貴重な構築に関する情報交換、ひいてはデッキ調整ができる場と期待し、調整チャットにもjoinさせていただいた。
(蒼紅杯自体にも関心はあるが、時間帯の関係上出場したことはない)

私が他のメンバーにインテリジェンスを共有できるかは分からない。
でも、それはやってみなければ分からない。

もしかしたら、私のデッキビルディングに対する苦手意識を克服できるかもしれない。
そんな淡い期待の下、1月予選との合算でのACS参加を目指し調整を始める。


環境理解

まずは前提である環境理解を一致させるところから始めた。
想定されるTier1はオルゾフミッドレンジ・ナヤ召集・ゴルガリ根。
この認識は多くの参加者の同意できるものであったと思う。

オリカ三銃士

いずれもアルケミー産の強力なカードオリカを最大限に活用する構築であり、スタンダードとは一線を画すブン回りのある強力なデッキ群。
どれが一番多いかはメタ次第だが、どのデッキもプロや実力者が配信で紹介しており、そのプレイ内容からもかなり好感触。

はじめまどかさんによる以下の調整録記事は、前提となる環境についてより詳しく書かれているため是非ご参照を。


マルドゥミッドレンジ

そんな前提の下で、初めに私が触っていたのはマルドゥ・ミッドレンジであった。
アルケミー:カルロフにて強化パーツとして《軍勢の武勇、タージク》を得ており、元々赤を足す理由であった《波の巨人、クルシアス》以外にもマルドゥとする理由が増えた。

歩く《ウラブラスクの溶鉱炉》

調整過程では《選定された平和の番人》や《分派の説教者》が環境に合っていそうという所感を得る。
一方で、アルケミー特有のマナベース厳しい問題(というかスタンが異常)により、Tier1の一つである召集に対してペインランドが痛すぎるという欠点も浮き彫りになってくる。

道中では配信中のNageさんとラダーで遭遇。
召集ではないがアグロデッキ:青白ファクトに(プレミのせいもあるが)力負けしてしまい、対アグロ面でますます不安になってくる。

そんな中、調整チームに新たに加わったとれそんさんより環境理解についての追加情報を得る。

ゴルガリ根を発展させたジャンド根がTier1の中でも頭一つ抜けるとの情報。
ナヤ召集に加えてジャンド根も2/3/3の《繁殖の原基》によるアグロプランが脅威ということで、マルドゥミッドレンジの限界を感じる。


グルール恐竜

ジャンド根が隆盛し得るという情報を聞き、私が思いついたのがグルール恐竜
実は、3月の予選が月初と勘違いしており、アルケミー:カルロフ実装前の2月から少しだけグルール恐竜をラダーで回していたのである。

グルール恐竜はメインデッキからディッチャと墓地追放を多く積めるのが最大の強みであり、対ゴルガリ根では有利との感触があった。

一方でオルゾフ対面にかなり不利な印象があり、調整の余地も少ないこともありそれ以上の調整をやめていたところであった。
ここでチームのアドバイスもあり恐竜VSオルゾフの弱点を言語化することに。

この言語化の後、チームによる恐竜デッキの伸びしろ探索が始まる。

初めにアドバイスいただいたのはNelsonさん。
恐竜の伸びしろとして、ジャンドにしてクルシアス・引き抜きを追加するプランはどうか?というもの。

そしてこの後、とれそんさんにより脅威の恐竜伸びしろプラン:ネクスト恐竜デッキ案が提案される…!

なんとこのプラン、恐竜は襞背とエターリのみ。
要は、恐竜の強い要素はマナクリと《繁殖繭》だけではないか、というもの。

実際、《繁殖繭》はかなりのパワーカードであり、グルール恐竜における運要素を減らし柔軟な立ち回りを実現するキーパーツであった。
対オルゾフには《一番目の子豚》で割られるという弱点はあるものの、相手の《一時の猶予》構えが腐りやすくなる上、《巨大戦車の行商人》で売りつけられた巨大戦車を確定で有効牌に変えられることが何よりも強い点であった。

恐竜のオリカ枠。君は…《出産の殻》?!

