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暗い夜と残る光 - ナイトビューイング(2)

ナイトビューイングでは自分のパフォーマンスも行った。校庭で展示していた車輪付きのケージ作品の扉を外し、ごろごろと転がして移動させる。全身で押さないと動かない大きくて重い空洞のケージは、校庭に生えた草を薙ぎ倒しながら進み、その車輪の音は建物の中の人の耳にも届いていたことを、黒い紙のメモを通して後から知った。人に囲まれてその中央で何かを見せるというのではない形で、行為が伝わったのは面白いことだ。
そして、その時の様子を写真家の先間康博さんが撮影してくださっていて、後日画像データが届いた。先間さんには、2017年に同じ旧門谷小で行ったパフォーマンス作品"アルバースの洗濯"の時も写真をいただいて、それがあまりに良かったので、他の方の写真も合わせて記録集をつくることにしたということがあり、今回の写真も本当に嬉しいものだった。

インスタレーションもパフォーマンスも作品をそのまま残すことはできない。だから記録が大事になってくるのだが、それは「こうであった」と「こうであってほしい」の間で作っていくことになるので、時に創造的な楽しさがあり、時に自分の意図をできるだけ取りこぼさず伝えなくてはという息苦しさもある。
先間さんの写真には、そういうことを忘れ、一枚の写真のなかに写り込んだものをそのままじっくり見ていきたくなるような奥行きがあり、それはまわり回って、作品がその場所にどのように在ったのかを(私がそれをどのように作ったのではなく)教えてくれる。


撮影:先間康博


"Long Road, Wrong Move"の室内のインスタレーションは、居眠り部屋をイメージして作った。展示場所に選んだ建物は、昼間はやわらかな光が入るところだったので、その「居眠り」とは、つかのまの昼寝のことだった。でも天然の暗幕がおりた夜に展示を開放してみると、集中や没入、そして眠りを誘うその暗さがよく作品に合っており、そのように感想を伝えてくれた参加者の方もいた。自分はどこか没入を避けるところがあるので、そうした傾向を少し再考してもいいのかもしれない。その他にも暗さのなかで気づいたことがいくつかあり、この作品を更新して、いつか別の空間で見せられるチャンスがあればよいなと思っている。

大和

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