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英国でサル痘を疑われて隔離された話

お久しぶりです。
このnoteの存在を忘れていました。

パンデミックの直前にたまたま日本に帰国して、うっかりそのままイギリスに帰れずにいました。
同じような状態にあった邦人の方も多かったのではないでしょうか。

さて、なんと3年ぶりにイギリスに戻ることになりまして、3ヶ月ほどロンドンに滞在していました。
ロンドンでは、皆様、ご存知の通り、ほとんどの方がマスクをせず日常を過ごしています。お年寄りや体が弱いと思われるアンダーライン(基礎疾患がある)の人がたまにマスクをつけているだけで、他はめったに見当たりません。

私も例にもれず、大喜びでマスクを外して3ヶ月を過ごしておりました。
3ヶ月の間、私の家に呼んだ友人が直前にコロナにかかってしまい来れなくなったり、この前会ったばかりの友人がコロナだったと判明したなど、頻繁に感染者に出くわすことがありましたが、いずれも濃厚接触には当たらず、特に新型コロナを発症することなく、ロンドンの滞在は終りました。

せっかくイギリスに来たのですから、ヨーロッパの他の友人たちにも会いに行こうと思い、スイスやフランスの友人にも会いに飛行機に乗りました。
スイスは物価が高いことで知られています。ジュネーブの友人の家に泊まったのですが、1ヵ月の駐車料の1台分の代金が60,000円位だと嘆いていました。
地元の友人達と一緒に食べに行ったバーガーキングのハンバーガー単品の値段が2280円だった事は忘れられません。

スイスのジュネーブからフランスのリヨンに移動し、そこでも友人の家にお世話になりながら楽しく過ごしておりました。そのリヨン一日目に右足に発疹が出たのです。虫に刺されたのかと思い、その時は放っておきました。
まさか、これがその後の悲劇の始まりだと思いもせず…。

その後、イギリスに帰国した翌日、夜ベッドに着く前に突然両脚に変化が。
突然膝の下の各所が赤くぶくぶくと膨れだし、沢山の小さな水疱が無数に出現したのです!
最初は何が起きているのか分からなかったのですが、脚が大変なことになっている間、私はなぜか地元のおばあちゃんの電話の話し相手になってあげていたこともあり、「脚がなんかやばいけど、このおばあちゃんも話長いなぁ…。話が切れないなぁ…」くらいにしか思っていませんでした。

おばあちゃんがひたすら話している間にも、小さな無数の水泡は隣の水疱とくっついて大きくなっていきます。ああ〜これ、ラーメンの表面の油の輪っかをつなげる遊びに似てる〜とか呑気なことを考えていました。しかしおばあちゃんの話は止まりません。そのうち別の電話が入り、おばあちゃんのお話は強制カット。何とかお話し地獄から抜け出した私は、イギリス人のハウスメイトに「ごめん、今から車出して!私を病院に連れてって!」と叫んだのでした…。

こうしてイギリスの病院にたどり着いたのですが、イギリスは日本と医療制度が異なります。まずかかりつけ医のもとに予約をしてから行くのが手順であり、突然予約なく病院に行くというケースはあまりありません。この場合は急患(Accident & Emergency)という扱いになり、病院のそれ用の玄関から入り手続きを行うことになります。

さて、受付してもらったはよいものの、自分は皮膚に異常があるからといって皮膚科医の先生が来てくださるわけではありません。ここは急患ですから。
30分ほどして「どうしました〜?」と看護師の方がまず様子を見に来ます。
「あー、なんか水疱ができちゃって…。アレルギー反応ですかねぇ?」と脚を見せるためにズボンを捲り上げたら、その瞬間。
ピューーー
ピューーー
と、脚を上げた衝撃?のせいか、そこらの水泡が水鉄砲のように液を噴射してしまった…。
うわぁ…。やば…。

気まずくてチラッと看護師の方を見たら、彼女は私の脚の様子を見るなり真剣な面持ちでパッと立ち上がり、「自力で歩けますか?こちらの部屋に来てください」と有無を言わさず別室に移動させられた。
後ろを振り返れば、私がさっきまで座っていた椅子は、既に別の看護師が防護手袋で消毒していた。

あ。
なんか。
疑われてるな、これは。

この時、察しました。
そう、この急患棟、入り口に看板があったんです。
「Monkey Pox(サル痘)罹患者は入らないで下さい」ってね。太めの赤文字で書かれてね。

えーーーー
違いますーーーーーー
私、疑わしいことは何も!

