春ギター(410字の小説)
兄はいつもギターを抱えてる。
「ギターが恋人」と兄が言う。
何故恋人が居ないの?
妹の私には解らないわ。
兄は妹から見てもかなりのイケメン。
彼女が居たって不思議では無いのだけど
出不精が祟っているみたいで出会いが無いみたい。
最近兄のギターの音色が変わってきた。
穏やか音色。
まるで春の季節みたいな癒しの音色。
私は畏敬の念を持ち「春ギター」と命名した。
それを兄に伝えてたい。
自分の作曲した曲に歌詞を考えているのか
兄は何か書いている。
そして歌い出す兄。
兄の姿はまるでプロの歌手みたい。
歌詞の内容は、恋の歌。
兄にもやっと恋愛の季節の到来だね。
でも、不思議。
兄が突然涙ぐむ。
恋愛の歌が、失恋ソングに変わる。
「何故、失恋の歌にしたの?」
と、兄に聴いたが黙って私を見つめてる。
「お前には関係無いよ」と 言いたげに、横を向く兄。
そんな態度は、許せない。
しつこく、追求する私。
「ねえ、何故失恋ソングなの?」
兄がポツリと言う
「だって、お前が妹だから」
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