見出し画像

(新)三つ子の魂百までも(21)


21

徹夜の作業が終わり、僕と裕美さんは激しく求めあった。
特に裕美さんは、強く求めてくる。
あの様な異常な事をしたのだ、仕方がない
僕は、裕美さんの要望に応えるべく、ある場所を探した
林田さんも求めてくる。

誰が言うとも無く「お腹が空いた」

林田さんが言う
「この辺りに、深夜食堂 と云う店があります」
と、私達を案内してくれた。

この深夜食堂は午前0時から7時までの営業である。
時計を見ると午前5時25分。
私達は、その店の引き戸を開けた。
客は誰も居ない。
一人のおじさんが、「いらっしゃい」とぶっきらぼうに声をあげた。
店は広くも無く、カウンターになっており7〜8人ぐらいは座れそうだ。メニューは壁に貼ってあるのだが、
豚汁定食 六百円
お酒はビールと日本酒。
ただし、お一人様三本までと書いてある。

「此処は、豚汁定食しかないのでしょうか?」
と、僕は不思議に思って聞いてみた
すると、男が
「注文してくれて、出来るものであれば作るよ」
と、ぼさっと言った。
「卵焼きできますか?」
と、裕美さんが聞く。
「あいよ♪」と、愛想の良い声が響いた。

「じゃ僕も、卵焼きと豚汁定食」
と、元気よく注文。
「おじさん、ビール一本下さい」と、裕美さん

「私は、焼きそばとビールをお願いします」
と、林田さん。
「あいよ♪」と明るく云う

林田さんは此処を何度か来ているみたいだ。
林田さんが云うには
「ここの料金は一律六百円だ」
との事。解りやすいし計算しやすい。

三人で和やかに食事をしながら
今後の打ち合わせをした。
裕美さんが、
「林田さんが撮った写真を見れば、正太さんの霊を確認する事が可能でしょう。今回の依頼の案件はこれで終了します。

でも、今起こっている恐ろしい事件の解決は出来ません。
これは妖怪😈の仕業です。
本当に凶暴で恐ろしい妖怪です。
私の力ではどうしようも出来無いです。」

と、裕美さんにしては弱気な発言だった。

「そうですね。こんな事を警察に言っても信用してはくれない。」
と、林田さんもビールを飲みながら、力無く言った。

「この豚汁美味しいですね😋」
と、おじさんに言ったら、嬉しいそうに微笑んでくれた。
ぶっきらぼうに見えるが、人の良さそうな気がした。
此処での食事を終え、それぞれ帰宅の途についた。

3日後、松田夫妻が出来上がった写真を持って事務所に訪れた。

その写真を見ながら、裕美さんと林田さんは説明をする事になっている。

松田夫妻との簡単な挨拶の後、いつものソファーに座って
私と裕美さんは並んで座り、夫妻と対面した。
林田さんは別の椅子に座り、代表の直美さんと並んでいる。

「これが、写真です。」
と、正一さんは封筒を渡して来たが、
まだ開封されていない。
夫妻は「写真を怖くて見れない」と言っている

封筒を受け取り、写真を出す裕美さん。

最初の写真には、暗闇の中にモヤっとする物と、
裕美さんが瞑想する姿が写っている。
裕美さんは、一枚目の写真を手に取って、
「このモヤっとしたのが、正太さんの霊ですね。
煙の様に見えますが、間違い無く霊です」
と、断定した。
林田さんは頷いている。
直美さんは、信じる事が出来ない顔である。
二枚目の写真を見て裕美さんが云う、


「この写真にも写っていますね。一枚目よりも明確に写っていますよ」
差し出された写真を見ると、白くもやっとした物が鮮明に写っている。
「そんなの、煙じゃないの?」と、自信の無さそうな声が聞こえてきた。
発したのは直美さんだ。小声だが明確に聞こえた。

その言葉を気にせずに、3枚目の写真は
白いモヤが裕美さんに、まとわりついている!
……蝋燭の煙では無い!……
と、僕は強く感じた。
直美さんも、この写真にツッコミを入れる事は出来なかった。

その写真を見つめながら、裕美さんが
「この時、正太さんの想いを感じました。
初恋の話をしてくれている時の写真だと思います。」
と、解説してくれた。
その様に見ると、正太さんの霊が、裕美さんにハグしている様にも見える。
「あの〜霊ってこの様にモヤッとしたものですか?」
と、僕は疑問に思って聞いた。
……もっとハッキリ出てきたら、疑わずに済むのに!……
と、誰もが想う事であろう。

「そりゃそうでしょう。霊って形が無いんですよ。
人間の形で出てくる方が少ないですよ。
でも、出てくる霊もいますよ。」
林田さんが云い、さらに言った。
「私が思うには、死んで間が無いと形には成りにくいのでは無いかな。年季の入った霊だと形になり易い。」

https://note.com/yagami12345/n/n33c4d1d98bc2


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?