【映画・ドラマ記録】ビューティフル・ライフ〜ふたりでいた日々
数週間前、2000年に日本で放映されたキムタクと常盤貴子主演のドラマ『ビューティフル・ライフ〜ふたりでいた日々』がネットフリックスで見られるようになっているのを発見。
平成時代、TBS日曜劇場で放映されたドラマで最高視聴率41.3%を記録したというほどの超人気ドラマだ。
このドラマ、わたしはサモアにいたときに在サモア日本人からビデオを借りて見た。当時は日本人の間で日本から取り寄せた録画済みテレビ番組のビデオをよく貸し借りしたものだ。
インターネットはあったけどYouTubeはまだ生まれていない。それどころかネットはモデム回線で、接続には時間制限があったため、映画もドラマもビデオが主流の時代だった。
当時のサモアではテレビ局も国営放送しかないため、せめてビデオが見れるようにとフナイのテレビデオを持ち込んでいた。週末には家族6人が小さなテレビ画面の前に集合してレンタルビデオ屋で借りた映画や知り合いから借りたビデオで日本のドラマを楽しんだ。
『ビューティフルライフ』は決してハッピーエンドなドラマではないが、泣けるけど感動が残るドラマと記憶していた。ドラマの影響で、主題歌B'zの『今夜月の見える丘に』は、今もドラマと一体の思い出の曲としてエレクトーンで演奏するほどだ。
そんなことから、ネトフリで発見し、すかさずもう一度見たいと思った。
ドラマは日本語だけど、ちゃんと英語字幕があるのでこれならQPさんもいっしょに見られる。時代は変わったものだ。
……というこで週末ごとに二人で見続けて、3週間かけて見終わった。
最初はそれほどでもなかったQPさんも途中からかなり感情移入が始まり、最終回は「これは泣ける」と言いながら二人で鼻をすすりながら見ていた。
わたしにとっては、昔見て感動した日本のドラマをまさかアラ還になって、恋人といっしょに見るとは!という意味で「こんな日が来るとは!」な気分。
QPさんにとっては、日本のややこしい文化や感情に逆らっためんどくさいコミュニケーションで進むドラマの中に、言葉に現れない何かを読み取らなければいけない日本らしさを学べたと思う。
そして、わたしはドラマを見ながらまざまざと時代の流れを感じていた。
昭和のドラマや映画では、今の時代の感覚では人権侵害ともとれる作品も多いが、少なくともこれは平成モノ。昭和ほどではないが、それでも今見るとちょっぴり眉を潜めたくなるような気になる場面が多いのも時代を超えて見るおもしろさだ。
たとえば、登場人物の多くが所構わずタバコ吸い過ぎだし、女性が枕営業ごときをする場面もまるで当たり前のように描写しているし、シリアスな病気の検査結果を本人以前にまず兄に伝えるなんてことも違和感を感じた。
そもそも、バリアフリーの意識がまるで浸透していない時代だったこともドラマから伝わってきて、このようなドラマの影響で少なからず、そんな意識を高めることに繋がったのではという気もした。
何より、日本のドラマのストーリーらしさというか、恋愛でありながらやたらすれ違いが多かったり、誤解が多いのはどう考えても日本の相手を慮る文化や、コミュニケーション能力の低さが背景にあるように思えてしまった。
相手を思いやる末のこととはいえ、ストレートに感情を伝えようとしない日本人独特の物言いや行動にイライラした。そもそも、お互いが気になっているのに憎まれ口、減らず口ばかりのコミュニケーション。
Yes, Noがはっきりしている米国人に登場人物の心の中が理解できるのだろうか?なんて思いながら見ていた。
こんなドラマを見ると、相手の心を常に読まなければならない日本独特のコミュニケーションってつくづくややこしいなと思う。とにかくいろいろがストレートではなく、愛するがゆえに、伝えたほうがいいことをわかりやすく伝えなかったり、こそこそと根回しする様子がまどろっこしい。
そんなふうに見えてしまうのは、時代の移り変わりなのか、わたしが日本的感覚が薄らいでいるからなのか?はわからないけど……。
円滑なコミュニケーションの苦手な日本人が多いのは、こんなドラマを見て育った人々が日本社会を形成しているからなのか?などと大げさ且つ勝手に日本流の背景を考察してみた。
車椅子の身で、長生きできないかもしれない自身を前向きに捉えることができず、柊二に対する思いやりゆえ、長く続かないかもしれない恋愛に後ろ向きな杏子と、自分の気持ちに正直な生き方をしようとする柊二の愛。
それでも、柊二の愛を受け止め、前向きになろうとする杏子とのロマンスは美しい。本物の愛情は誰にも止められないのだ。
最後にどんな結末が訪れようと、そのときの感情に素直に向き合い、前向きに生きることの美しさが描かれているのは、わたしの今たいせつにしていることと同じなので時代を超えていいドラマだと思った。
人は最後には必ず死ぬ。
わたしの眼の前で夫の命が尽きたあの日、わたしは思った。
人生で何より尊いのは、愛する人の傍らにいられることであり、愛し愛される人生を送ることだと。
それを思い出させてくれるメッセージのあるドラマだとあらためて思った。