とれそんさんのネクスト恐竜はこの繭に加えて《城塞の大広間》の助けも借りて《波の巨人、クルシアス》まで採用することで、最大限にハンデス耐性を高められている。

このような視点は非常に斬新であり、ここからネクスト恐竜を擦る日々が始まった…


ネクスト恐竜

とれそんさんの原案は緑単レジェンズに近く、構築自由度も高いためかなり調整のし甲斐があった。

今回のアプローチは対オルゾフに強くなりそうな一方で、3/4/4スタッツが偉い《確固たる棘尻尾》⇒クルシアスがアグロ耐性を弱めており、調整の余地はありそう。

しこしことラダーで調整を重ねて辿り着いたデッキがこちら。

究極完全態ネクスト恐竜

特徴的な採用カードの採用理由について述べる。


2マナ域:《硬化した屑鉄喰らい》

トップメタをジャンド根と見据える以上は墓地追放を減らしたくはないが、メインから腐りにくい墓地追放はそう多くない。
恐竜デッキでのこの枠は元々《剛胆な古生物学者》であったが、2マナかけて1枚の墓地追放はジャンド根の対策としてかなり心許ない。
そこで、恐竜への拘りを捨ててこのカードを採用。
マナ損失なく自然に墓地をきれいにしながら中盤以降は3/3になるため、特に《繁殖の原基》に対して強く出られる点を高く評価。


5マナ域:《シェオルドレッド》

《黙示録、シェオルドレッド》ではない、《シェオルドレッド》である。
とれそんさんの原案を継続し、メインの5マナ域は確定サーチに。
恐竜の弱点であった《黙示録、シェオルドレッド》や《分派の説教者》を綺麗に対処できる手段の一つであり、正直この構成から飛んでくると相手が予想・警戒しにくいのも大きい。
クルシアスから続けて出すのが理想だが、
小粒な連中を事前に後述の《風封じのヴァンタサウルス》で露払いしてから狙いの大物に合わせて着地することも多い。
唯一デッキ内のアンチシナジーとして、《硬化した屑鉄喰らい》のせいで相手墓地に8枚溜まりにくい点が気になったものの、そもそも起動はおまけのため許容した。


4マナ域:《風封じのヴァンタサウルス》

とれそんさんの原案に対して初めに手を付けたのは4マナ域のフーグル。
毎ターン繭でサクれるヒルを生み出すのがめちゃくちゃ強そうに見えるが、実際はエンドフェイズ誘発のため出したターンに即サクる動きがしにくいのは欠点であった。
最終的にこの枠は恐竜の強みである「メインからディッチャ」枠でもある《風封じのヴァンタサウルス》に戻すことに。
《魂の洞窟》との相性も良く、使えば使うほど味の出る良いカードであり、結局最後までメインに4積みすることになった。


6マナ域:《コグラとイダーロ》

《蜘蛛網の頭、アイゾーニ》は非常に強力なカードであるが、仮想敵が今一つ分からない枠になっていた。
対アグロであればそもそもトークン2体程度では間に合わず、即効性のある《穿孔するクロコダイル》に(マナ拘束以外の点で)大きく劣る印象であった。
対ミッドレンジやコントロールには既にマナが伸びている頃に返しのラスを受けるのがオチであり、圧としては微妙。
最終的に、除去・速攻・ディッチャとしての汎用性からこの枠は《コグラとイダーロ》に変更。
恐竜のため《魂の洞窟》でエスパー系に強く出られる点も大きい。


3マナ域:《人の子の女王、アルウェン》

一番調整に時間が掛かった枠。
襞背が非常に強力なカードであるのは事実であるが、
 ・2T目にマナクリ経由で出してもバニラ
 ・繭から2マナ→3マナ起動する際に緑マナが余らせられないとバニラ
という2点がデッキに合っておらず、サイドカードに格下げすべきと判断。

代わりに最初に試したのは《グリッサ・サンスレイヤー》。
召集・ジャンド根のアグロプランに対して間違いなく強いと感じ試してみたが、今一つ噛み合わない。
仮想敵に対しては殴れるゲームになることは少ないため結局は堅い壁になるだけである。
召集では《門道急行の事件》の的になり、ジャンド根ではエンチャント破壊モードも無数のチャンプブロッカーに阻まれて機能しない。
オルゾフにも《喉首狙い》でテンポを取られるなど、総じて想定した動きをしない調整になってしまった。

そこで悩んでいたところに白羽の矢が立ったのが《人の子の女王、アルウェン》。
なんとこのカード、3マナのくせにデフォルトで破壊不能を持ってるすごいやつ。
そのくせ永続で絆魂を付けてきたりするので、あっという間にアグロがレースできなくなる。
クルシアスで得た宝物1個を元手に起動できるのもオシャレポイントであり、ここまでで求めていた3マナ域の役割をすべて担えると判断。
対オルゾフでもこのレベルのカードに豚除去を吸わせられればかなり良いゲーム展開になる。


サイド枠

このデッキのサイドボードは非常に重要である。
繭がある関係で一種のシルバーバレッド戦略のように働かせられるため、様々な可能性を探った。
ここではその一部を紹介。

・《エリシュ・ノーン》

所謂4ノーン。
対召集のサイド。召集はこのカードで結構詰む。
他にもTier2以下のアグロ全般に割と効く。

・《機械の母、エリシュ・ノーン》

所謂5ノーン。
こちらも対召集のサイド。着地できたら相手はほぼ機能不全となるため、2枚積んで5マナ域のシェオルと入れ替え確定サーチに。
恐竜ミラーでも劇的に効く。

