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ガラスに映る顔

埼玉県 Nさんから聞いた話。

Nさんが小学生の頃の話になる。6年生になったNさんは、夏休みを利用し、北海道にある祖父母の家に訪れた。これまでにも何度かひとりで来たことがあり、今回もいつもと同じような旅だった。

祖父母の家は、街から車で数時間ほど離れた静かな場所にある。2階建の戸建で、1階には祖父母の寝室と居間などがあり、2階はほとんど空き部屋なっている。なので滞在中は、Nさんは2階で寝起きすることになっていた。家の辺りは一面畑で、街灯もほとんどなく、日が落ちると一面真っ暗だ。

ひさしぶりの祖父母との一緒の時間を楽しんだNさん。移動の疲れもあったのだろうか、お風呂に入ったあと、ひとりで2階に上がり、部屋を暗くして、すぐに眠ってしまった。

ちょうど夜中の3時ごろ、Nさんは寒さで目を覚ました。窓からはビュービューと風が入り込み、カーテンがゆらゆら揺れている。眠たい目をこすりながら、布団から出て、窓を閉めにいった。

カーテンに手をかけると、それまで強く吹いていた風がぱたりと止んだ。いきなり風が止んだので、不思議に思い窓の外にふっと視線を向けると、ガラスにくっきりと映った自分の顔と目が合った。

自分のものとは言え、いきなり顔が目の前に現れて少し驚いた。それと同時に、妙な違和感を感じた。よく見てみると、ガラスに映った顔色は異様に赤黒い。目の形や髪型やほくろの位置も微妙に異なっており、別人のようだった。顔を動かすともちろん同じ動きをする。見た目以外におかしなところはないようだ。

奇妙だったが、Nさんはそのまま窓を閉めて、また眠りについた。翌日そのことを祖父母に話してみたが、見間違いだと言われたそうだ。

後日、この体験を思い返してNさんはこう語った。

「でもおかしいんですよね。部屋の中が明るかったらまだしも、中も外も真っ暗なんだから、ガラスに自分の顔なんて映るはずもないのに。」

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