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暗い夜と黒い紙 - ナイトビューイング(1)

先日、空を見上げたら月が丸々としていて、ナイトビューイングのことを思い返した。展覧会の最週末、中秋の名月の翌日だった9月30日、月は雲の向こうにいることを決めたらしく、スタートの18時にはすっかり校庭は暗くなっていた。

まず校舎と校庭の電気を消した。あたりが暗くなった瞬間に地面からふわっと立ちのぼった銀杏の香りに、鈴木さん同様、私もびっくりした。視覚が奪われたとたんに聴覚が鋭敏になったのだと思うが、その切り替えと呼ぶのさえためらうくらいの速さに驚きながら、参加者の皆さんにはじまりの挨拶をして、だいたいのスケジュールを告げた。そして、B5サイズくらいの黒い画用紙と鉛筆をくばり、あなたが見たこと聞いたこと感じたことを書いて、帰りに箱に投函してほしいと伝え、あとは思い思いの場所で過ごせるよう解散した。
黒い紙に鉛筆を使うと、文字は書いていく端から見えなくなる。明るい場所ならば、黒鉛の光沢で楽に読めるが、暗い場所では書いたものをどんどん見失いながら前進していくような筆記となる。ちょっとした仕掛けだけれど、以前自分で試みたこの方法が気に入っていて、今回もつかってみることにした。

翌朝、箱を開くと、中にたくさんの黒い紙が折り重なるように入っていた。それは取り残された夜そのもののように感じられた。参加した人たちが書いては見失いながら記した言葉は、断片的であったり、感覚的であったり、俯瞰的であったり、手紙的であったり、内省的であったりして、どれも個別で独立しており、それでいてあの夜の時間と空間をたしかに共有していたことがわかるものだった。ただの無地の紙の束が、一晩を経て特別な物質になったことに、私は深く感動した。

参加してくださった皆さま、ありがとうございました。
大和







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