・《ドラーナとリンヴァーラ》

対陰湿な根最終兵器。
置ければ相手は除去かアガサでのサイズアップでしか越えられない地獄にできる。
ヴァンタ自体も根には強いため全抜きすることはなく、出たらラッキーでほぼ勝ちのピン刺し採用に。

・《恐れを知らぬ騎士、エオウィン》

対シェオル最終兵器。私怨が強く2枚採用。
調整終盤で少し違和感を感じたが、速攻・プロテクションの奇襲力も高く気持ち良さは随一。

・《最深の裏切り、アクロゾズ》

対アグロにもミッドレンジにも効く便利枠。
どちらかというとメイン向けなのだが、シェオル確定サーチにしたいのと豚除去に弱いのが難点。
とはいえアルウェンが豚を吸いやすくなっており、このリストになってからは結構悪くない働き。
気軽にサクれるのも良き。

・《沈黙を破る者、スラーン》

対コントロール最終兵器。
繭からなら《一時の猶予》も効かないため、オルゾフやエスパーは大体《太陽降下》でしか触れない。
スラーン着地前に以下に安く太陽降下を撃たせるかが重要。

・《穿孔するクロコダイル》

対クリーチャーデッキ最終兵器。
召集はもちろん、仕留め切れない程度に並んだ根にも劇的に効いたりめちゃくちゃ強い。
ただし、なぜか伝説でないため大広間が機能せず素出しが死ぬほどきつい。
サイドインしたときはたまくつでクロコダイル指定しておく勇気もたまに必要。


この調整をした完全版ネクスト恐竜はラダーでの成績も良く、調整チーム内の方や著名な配信者と当たったゲームでもしっかり勝ち切ることができていた。


その他アーキタイプ

一応ネクスト恐竜を本命に、いくつかのアーキタイプも実験的に擦る。

・対ジャンド根で強力と噂されていた《緊急の検死》と《死人に口無し》を軸に据えた、ゴルガリコントロール
・さらに《繁殖繭》から1マナクリーチャーをフブルスプに変えるメカニズムも備え《失われた証人の事件》の解明をゴールにするスゥルタイコントロール
・そもそもTier1本命であるジャンド根に、パワーカードである《暗黒時代の後継、ジャーシル》を追加した新ジャンド根

このうちジャンド根はやはり強く、最後までネクスト恐竜との2択で悩んでいた。


デッキ決定

ジャンド根とネクスト恐竜のどちらを握るか、決め手に欠けたまま当日を迎える。

メタゲーム面での恐竜の逆風として、対召集に特化して《門衛のスラル》をサイドに4積みするタイプのデッキが俄に増えつつあった。

一方でジャンド根側もTier1の一角として十分警戒されており、多くのデッキで《機能不全ダニ》《幻影の抽出》がメインから詰まれるどころか、サイドに《一番目の子豚》本体を入れるリストすら見かけるようになった。

どちらを握るか悩みに悩んだ末、最後はここまでオリジナル調整してきた情が勝り、ネクスト恐竜で祭りに臨むことに。
ここでついに私の中でのオリジナルデッキ禁止令を解くことになる。


祭り当日

祭りの様子はアーカイブ動画として残しておりますので、ぜひお楽しみください。


結果は1月に続いてのDay1通過とはならなかったものの、完全オリジナル調整したデッキとしては及第点と言える4-2と善戦し、幕を閉じました。


祭りのあと

今回、残念ながら私を含む調整チームのメンバーから予選Day1を通過者は出ませんでしたが、オルゾフミッドレンジを綿密に練られていたNancharaさんのリストをサーバ内の道民さんが借り、予選Day1通過・Day2で5-2の成績を収めました!
リーダーボード次第ではACS6への出場権圏内とのことで、おめでとうございます!


また、結果は奮いませんでしたが私自身も構築に関する苦手意識を払拭しつつあるように思います。
調整チームの皆さんにはこの場を借りて感謝申し上げます。
中でも、今回のネクスト恐竜の原案を考えてくださったとれそんさん、ありがとうございました!

最後に、調整の場を設けてくださった蒼紅さんにも感謝の意を示させていただきます。
蒼紅杯サーバでは既に4月の予選に向けた調整も始まりつつあり、今後ともお世話になるかと思いますがよろしくお願いいたします。


少々長めの駄文となりましたが、以上をもってアルケミー予選に向けた調整録を締めさせていただきます。

ばいばい、さよなら、再見!


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