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猫になった宇宙人(13)


猫になった宇宙人(13)

今日も少女は学校に行こうとはしない。
母親は、いつも午前1時ごろに帰ってきて、9時までは寝ている。
私は、少女と一緒に寝ている。同じ布団に入って。
今は、8時35分だ。
そろそろ、母親の起きてくる時刻だ。

少女は目を覚ましているが、布団から出ようとは思っていない。
何も考えてもいない。
私は寝たふりをして、少女の意識を読み取っていた。
いわゆる、タヌキ寝入りだ。 猫もタヌキ寝入りができるのだ。

「雅子、雅子、起きてるの?
 学校行かないとダメでしょ!」
と、階下から聞こえた。

(行きたくない!)少女は思っているが、口には出せない。

母親は、少女の部屋に入ってきた。
この人は、さほど臭くはない。
しかし、自己中である事は間違いない。

地球人は他人の心が読めないので、どうしても自己中になってしまう。
それが国にまで及ぶ時、他国の事より自国の優先になる。
そして、戦争。  
愚かな事である。
お互いが他の人の事を考え、お互いに思いやりを持てば、
少女の様な家族には絶対にならない。

「雅子、もう学校に行く時間過ぎたでしょ。
 何故行かないの?学校で嫌なことされてるの?」

(今頃気づいたの?お母さん。遅いよ。随分と前から学校行って無いよ。私の事なんか、関心無いよね。)
少女は母親の目線を逸らしながら、その様に思っていた。

「何か言いなさいよ。黙っていたら分からないでしょ!」

喋らないとわからない、ここが地球人の辛いところでもあり、私からみたら、劣っているところだ。
これが、私達の様に言わなくれも分かり合えたらお互いに理解ができる。

少女は、母親の方に顔を向けてはいるが、目線は逸らしている。

(何も言わないし、言いたくもない。
お母さんなら、私にもっと関心持ってよ。
私の心ぐらい分かってよ。)

母親は、どうしようも無いと思いながら、どの様に対処すべきかを
考えている。
母親は少女の寝ている、ベッドに座った。
私は起き上がりベッドの下に行った。
 
「どうするの、学校休むの?そんなことして、勉強分かるの?」

母親は本当に少女の事を心配している。
少女の将来を真剣に思っている。
でも、少女は何も言わない。

私が少女の気持ちを伝えたくて、母親に発した言葉が
「にゃ〜お」だった。

当然だが、人間には理解出来ない。
私はもどかしく感じた。

私が少女に向かって
「何故、母親に本心を言葉で言わないの。
思うだけでは、伝わらないよ。」と、発した言葉が

「にゃ〜ご」だった。


「この猫、お腹空いてるんじゃない?さっきから、泣いているよ。
お腹空いたって言ってるよ。」

(違う違う、そうじゃそうじゃない)と言っても
「ニャ〜ア」だった。
悲しい現実だ。

「雅子、朝ご飯まだでしょ?お母さんと一緒に食べよう。
猫も一緒に。」

少女の気持ちが一瞬明るくなった。
母親を無視してはいるが、少女も母親を求めている。
素直に母親に表現すれば、母親に分かってもらえるのに、
少女は嫌そうに振る舞った。

仕方無さそうに、布団から出て、下にある台所に行った。
だが、少女の気持ちは嬉しさを隠せない。

地球人は言葉に発し無いと理解出来ないのに、何故 心と裏腹な態度をとるのだろうか?
本当に不思議であった。
その為に誤解を生み
お互いが信頼出来ない関係になっていくのでは無いかと思った。

心に感じた事は素直に表現した方が、他の人の為にもいい事だ。
分かり易くする事によって、信頼も得られるであろう。

私は少女の後を追い下の台所に行った。






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