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そんなにきれいに補助線を引けるもなのか

採用のオンライン化にともなって起きる変化についての一節。「40年間お互いとにかく仲良くやっていこう」というのは言い得て妙。約束の時間軸が短くなってきている。

もう1つ、採用で課題感を持つ企業の特徴として、「お互いが約束する未来、つまり結ぼうとしている心理的契約、相互期待が長期スパンでぼんやりしていること」を服部氏は挙げる。

「伝統的な日本企業におけるポテンシャル採用は、この傾向が強いと思います。新卒で職種も勤務地も、その先のキャリアやそのプロセスで獲得できる能力もぼんやりしたまま、「40年間お互いとにかく仲良くやっていこう」という契約です。時間と情報量が限られたオンラインの世界で、この曖味な約束をしようとしても難しいのではないでしょうか」(服部氏)

一方で、3年、5年というもっと近い未来について約束するために、具体的に事実ベースで情報を交換しようとする企業もある。「近年、学生はより近い未来の約束を求める傾向があり、それに応えようとする企業では、 オンライン化にそれほど課題を感じていないと思います」(服部氏)

服部氏は、「採用のプロセスや面接が科学的に組み立てられ、近い未来の約束をする、という方向に10年ほどかけてシフトするだろうと考えていましたが、それが急に動き出しました」と話す。「従来は、大学教育・新卒一括採用・ポテンシャル採用・対面での面接重視と、全部が一体となって動いていましたが、“オンライン化”と いう環境変化によって課題が浮き彫りになり、全体が大きく変化していくか もしれません」(服部氏)

Works 161 オンライン元年』より

「科学的に組み立てられる」とは、いままでの無意識や当たり前を分解して、再構成することを意味している。

2020年という一年は、変化の年というより、再定義(分解と再構成)の年だったのだと思う。

After コロナ、ないしは、With コロナ、どちらでもいいのだが、コロナ禍にともなう言説というのは、〈コロナによって私たちはどう変わるのか?〉という〈変化〉の文脈で語られがちだけど、実は〈そもそも私たちはなんだったのか?〉という、〈定義〉をほじくり返す暴力性があるように思う。

マスクをつけることで晒される顔』より

冒頭の引用にある採用もそうだし、僕の日々の仕事である育成であっても、分解と再構成がたくさんあった。オンライン研修をつくる、はその際たるもの。

分解と再構成の、大切さと面白さと難しさ、を感じた一年だった。と同時に、そんなにきれいに分解できるものなのか? そんなにきれいに再構成されるものなのか? 分解と再構成の末にできあがったものは、本当に望むものなのか? という自問自答が鳴り止まない一年でもあった。

この自問自答は、「部分の総和は全体に等しいのか?」という理性の問いであると同時に、「自分や自分を取り巻く環境を、分解されたいか?分解されて再構成されたものを、受け取りたいか?」という野生の問いでもある。

コロナが引き起こした分解と再構成もそうだし、人事×AIという「【人】間にまつわる【事】柄が、人の手を離れていく」という流れもそうなのだが、やはりそこに、哲学や倫理が漂白されてしまいそうな気配を感じると、胸がザワザワする。


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