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テラヤマキャバレー観劇記

SMAPでは香取慎吾くんが好きだった。
昔大好きだった赤ずきんチャチャでリーヤの声をされていたこともあり、身近な存在に感じていたからだ。

といってもライブに行ったことはないし、ファンクラブに入るほどの熱狂的なファンでもない。テレビに出ていたら見てみたり、雑誌に載っていたらちょっと読んでみたり。そのくらいのにわかである。

それでも人生で1回くらい生香取くんを見てみたい!ということで、3月に梅田芸術劇場で行われていた「テラヤマキャバレー」に行ってきた。


テラヤマキャバレー

快晴の梅田芸術劇場

梅田芸術劇場に来たのは大沢たかおさんと杏ちゃんの「ファントム」以来。調べてみたら2010年だった…!14年ぶりの梅芸。

テラヤマキャバレーとは寺山修司さんの人生にスポットを当てた作品。私の中で寺山修司さんというと「詩を書く人」というイメージで、ずっとそういう人だと思っていた。

でも違った。

彼は他にも劇作家や映画監督の顔をもつ。
職業は「寺山修司」。その人物像を知らない身からすると正直 ナンダソレ と思うが、とにかくそれが彼の職業なのである。

テラヤマキャバレー

ストーリー

1983年5月3日(火)、寺山修司はまもなくその生涯を終えようとしていた。寺山の脳内では、彼を慕う劇団員がキャバレーに集まっている。寺山が戯曲『手紙』のリハーサルを劇団員と始めたところへ、死が彼のもとにやってきた。死ぬのはまだ早いと、リハーサルを続けようとする寺山。死は彼に日が昇るまでの時間と、過去や未来へと自由に飛べるマッチ3本を与える。その代わりに感動する芝居を見せてくれ、と。

〜中略〜

寺山は知っている。今書いている戯曲が、死を感動させられそうもない、そして自身も満足できないことを。いまわの時まで残りわずか。寺山は書き続けた原稿を捨て、最後のリハーサルへと向かう。

梅田芸術劇場 テラヤマキャバレー特設ページより引用

エリザベート脳なので「死」と聞くと「トート閣下…!!!」となってしまう。ストーリーを読む限りでは全く分からない。マッチ売りの少女とエリザベートが混ざってるイメージ。BGMは幻想交響曲かな、なんて思いながら観に行く。

わたしが見に行った日は3/10の大千穐楽の日。
会場には黒いウサギの人形を持った集団や「WHO AM I」と書かれたトートバッグを持った人がたくさんいた。後から調べてみると個展で販売していたグッズだった。香取くんの個展行ってみたかった…!

感想

とにかく濃い。
何が濃いって登場人物の個性が、である。その個性は役名にも現れていて、白粥とか舌ちょんぎりとか蚊とか!蚊を演じられた伊礼彼方さんの振り切り方が最高だった。こりゃファンがたくさん付いていそうな人だわ〜と思いながら見ていた。わたしも好きかも…!

全ては寺山修司の頭の中の世界だからなのか、はちゃめちゃ。寺山はまだ何の名前も持たない頭の中の人物たちに名前を与え、彼らと劇を始める。そこに突然現れるのが死だ。この死の役は宝塚歌劇団の凪七瑠海さん。立ち振る舞いが美しくThe 宝塚男役 という感じ。とても格好良い人だ。

死にもらったマッチを使うと過去や未来へ行くとができる。未来のシーンでスマホを弄る若者を前に「言葉はどうした!」と寺山が言うシーンがある。未来とは、わたしたちにとっての今だ。

わたしたちは今もコミュニケーションに言葉を使っているが、わたしたちの言葉はもうただの音にすぎなくて、本当に伝えたい想いを乗せるツールではなくなったのかもしれない。

きっと昔は言葉が全てだったのだろう。だから呪術というものがあったし、言葉には重みがあった。今は昔ほど言葉に力はなく、言葉よりもSNSで本心を呟く方が多い。言葉を大切にしたいと思っているのになぁ、と少し切なくなった。

この舞台を見ていると、なんとなく寺山修司とは孤独な人だったんだろうか?と思わずにいられなかった。

アパートと名付けた人物に母の面影を見るシーンは言葉が暴力的で切なさもあったし、舞台全体の雰囲気がとにかく暗い。アングラに生きる人という感じ。

きっとこの舞台は1回観ただけでは理解できない。2回以上観た時、本当の風景が見える作品なのだろう。

香取くんの大千穐楽最後の言葉が胸に響く。

「劇は出会いだ!
 次はまた別の劇場で!」

Instagramで公開されたこの写真が素敵!


寺山修司の本

世界でいちばん孤独な夜に

寺山修司に感じた孤独の部分を知ってみたいなと思っていたところ、こんな本が出版されているらしい。彼の孤独に触れられるかは分からないけど読んでみたい。

ポケットに名言を

寺山修司といえばこの本!と思うくらい、一番印象の強い本。強烈な言葉が押し寄せてくる一冊。


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