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私は誰⁉️(21)


小説 私は誰⁉️(21)


「将棋を指してみたい」と言う私の要望に、席主から紹介された
 相手は50代の初めの男性であった。
 私の実力が分からないと言う事で、3級の人が相手であった。

 将棋を指していく中、ほとんど考えずに指しているのだが、
 身体が覚えているみたいで、どんどんと指してが進んでいく。

 三級の男性は、考えながら指している。
 席主は私の将棋を見つめながら
 「君は初段以上あるよ」
  と言って、元の席に帰って行った。

 結果は、私の勝ちであったが、何故勝てたのかは、
 分からなかった。

 次に相手してくれたのが、ニ段の男性で私と同じぐらいの年齢に
 思えた。
 その勝負も私の勝ちであった。
  
 「君、相当強いよ。いつ将棋を覚えたの。」
  と、席主が聞いてきた。
 
 いつ将棋覚えたかは、全く分からない。
 どの様に答えていいのか、分からないまま、
  
 「子供の頃ですが、最近将棋をしてないので、自分の実力が
  分からなかった。」
  と、無難に答えておいた。
 
 「今度は、この人とやってごらんなさい。」
  と、紹介されたのは、20代の始めぐらいの男性であった。
 
 不思議な事に段々と、対戦相手が若くなって行った。
 彼は、四段との事。
 私の将棋の実力は四段位なのか?と思いながら指していた。
 私達の将棋に関心があるのか、店にいた客が観戦している。
 すると、その一人から声を掛けられた。
 
 「オタク、水島君ではないの?」

 私は、その人を当然だが、知らない。その人は、私が来る前から
 この店で将棋を指していた人であった。
 ここが大事なところだ。
 やっと、私を知っている人を見つけた。
 と言うよりも、見つけてもらった。

 「はい、水島ですが、すいませんが、どちらの方でしょうか?」
  と、丁寧に聞いた。
 
 「覚えてないの?本当に。大学生の時よく将棋したでしょ
  大林だよ。覚えて無いのか?」
 
  と、親しげに聞いてきた。友達だったみたいだ。
  ここは、素直に本当の事を言った方が良いと判断した。
  この人を信じよう。いや、信じなければ真相が分からない。
  
  「御免なさい。僕、交通事故に遭って、そのせいで記憶を無く     
   しているのです。
   お願いがあるのですが、私の事教えてもらえませんか?」

   周りにいた客は驚いていた。席主も驚いている。
   記憶を無くした人を初めて見たのであろう。
   大林君も驚いて、この様に教えてくれた。
   
   僕は大学生の時、全国学生大会で、ベスト4に入り
   僕は結構有名であったと。
   大林君とは大学も同じでよく将棋を指していた
   時々、食事をしたり、大林君と遊びにも行った事が有り、
   学生時代は仲の良い友達だった。
   僕の名前も水島学(マナブ)で間違いが無いとの事。
   兄弟がいたかどうかは、僕からは聞いて無い。
   僕の親にも会ってはいない。
   僕がどの様な、研究をしていたかは、知らないが
   僕は結構優秀な生徒で、教授からも一目置かれていた。
   将棋クラブと読書サークルに在籍していた。
   結構、女性から人気があったとの事。(嬉しい)
   でも、親しく付き合っていた女性は、見た事は無い。
   大学を卒業後、大林君は田舎に帰り、僕と会う機会は殆ど
   無かった。今日は出張でたまたま、時間が出来たので
   ここでは以前から将棋をしているので、来てみた。
   
  大林君はこの様な事を、僕が将棋を指している間、
  語ってくれた。
  遂に、私は水島学である事が判明した。
  この続きは次回。
   

   
 

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