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若い料理人のための食器案内 閑話:魯山人の器をうやうやしく出す店は少し考えたほうが良い

一般の人が知っている陶芸家といえばナンバーワンはおそらく魯山人ではないかと思います。とは言え知らない方も多いかもしれませんけども… 魯山人は自前の窯を持ち職人も雇っていたので幅広いものの写しを作っています。前回紹介した美濃焼もその一つです。

料理屋さんでもたまに飾ってあったり、奥から出してきてお客に見せたりしますね。何を言いたいかといえばそんなことするほどの出来の良い器は“ほぼ”ありませんよ、ということです。たしかに魯山人には飲食店のプロデューサーとしての功績があることは事実で、乾山、道八風の色絵などは良いものをいくつか残しています。やはり出自が書家なので文様の描きぶりは陶工以上のところがあるようです。

ただし、それ以外の大多数の作品が問題なわけです。

魯山人周辺の世代は古陶を意識的に復興しようとした第1世代と言えるかと思います。もちろん始めたという功績はあるのですが、どうしても時代の限界というかマルチな人であったからかわかりませんが、その写しが今となっては陳腐化しているものも多いのです。備前なども金重陶陽の窯で作成したものなどは良いものはありますが、それでも現代の作家が及ばないのかといえばまったくもってそんな事はありませんし、2級品に至っては言わずもがなです。魯山人の2級の作品を見せていつまでも素人の目を眩ませておくのはやめにして、良い器をお客さんに実際に使ってもらいましょう。そのほうが何倍も良い体験になるに違いありませんので。

ちなみに、トップの写真は江戸期に活躍した尾形乾山の作品です。魯山人はこういった物を手本として作陶をしていました。たまに独創的とか紹介されるときがありますが、私の理解ではどちらかと言えば倣古的、古いものにリスペクトのある人です。

写真の出典:https://webarchives.tnm.jp/

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