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基礎的な解説がわかりやすい「ブロックチェーンの描く未来」

ビットコインについて知ったのがおそらく2016年頃で、ブロックチェーンについてよく耳にするようになったのが2017年頃だったと思います。その頃から表面的には知った気でいたけど、恥ずかしながらその根本にある思想や成り立ち、仕組みについて深く知らないままでした。2021年の今、再度盛り上がりを見せる暗号資産やブロックチェーンについて、(だいぶ時間たっちゃいましたが)基礎の基礎から知りたいなと思い本書を手に取ってみました。

本書の構成は、

1〜3章:「お金」「記録」「契約」と人類の歴史を紐解きつつ、ブロックチェーンによってどう変わっていくかを解説。(ビットコインの話がメイン)
4章:現代Webの課題とそれをブロックチェーンがどう解決するか。
5〜6章:ブロックチェーンの課題と活用例。

という具合。とても読みやすくて入門書として良いなと思いました。ただ本書を読んでさらに疑問が湧いてきたり腑に落ちていない部分もあったので、引き続き別の書籍などで探ってみたいなと感じました。

以下、本書から印象に残った部分を抜粋・コメントしておきます。

貨幣とはそれ自体が「誰にでも譲渡できる借用書」です。中央銀行の誕生以来、その発行・記録・流通といったすべてが、銀行という信用の専門家によって運用されてきました。 中央銀行はその後も発展を続け、国民国家制度などの影響を受けて、貴金属による価値の最低保証も必要としないシステムに成長することになります。
銀行というプロフェッショナルが管理するお金の仕組みにも問題はありました。 銀行が特権的に債権と債務の記録を管理するとき、その記録はプロフェッショナルの手元を離れることはなく、私たちは銀行を頼らないかぎり極めて限定的な取引しかできなくなってしまったのです。  銀行が信用を審査する仕組みも徐々にブラックボックス化していきます。そして、銀行という中央集権的な機関が信用の管理を一手に引き受けるようになり、誰もその間違いを指摘できなくなった現代、私たちは大きなしっぺ返しを食らうことになります。 それが、2008年9月に発生した「リーマンショック」です。そんな中、2008年 10 月 31 日に産声をあげた発明、それがビットコインです。

中央銀行の話にたどり着く前に、古代まで遡って丁寧にお金の歴史を紐解いてくれるのですが、ビットコインの話が始まるのはここから。中央集権的なお金の管理・発行方法には様々な課題があって、そのアンチテーゼとして始まったのがビットコイン。

ビットコインはインターネットの情報通信網と暗号技術を利用して、中央集権的な管理者なしに個人間でお金のやり取りができるようにしたものです。

ビットコインは「インターネットを介して希望する二者が銀行などを必要とせずに直接取引を行うことはできないか?」という素朴な問題提起から生まれたのです。

ビットコインの根底にある思想は金融・取引の民主化、power to the people。

ナンス値を求めるには総当たり式にハッシュ関数を用いた計算を何度も繰り返し、「先頭に一定の長さの0が並ぶ」という条件を満たす数値を誰かが見つけ出さなくてはなりません。 これにより、各ブロックのハッシュ値はすべて「膨大な計算競争の結果見つけられたナンス値があって初めて得られたもの」となります。ナンス値を発見して新しいブロックを作成する際、作業者は任意の相手に対する全く新しいUTXOを作成することができます。要するに、自分宛てにビットコインを新規発行することができるのです。これは、ネットワーク内で行われた取引を記録したことに対する報酬としてネットワーク内で独自に発行される新たな債権であり、ビットコインはこの方法以外で新たに発行されることはありません。
このように、総当たりの計算を通じて、ネットワークを維持する希少な資源(ナンス値)を発見し、それを自身の資産とする行為は、金の採掘などに例えられ「マイニング」と呼ばれています。

恥ずかしながらマイニングの実態について無知だったので、その仕組みを知って驚きました。個人的には、ブロックチェーンの強固なセキュリティを支える暗号技術の側面よりも、取引記録のために必要となる膨大な計算処理をを誰でも参入できるようにオープン化したこと、その報酬としてビットコインが発行されるというインセンティブ設計が秀逸だなと感じました。暗号資産について通貨・投資先としての側面しか知らなかったので、その流通や運営の仕組みがここまで熟考されてるという点は新たな発見でした。

