君とは噛み合わない。

今日は、私にとって人生最悪の日。
理由は3つ。

①6時50分に起きないといけないところを、7時25分に起きてしまった。すなわち大寝坊。
②朝、自転車に乗ろうとしたら、後輪が見事にパンクしていた。昨日の夜までは平気だったのに。
③慌てて学校まで走ったせいで、髪はぐちゃぐちゃで、前髪が汗で額にべっとりついているところを、松川君に見られたこと。

松川君と私は、ずっと同じクラス。

松川君は、学年の中で、一番モテる。
女子はもちろん、男子にも。

理由は4つ。
①顔がアク無く整ってて、髪が少し猫毛で柔らかくて、八重歯が可愛い。ついでに身長も他の男子より少し高い。
②どことなく垢ぬけていて、ちょっとお洒落。お父さんが、スタイリストの仕事をしているらしい。
③成績は中の上くらいらしいけど、頭の回転がすごく早くて、要領が良い。
④あまり喋らないけど、口を開くとひょうきん者で、実は面白い。

私と松川君の家は、学区が違うけど、実はご近所。歩いて4分。
いつもの時間に家を出ると、いつもの曲がり角で、松川君とすれ違う。
私は自転車で、松川君は歩きだから、私の方が5分早く学校に着く。
松川君が来るまでの5分で、髪の毛を整えて、体の汗を制汗シートで念入りに拭いて、少し色がついたリップを塗る。

中学1年から松川君と同じクラスで、中学3年の今までこれを続けてきた。
もはや習慣化されて、朝のルーティンとなっていた。

それが今日、初めて崩れた。

人生最悪の日の完成。

本当は、今日は人生最高の日になるはずだった。

いつもより10分早く起きて、いつもより丁寧に髪を結んで、おろしたてのローファーを履いて、松川君がいつも通る時間の5分前にあの曲がり角に着くように歩いて学校へ向かって、まるで昨日の続きみたいに、学校までの道を一緒に歩く。

はずだったのに。

そもそもなんで寝坊したかっていうと、理由は1つ。

昨日初めて松川君と話して、浮かれて、全然寝られなかったから。