➁魔術を解読するとお猿さんの気持ちに近づくのか【古代西洋魔術編】
ヤク学長です. 本日も魔法の歴史を紐解いて未来を考える.
前回は、「古代西洋魔術」に着目し古代から中世まで話を進めてきた.
前回からの流れを受けて進めていく. 古代中世の西洋は圧倒的な科学が流入してくる. キーワードは「ユダヤ教神秘主義」「錬金術」「占星魔術」の3大要素であり, この3点を一つひとつ紐解いていく.
さっそく, 3大要素の1つ目から始めたいと思う.
3大要素:1つ目「ユダヤ教神秘主義」
ユダヤ教神秘主義者 カバラー爆誕
先ずは. 1番重要な人物のご紹介をする. ユダヤ教神秘主義者のカバラーという者である. だれ?という声が聞こえてくるのは当然のことだろう.
この当時の背景を理解する事が重要になってくる. この当時のユダヤ人は, ローマ帝国によって聖地であったエルサレムが壊滅し各地に離散している状態になっていた。苦しみと葛藤に悶える中, 各地を転々とする過程でギリシャ語やアラビア語, ヘブライ語などの複数の言語を習得することができた.
この点が非常に重要である. カバラーは複数言語が話せることがユダヤ教の教えを広く普及するためには補強になると考え,これが功を奏した. 言語の違いから伝達することが叶わなかった者に広く伝えることができたのだ.
また, カバラーが流行った背景にはプラトンの主義や占星術、魔術が既に流行する兆しがあったことも後追いとなった. 時代の潮流と言語の壁を乗り越えられる術に恵まれた点が起死回生の一手になったのかもしれない.
一見すると, 教えのような神秘的であり抽象的なものを流布させるのは難しい. しかし, 多言語を使いこなすメリットが多分にあることは現在から過去を見ても容易に想像ができる. つまるところ, 各地で伝搬された結果を元に源流を辿ると全てはカバラーに終着したため後の重要人物として欠かせない人物になったのである.
次に3大要素の2つ目錬金術について後述する.
3大要素:2つ目「錬金術」
錬金術の普及に功績 マルシリオ・フィチーノ
当時のルネサンス魔術の中心は名門貴族メディチ家の支配するイタリア・フィレンツェにあった.
メディチ家は銀行家や政治家としての大富豪のイメージがあるだろうが, 文化と芸術の育成にも貢献している. フィレンツェにあったプラトンアカデミーにはたくさんの著名な学者が集まり学問の中心的な場所だった。
特段注目したい人物は「マルシリオ・フィチーノ」と言う人物である。この人物はプラトンの著作をギリシア語からラテン語への翻訳し、学者集団を指揮した人物でもある.ラテン語に翻訳した中でも、「ヘルメス選集」は思想の流布に貢献した功績のあるものだ。
「ヘルメス選集」の中に錬金術の極意が記載されている.
錬金術の極意
錬金術とは何ぞや??と言うことであるが,基本的には金を錬成することに命をかけた学問である. 金を火にかけて昇華したものを生命霊気と称し. 別の金属に触れさせると金ができるとしていた. この生命霊気を別名「エリクシル」と呼んだ. 現代の科学的から見ると蒸留, 溶解, 分離, 結合などの科学的操作によって金に固定する技術であった.
アラビアの占星魔術師からみると, 生命霊気を固定した者は象徴的なものに見えた. この霊気にあてられたものは「賢者の石」と呼ばれ, ただの金属を貴金属に変性するだけではなく, 万能薬としてすべての病気を癒すことができると崇められていたようだ.
次に3大要素の3つ目である
3大要素:3つ目「占星魔術」
惑星までも利用した占星術
占星魔術はアラビアの天文学の学問である. この学問は惑星の地上にもたらす影響力を考えていた奇想天外なものである.
惑星の力を使えば特定の事物を操作できるのではないか??と言う発想からこの学問は誕生している. 例えば, 太陽や火星の影響力を得たい場合, ある特徴的な道具を利用し, 幾何学的な図形とともに力を行使する事でありとあらゆるものの操作が可能になるというものだった.
タリズマンや魔術円
特徴的な道具としては「護符」を用いていたようだ. 護符は「タリズマン」とも称され、そのものに惑星の影響力を駆使することができる能力が含まれているとされている. 他にも「魔術円」や「五芒星」といったものも利用されていたようだ.
「タリズマン」が積極的かつ強大な力を持つ道具に対し、「魔術円」は消極的な力しかなかったという.
錬金術での項目で述べたように「賢者の石」が超絶的な秘薬として扱われていたのに対し、占星魔術の「護符」は日常的なものの充足として広く一般的に使用されていた。おそらく, 護符が日常的に安価に作成できるものとしての立ち位置だったからだろう.
ここまでを振り返ると,「 錬金術師」VS「占星魔術師」の壮絶なバトルが起こりそうなものだが上手く棲み分けできているようで非常に面白い。
古代中世~ルネサンス期
ここまでで, 古代中世の西洋は圧倒的な科学が流入してきたことが分かっていただけたであろう. キーワードは「ユダヤ教神秘主義」「錬金術」「占星魔術」であった.
錬金術の学問と占星魔術, そして, その上位概念としてユダヤ教神秘主義的なものがありカバラーに媒介され広く伝搬されていった.
現代からの視点から考えると, 丁度, この時代は科学と魔術的なものが良い意味でバランス良く設計されていたことが伺える. この時代の錬金術師が行っていた研究としての場は, 現代の研究室と比べても大きく相違がないという. まさに, 科学の始まりと言っても過言ではないのかも知れない.
お猿さんの気持ち
論理的かつロジカルに考えた現代には、生命霊気なんてものは存在しないという事が分かっている. 非常に残念である. 空から羽の生えた天使など降臨することもないし、太陽の力を借りてエネルギーを発射することができないことは理解している.
しかし, どうだろう. 今日もお猿さんは気の向くまま温泉につかって気持ちよさそうじゃないか...湯に当てられ, のぼせた状態になれば, もしかしたら空に浮かぶ月でさえも操れるような, そんな幻想の中を旅することが出来るかもしれない,なんて今日も考えるしだいである.