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僕がIT企業で兼業作家を続ける理由。noteを始めた理由。結婚できない理由。

はじめまして。兼業作家の八木圭一といいます(未婚のまま40歳になり、前厄に突入なう!)。宝島社の「このミス」大賞出身でデビュー5年目なので、ひよっこのくせに、新人とも言えなくなってきました。

本が売れない時代に、文芸の世界に飛び込んだのですが、幸運にもデビュー作『一千兆円の身代金』がテレビドラマ化されて10万部を超え、昨年、刊行したグルメミステリー『手がかりは一皿の中に』が即重版してシリーズ化が決まったので、恵まれているなと。チャンスを得たからには、生存競争の過酷なこの世界で生き残れるよう、必死に頑張りたいと思っています。

一方、僕は出版業界が様々な歪みを抱える中で、作家として生き残る上でもネットにどう適応するかが課題だと感じて現在、IT企業で働きながら作家活動をしています。最近になって「働き方改革」の言葉が聞こえるようになりましたが、副業を解禁している会社はまだ少数。そういう中で、兼業できる環境を幸せに感じます。

兼業のメリットは多く、安定収入はもちろん、組織に身を置くことで成長の機会も、(仕事柄)インプットも多い(パラキャリ「このミス」大賞受賞の小説家・八木圭一さんが兼業作家を続ける本当の理由」)。また、ストーリーの可能性を模索する上でも、今の環境は最適だと感じます。

文学賞を受賞した当時、文芸の勉強不足を痛感していた僕は、文芸に特化したデザイン会社に転職し、コピーライターとして新刊の広告制作に携わりました。メインは新聞広告、続いて雑誌広告などです。様々な種類の文芸作品にも触れ、多くのことを学ぶことができました。

ただ、出版の未来に危機感を覚え始めたのも事実。出版業界では今日日、メインの宣伝手法は、新聞広告なのです。実際、朝日新聞と文学には深い歴史があり、新聞を読む知的層と本の購買層に親和性が高いと言われると納得感があります。しかし、新聞閲覧率も新聞広告の出稿も落ちているのは言うまでもなく、新規層にアプローチできるとは思えません。

今後、本の届け方はどう変わっていくのか? noteを使う作家も増えてきた!

スマホを手にしたユーザーのライフスタイルが劇的に変化し多様化する中で、出版も時代に適応し、本の届け方を変えていく必要があると思うのですが、そうなっていません。出版・文芸のネット広告なんか、進化していいはずなのですが……。

まず、ネット上に文芸のプラットフォームがない!というのが大きな理由でしょう。「読書メーター」「ブクログ」などの口コミサイト、「Book ASAHI.com」「Bookbang」「HONZ」などの書評サイト、「小説家になろう!」といった作品投稿サイトなど、本に関わるサイトは多数ありますが、本好きが毎日集うプラットフォーマーにはなりきれていない。

現状、本のプラットフォームといえば、Amazonでしょう。進化のスピードが著しく、出版社が広告を出さなくても独自のレコメンドなどで売り上げを伸ばしてくれます。ただ、2000年に上陸以来、黒船的な要求を出版社に突きつける度、軋轢を生んできました。アメリカに日本独自の再販制度や取次制度はありません。将来的には取次だけでなく出版社すら介さず、作家と直接取引する構想を公言しているので、戦々恐々としている関係者もいるはず。

では、出版社はネット施策を何もやらなかったかというと、決してそうではないはず。各社、相応の予算を投下して立派なホームページを作っています。ただ、集客に成功できていないし、そういう仕組みになっていない。トップページの見栄えは良いのですがおそらく、UX(ユーザー体験)が考えられていないのです。

ここに、出版社とIT企業がコンテンツを作る際のアプローチ手法に関して、構造的な違いを感じます。基本的に紙は校了したらあとは刷るだけ。なので、そこまでのアプローチに完璧を求めます。しかし、IT企業では仮説を元に軌道修正するバッファーを持たせておいて、サイトやアプリのローンチ後、いかにユーザーの行動を分析してアップデートするかに注力します。

僕の会社にも優秀なデータサイエンティストがいますが、ユーザーの行動を可視化して分析し、修正案を提示してくれます。どこからの流入で、どれだけの人に、どれくらいの時間、どれくらいの読了率で読まれたか、それを元に、UI(ユーザーインターフェース)やコンテンツを軌道修正すれば、ユーザーの体験をより良いものにできる可能性が高い。紙とは異なるネットの性格、強みと言えるでしょう。

こんなことを言うと、「PVが全てなのか」と違和感を持つ出版関係者もいるはずです。「自分たちが納得する良いものを作りたい」と。「文芸にマーケティングなんて意味がない」「読者に迎合したら薄っぺらいものしかできない」という言葉をいろんな場所で何度も耳にしてきましたし、自分自身も同感です。ただ、少なくともストーリーと、それを届けるプラットフォームやUIは異なるし、時代に適応させる必要があるなと。

ここは両方の業界に身を置く自分が役割を果たしたいし、この課題を解決したいと思っています。ということで、多くのクリエイターや出版社にも支持されるnoteに興味を持っていました。ここで作品を発表する作家仲間も増えています。特に同世代には、出版社にプロモーションを頼るのではなく、個人でも積極的に行動していかなければ!という書き手が増えています。

結婚できない話も、平成という時代も、ジャンプをしたかったわけではなく…

は!長々と書いてしまいましたが、文字カウンターを見ると、タイトルに入れた3つ目の答えを明かさなければという文字数に達してしまいました。noteって、デフォの文字の大きさや行間のスペースが計算されていて読みやすく、小見出しも立てられて、すごくユーザビリティが高い!これこそが、練られたUXというものでしょうね。

未回収のラストを決着させなければですが!ここまで読んでくれた方なら、説明するまでもなく、結婚できない理由をお察しかと思います。「作家として生き残れるか、自分の心配をしろ!」と聞こえてきそうですが、「退社後、小説を描き、業界の課題まで考えていたらいっぱいいっぱいで……」というかっこ悪い言い訳を作るようになってしまったのです。チーン!



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