ここからが長かった。
もしかしたら建物の中に入れてはいけなかった患者を受け入れてしまった病院側としては、この哀れな患者を追い出すわけにもいかず、出入り口に1番近い隔離室に案内したってわけ。
ロンドンってね。9月の夜は寒いんですよ。ダウン着ている人もいるくらい。
おーーーーーい。
出入り口からめちゃくちゃ風吹き込むんですけど!っていう場所で5時間医者が来るまで隔離されるはめになりました。
もちろん想定内だったので、コートもスマホも充電器も本も持ってきてたので、意外に不自由しませんでした。なにせ患者用の椅子の横に電気プラグがあるのだから…助かる。

途中、フィリピン人かネパール人か、看護師さんが何度も様子を見にきてくれて
「寒くない?」
「こんな寂しいところに隔離してごめんなさいね、もし辛かったら先生に移動をお願いしてあげるから」
「先生は今あなたの前の前の患者を見てるから、あと1人よ」
と何度も声をかけてくれました泣
天使か…?˙˚ʚ( •ω• )ɞ˚˙
惚れてまうやろ…とニヤニヤしていたら看護師さん「こんなこと聞いてごめんなさいね、一応女性が聞いた方がいいと思って。サル痘を疑われているので尋ねる規則になっています。ここ最近誰かと性交渉をしましたか?」と質問してきた。

はいはい来るとおもってたよ。

はぁ、してません。
と答えたら「ありがとう、先生に伝えておきますね」とその場を去った。

なんだ?イギリスのくせにやたら気が効くじゃないか。イギリスってそんな国だったっけ?もっとガサツで、デリカシーのデリぐらいしかないと思ってた。

悶々と考えつつ、私はその5時間の待機の間ずっと、某中国の動画サイトで日本語テレビ番組を観てクスクス笑ってただけなんですけど…

そんなこんなでやっとお医者様登場!
部屋に入るなり「この症状はいつから?」と早口の質問。
アフリカ系の黒人の男の先生で訛りが強い。イギリスはアフリカから優秀な医師を引き抜くことがあるから、この人もその類なのかもしれない。

いやー実は昨日までフランスにいてー
と説明したらこの先生、ぶっきらぼうに
「フランスで誰かと寝たか?」


おおおおおおおいいいいいい

寝てないわ(怒

てかさっき看護師の人に同じ質問されたよ。

何だったんだよあの気遣いは。

まあ、さすが西ヨーロッパ。合理主義の国。

まあその後は一度家に帰されて3時間睡眠ののちにもう一度病院に来る羽目になったんですけど、
その時も別の医者に
「最近誰かとセックスした?」
と聞かれた。

いやだから違うって。
もういいよ飽きたよ。

そんなこんなで血を抜かれ水疱の液体を抜かれ、
サル痘ではないと判明するや
「感染症ではないみたいだから、もう来なくていいよ!」の一言。
いやいやいやいやいやいや薬くれよ、と言ったものの「虫に刺されたのかもしれないし、病気かも分からないから出せない。口の中に水疱ができたり、1か月経っても治らなかったらまたきてください」と言われた。


うぇええええええええ

そうです。既に両脚ゴルフボール大の大きさに育ってしまった水疱達と、(1番大きいヤツは3つ分くらいの大きさがあったのだ…)、私はこのあと1か月半を薬無しで過ごす羽目になったのです…。しかも外国で。

どうするのよ…。
ネットで調べたら、タオルを巻くことができなかったらサランラップを巻くといいと書いてあったので、サランラップ巻いたり、可能な限りタオルでぐるぐるにしたり、それでも液が漏れ続けるのでヨガマットをベッドの上に引いて寝たりしてました。
脚の膝の裏側にも水疱ができるので、下半身は曲げて寝るか、ベッドの外に出して浮かせて寝る。
そんな生活が続いたのです…。

その後、もうやってられんと再度病院に行き、皮膚科医に診てもらったところ、とっても親身に対応してくれました。生体検査の結果は「おそらく類天疱瘡」るいてんぽうそう?
自己免疫疾患の一つだそうです。自己免疫が自分を攻撃してしまう…。
何とも面倒臭い難病です。

実はイギリスにいる間には生体検査の結果が出なかったので、日本の私の携帯電話に、イギリスの皮膚科の先生がわざわざ国際電話して診察してくれました。
何て親切…!ロンドンの病院に長年勤めている友人が言うには、これはかなり例外的な親切な行為らしい。

今は日本で治療中です。
帰国前日にやっとこさステロイドをもらえたので、飛行機の中では何とか水疱を抑えることができました。全くもう。

そうそう、この記事の写真は紅茶です。
イギリスの病院では、待ち時間に紅茶が無料で振る舞われることがあります!

さすがイギリスや〜
この温かみで緊張が一気に溶けたので思わず撮った一枚でした。

おしまい。

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