君のことが好きな僕より

君に会ってから春の訪れが、分かるようになった。

君の身体を巡った空気と、君と選んだ匂いがいいと思った火曜日の昼下がり。

君に会ってから、「好き」が増えて、「嫌い」は、少し分かるようになった。

「美味しい」よりも先に、「君に会いたい」と思うようになった。

君が好きだと言うから、
りんごの皮は剥いて、少し甘く煮詰めることにした。

君が好きだと言うから、
餅はカリカリに焼いて、砂糖と醤油で味付けすることにした。

君が嫌いだと言うから、
カレーライスの野菜はみじん切りすることにした。

君が嫌だと言うから、
お風呂のお湯の量をちょっとだけ増やした。

君と一緒に乗り越えたい壁は一枚もないけど、
君がいないと乗り越えられない壁はいくつもある。

僕は僕で、やっていくから、
君は君で、やっていってよ。

君の前では、恥ずかしいから、僕しかできないダンスをするよ。

君にだけ伝わればいいんだ。いや、やっぱり君にも伝わって欲しくないけど、

僕はシルバーの時計を、今日も探しているんだ。


やくにき

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