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(続)三つ子の魂百までも13


13

会議も無事終わり、私達三つ子の兄妹で食事する事になった。
直美さんと伊東は帰って行ったが、裕美さんは僕達の中に参加した。
皆で食事した後、カラオケにも行った。
裕美さんは歌が上手い。美乃も上手い。
僕と修はイマイチである。
同じDNAを持つ者同士だ、当然と言える。
僕達2人は聞き役であり、盛り上げ役だった。

修は、この様な場所には余り来ないと言っていた。
でも、楽しそうだった。

修とは、双生児でありながら、何故これ程まで違うのだろうか?
育った環境の差であろうか?
それとも、同じDNAであっても、元々違うものなのか?
修は、沈着冷静、頭脳は優秀。几帳面だし、約束も守る。
時間に対してもルーズでは無い。
残念な事に僕には、修の様な所は余りない。
僕が優っているのは、体力だけだ。

修と僕と比較すると、美乃がどちらと懇意にするか判る様な
気がする。
その事を考えた時、僕は凄い劣等感に襲われた。
自分で自分が嫌いに思えた。

でも、修と似ている所もある。
一つの事に集中する事。女性に対してシャイな所。
それと、女性に対して一途な所だ。
と、言っても一途に想う女性は二人とも持っては居ない。
モテない所も似ていると言える。

修は僕に向かってポツリと言った。
「公ちゃんが羨ましい」と。
カラオケの音で聞こえ難かったが、ハッキリと言った。
「公ちゃんは、友達も多いし、皆とこの様に仲良くしてるんだね」
と、本当に羨ましいそうに言った。
だが、僕はその言葉に対して何も返答する気持ちになれなかった。

修の今までの人生はどの様なものだったのだろうか?
同じお腹から産まれたのに、それぞれの養父母に育てられ、
違う人生を歩んでいる。修だけでは無い、美乃もそうである。
私達が幸運だったのは、養父母に愛情を注がれ育ててもらった事だ。

僕が明るく育ったのは、養父母のおかげの様な気がする。
能天気なお母さんと、頼りないが僕を束縛しないお父さん。
勉強する事を強要された事は一度も無かった。
自由にさせてくれたし、僕の意見を尊重してくれていた。
本当に楽しく、愉快に過ごさせてもらった。
修の様に、お金持ちで豊かな暮らしでは無かったが、貧乏を感じた事は一度も無い。

修の家は、お金持ちで裕福に想えるが、もし僕が修の養父母のところで、育ってられたら、どうなっていたのだろうか?
修の養父は威厳があり、僕は反抗すらできない様に思う。
僕は、修みたいに勉強しただろうか?
その事を考えると感慨深い想いがした。

自分で自分を嫌ってしまっては、今まで育ててくれた養父母に
申し訳が立たないと、私は強く感じた。
「そう私は、私だ!私らしく生きていこう。
たとえそれが、人から観て幼稚な男であっても!
自分に嘘をつく事も無く、誇りをもって生きていこう!」
と、カラオケを聴きながら決意を固める僕であった。

そんな事を考えながら、僕は新美浩市の事も考えていた。
新美は、親を知らない。養父母も居ない。
彼は、養護施設でどの様に育って行ったのか?
どの様に育てられたのか?
私達とは違う彼の境遇に、好奇心と複雑な気持ちが湧いてきた。
新美浩市とは、どの様な人間か?
新美浩市を知りたい!

次の日、僕は伊東と一緒に新美の所属していた大学に足を運んだ。



連続して投稿します。読んでくれると嬉しいです。

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