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(新々)三つ子の魂百までも 6


林田さんの目は、裕美さんを追っていた。
暫くすると、裕美さんは、お盆にお茶碗を乗せ、
お菓子付きでやって来た。
そして、お茶碗をテーブルに置きながら、言った。

「この事件を取材するのですか?霊の写真を撮りに行くのですか?」

と、裕美さんにしては珍しく、無機質な声で冷静に言った。

「そうですが、まだ取材するかしないかは、決めて無いです。
ただ、事件の解明がこの少年の願いでもあります。」

と、かしこまった言い方をする林田。

「そうですか。」
と、言いながら、裕美さんは腰を下ろした。
何か、引っかかるものがあるみたいだ。

「裕美さん、この事件は、ヤバイのですか?」
と、僕は疑問を投げかけた。

「ヤバイでしょ。人が死んでるのよ。普通はヤバイと思うでしょ」
と、そっけなく言う。

「だったら、取材辞めた方がいいですか?」
と、僕が林田さんの事を気遣い聞いてみた。

「辞めた方が良いと思うよ」

「ですって、林田さん。裕美様の御意見は『辞めろ』でした。」

と、少し茶化す様に言いながら、お菓子を手に取った。

「そうですか・・・・。出版社は乗り気なのですが・・・・」
と、残念そうに声を出す。そして次に言った言葉が

「『この都市伝説を見事解決できたら、売れるよ』と、出版社の人も言っていたのですが・・・。そしたら、大きな収入が得られるのに・・・」
と、含みを持たせ、さらに残念そうに言った。

「大きな収入?・・・・。で、いくら位の収入ですか?」

と、裕美さんの目の色が急に輝きだす。
「それは、判らないですが、売れ行きによっては、数千万かな?
何しろ、噂の霊界スポットですからね。話題性はありますよ。」
と、声を弾ます林田さん。

裕美さんの疲れの表情が、いっぺんに吹き飛んだかの様に、
いつもの、裕美さんに変身するのであった。

「それで、私はどの様に協力すればいいのですか?」
と、裕美さんの熱のこもった声。

「この前の様に霊を呼び出す事できますか?」

「いえ、今回のは、恨みを持った怨霊です。
呼び出す事は危険を伴います。
無理です。」
と、悲観的に云う。

「そうですか。・・・呼び出すのは無理ですか、・・・」
と、残念そうに左頬に手当てうつむく。

「林田さんが、そのビルに行って写真を撮ればいいんじゃ無いですか。」

僕は無責任な提案をした。

「写真ですか・・・・。霊の写真ですね。
最近、撮れなくなったんです。
・・・心が汚れたみたいで・・」
と、悲しそうに言った。

「心が汚れた? 何故汚れたと解るのですか?」

と、素直な疑問である。


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