ビットコインの発明者であるサトシ・ナカモトは、この技術を「ブロックチェーン」とは呼んでいません。 サトシはこの技術を「分散タイムスタンプサーバー」と呼び、その名のとおり「いつ、誰が何をしたかを、みんなで分担して記録していく仕組み」として提示しています。 ブロックチェーンが提示したのは「ネットワーク内で起きた出来事すべてを、改ざんできないように圧縮しながら、一方向的に事実として記録していくことで、平等かつ分散的なネットワーク内の相互コミュニケーションを可能にする、極めてダウンしにくいシステム」の可能性でした。
データベース自体がダウンすることがなく、ネットワーク内の出来事がすべて網羅され、その出来事が簡単に書き換えたり巻き戻したりすることができず、しかもそれを管理する存在がいないブロックチェーンは、そのネットワーク内で起きたことすべてを間違いなく記録していきます。これは現実の世界の基本法則と非常によく似ています。この世界では、出来事が誰にも管理されず、突然終わることもなく、起きた事実は覆りません。

ブロックチェーンの特性をわかりやすく端的に説明してくれている一説。

この本で繰り返し述べているとおり、中央集権的なシステムが時とともにコストや摩擦を生むのは、歴史の必然です。最近では、Facebookが特定の属性のユーザーに、特定の広告や投稿を表示し続けて、選挙での選考をコントロールしようとしたことも問題になりました。 ブロックチェーンは、こうした状況を一変させ、新しいインターネット「Web3.0」を実現すると言われています。例えば、現金はすぐ手渡しできるのに、インターネットバンクなどでの送金はどうしてこんなに時間がかかるのか(メールは数秒で送れるのに!)。紙の本は友達に貸せるのに、どうして電子書籍は貸せないのか。こういった疑問が、Web3.0の世界では解決されます。 これはWeb3.0が、インターネット上に存在する情報の世界に、現実世界と同様の基本法則を持ち込むことを可能にするアイデアだからです。 すなわち、 ①世界を管理する存在はいない ②誰かがいなくなっても世界は突然終わらない ③自分の知っていることは、自分にしか知りえない ④自分の持っているものは、簡単に消えたり、なくなったりしない ⑤希望する相手と自由にコミュニケーションして、取引ができる ⑥みんなが1つの世界の基本的な物理法則を共有し、平等に利用できる 非中央集権のブロックチェーンプロトコルを用いることで、私たちが当然のように享受している現実世界の前提条件を、インターネットの世界に組み込むことができる。これがWeb3.0の構想です。

お金が中集権的なシステムのもとで管理されたことでリーマン・ショックという経済危機や目に見えない課題を多く生んでしまったのと同様に、現代webの世界ではいろんな情報が中央集権的なシステム・事業者のもとで管理されていることで様々な問題が起きている。これらをブロックチェーンで解決しアップデートした先がWeb3.0という考え方。

前提として求められる知識レベルがやや高度すぎるとも言えます。これは今後、仮想通貨やブロックチェーンが一般に普及していく上で、大きな課題となります。メールを利用する際に、インターネットの仕組みをいちいち利用者が詳しく理解していなくてもいいように、ブロックチェーン上のサービスも利用者に高いリテラシーを求めず利用できることが好ましいはずです。

様々あるブロックチェーンの課題のうち1つとして、理解するうえで求められる知識量・ハードルが高すぎることが挙げられてたが、「やや高度すぎる」レベルではないと感じる。「高度すぎで誰も近寄ろうと思わないレベル」だと個人的には思う笑。IT業界に身を置く人たちでさえ距離を置きたくなる概念の複雑さ、用語の難しさ。これは説明する側の工夫と、いかにインターフェイスを一般ユーザ向けに本当の意味で分かりやすく作り込めるか、あるいは意識させないか、にかかっているなと思う。インターネットが「なんかよくわからんもの」と揶揄されてた時から一般化していった時以上に、そういう工夫が必要になりそう、なんだろうな。なんとなく。

抜粋だと文脈がイマイチ伝わらない気がしますが、わかりやすい語り口調でビットコインとブロックチェーンの基礎について知るにはとても良い本でした。

本書を読んで、情報技術の世界ではあらゆることが「民主化」していくのが不可避な流れだなと改めて感じました。インターネットによって情報の民主化が進んだように、ブロックチェーンによって経済や取引の民主化が進んでいくんだなと。このあたりは引き続きウォッチしていきたいと思います。

本書とあわせて、↓こちらの本もかなり入門的な内容でやさしかったので、覗いてみたらより理解が深まりました。おすすめです。


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