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カタカタおじさん

千葉県 Mさんから聞いた話。

あなたは「This man」という都市伝説を知っているだろうか。この都市伝説は、世界各国、数千の人々が、夢の中で同じ顔の男を目撃したという内容で、ネット上ではかなりの話題になっている。真偽のほどは定かではないが、今回はMさんが夢の中で出会った男の話をしようと思う。

Mさんは小学生の頃、怖い夢を見ることがしばしばあった。子どもの見る夢なので、そのほとんどの内容は微笑ましいものだったが、なかでも抜きん出て気味の悪いものがあった。それが「カタカタおじさん」だった。

「カタカタおじさん」の夢の内容はこうだ。舞台はMさんが以前住んでいた団地で、インターホンが鳴り、Mさんがドアを開けて廊下に出てみると、そこには郵便配達員の格好をした男性が立っている。その男性は、Mさんを見つけると、歯をむき出しにして笑いながら<カタカタカタカタ!>と、まるでくるみ割り人形のように、何度も歯を鳴らしながら近づいてくる。夢の中のMさん家族は彼から逃げるのだが、捕まった人は、同じようにカタカタと歯を鳴らす化け物になってしまうのだという。こんな夢を、Mさんは何度も何度も見たらしい。

さて、ここまでなら、ただの奇妙な夢の話に過ぎないのだが、これには続きがある。

ある冬の日、Mさんは同じ団地に住む同年代の友達グループで、家のすぐ近くの公園で、おにごっこなどをして遊んでいた。陽も落ちてきたので、公園から家まで帰ろうとしたときに、ふとしたきっかけから、昨日見た夢の話になった。ちょうどMさんは先ほどの「カタカタおじさん」の夢を見ていたので、何の気なしにその内容を友達に話した。するとこんな反応が返ってきた。

「私もその夢見たことある!」

グループのうちのひとりの女の子がそう言った。Mさんはびっくりして、どんな夢だったかを詳しく聞こうとしたが、続けざまに「僕も見たことある!」「私も!」と、グループの数人が同じ夢を見たと言い始めたのだ。どんな夢かを聞いてみると、舞台がそれぞれの家であるという点以外は、同じだった。ただひとり、Yちゃんだけが、他の人とは少し内容が違った。

Yちゃんの夢の内容は、カタカタおじさんが家族に襲いかかるまでは一緒だった。しかし、Yちゃんは、最近になってから自分も最後には捕まってしまうようになったという。そこだけが異なっていた。Mさんを含め、それ以外のグループの子らは、一回も自分が捕まったことはなく、危ない状況はあったにしろ、捕まる前に目が覚める、というのが普通だった。

当時はそんな話をワイワイとして、それぞれの家に帰った。それから数日後のことだった。Mさん家族がスーパーで買い物をしていると、偶然Yちゃんの母親に出会った。軽く挨拶をし、Mさんが、Yちゃんについて尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「Yは高い熱出して寝ててね、歯をカチカチ鳴らしちゃうくらい寒いらしくて--」

Yちゃんの熱はそのあと下がったらしく、今でも元気に暮らしているという。高熱とカタカタおじさんに「捕まった」ことの関連は、正直なところわからない。もちろん偶然の可能性もある。しかしMさんは、グループの子らが同じを見ていたこと、そしてYちゃんだけが捕まったこと、これらがまだ心の隅に引っかかっているのだそうだ。

もしかしてこれを読んでいる方も、どこかで彼に会ったことがあるかも知れません。あなたは「カタカタおじさん」を知っていますか?

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