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イラストレーターとミルクティー

消費される人々

「イラストレーターが消費されている」という話を聞いた。
何かのきっかけで注目を集めたイラストレーターに仕事が一気に集中する。
そしてバッタの大群が過ぎ去るように、一定期間たつと、みんな飽きちゃってそのイラストレーターから離れていく。そういう現象。おいおい。

人は珍しいものに目を向ける傾向があるから、「商品」を目立たせるためには「いつもと違う見た目のもの」を出す必要がある。「いつもと違うもの」を目指すために商品の売り手やデザイナーはイラストを使うことがある。「いつもと違う絵」を求めて、たまに新人が選ばれる。で、その新人もいつしか注目を集め、仕事が一気に集まると「いつもと同じ」に見えてくるから仕事がなくなっていく。負のサイクル。

消費され尽くした場合

ぼく自身は、いつ仕事がなくなってもおかしくないと思っている。覚悟に近い。悲しい話ではあるけど、いつイラストレーターをやめることになってもおかしくはない。飽きられたらそこで終わりである。試合終了の合図をする笛を握っているのはぼくじゃなく他の誰かだから、笛をいつ吹かれるかわからず、ずっと不安な状態をキープし続けている。
まあ、だからこそ1年分は生活費を(不安とバランスを取るかのように)キープしている。1年分生活費があればなんかしら次の仕事を見つけられる算段である。

コンビニにて

イラストレーターの話で考えていると気持ちが袋小路に追い込まれていく感じがするので、気持ちを切り替えてコンビニエンスストアの話をしよう。
コンビニの棚に並べられている商品のサイクルはとんでもなく早い。期間限定の商品がいっぱい並べられていて、すぐに入れ替わる。だからそういう商品も「消費されている」に近いのかもしれない。でも一方で、定番の品もある。

ぼくの妻はよく「リプトンのミルクティー500ml」を飲んでいる。リプトンのミルクティーはほとんどのコンビニに定番の商品として置いてある。リプトンの紙パックティーシリーズは大抵3つか4つ置いてあって、その3つ目と4つ目あたりがどんどん入れ替わっていく。妻はこの入れ替わっていく商品もウォッチしていて、新商品が出てそれが美味しそうならそれを飲み、実際にそれが美味しいとそればかり飲む。そういう商品は季節ごとに変わっていくので、次に出た新商品が美味しくないとミルクティーを飲むようになる。定番のミルクティーはずっと置いてあるから、いつでもそこに立ち返ることができるのだ。

イラストレーターの「消費されている感じ」がもしあるとしたら、このリプトンの3つ目と4つ目の商品だけを見ているからそう感じるのだと思う。新人イラストレーターが出て来たからイラストレーターを使い続け、季節が変わると次の新人を探す。

お笑いの現場にて

そういえばこれはお笑い芸人も同じだ。「若手芸人は消費されている」と言っても過言ではない。消えていく芸人の数のほうが残る芸人より確実に多い。若手芸人がどれだけテレビで面白いネタをやっても、その番組の司会はいつも同じ大御所が居座っている。大御所がそこにいるから若手の荒くれが出て来てもバランスが取れているとも言えるのだが、若手は入れ替え可能で常に不安定な立場に追いやられている。「一発屋」はこういう若手の中から生まれる。

どうしたら…

さて、イラストレーターとして消費されないためにはどうしたらいいかに戻ってくる?いやむしろ一発当てたいよ、という意見もあるかもしれない。副業という観点でいえば、一発当てるだけでも満足だろう。定職にしようとするから「消費される」と困るのだ。

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しかしこの「消費される」という言葉にはなんとなく違和感がある。日々食材を買うように、消費はせざるを得ないものだ。だから「イラストレーターを消費しないようにしよう」と思ったクライアントが、イラストレーターを使わない選択をとれば、イラストレーターは単純に食えなくなっていく。だから単純に考えて、消費する側が消費をすることには何の問題もない。「消費」にネガティブなイメージを与えないようにしておきたい。
たぶん、そういう「消費する/される」とは別のところにもっと大きな問題がある。その話をしだすと果てしない穴に降りていくことになりそうな予感もある。

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さてさて、いろいろ話が脱線気味だけど、「消費されない」ためにはどうしたら良いか?実際にどうしたら良いかは、自分が今いる状況や持っている技術、今後どうしていきたいかのスタンス、などによって変わってくると思う。

リプトンのミルクティーのように定番になろうとする生き方もありだし、4つ目のアイスティーになって軽やかに、季節ごとに自分の色を変えていく生き方もありだ。リプトンそのものになる、コンビニそのものになる、という手もあるような気はする。しかしそこでも常に消費は避けられないし、消費してもらわないと困る。

そもそも、自分は消費しているくせに、「私だけは消費しないでください!」というのもおかしな話である。はい。

みんなそれぞれが我が身を振り返りつつ対策を考えたり話しあったりすると良いと思いつつ、この辺で終わります。

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