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ニノ映画出演の「浅田家!」

中野量太「浅田家!」(徳間文庫)。嵐の二宮和也さん主演で、東宝で映画公開予定(10/2〜)の実話。三重県津市の浅田家は、主夫の父・章、看護師の母・順子、兄の幸宏、弟の政志の4人家族。奔放な政志は、写真撮影好きだった父親の影響を受けて、カメラマンを志す。しかし何を撮りたいか判らずに煩悶していた出口は、家族写真だった。それも父・兄・弟の三人がケガをして、母親の勤める病院で一堂に会した集合写真の再現。ここから「家族」というモチーフを見つけた政志は、家族写真を15枚撮って、東京に打って出る。幼なじみのガールフレンド若菜の家に同居して、カメラアシスタントとして働きながら、出版社へ写真集の売り込みを続ける。なかなか目の出ない政志のために、ギャラリーを借り切った若菜。そこから運が動き始める。ギャラリーとして来た出版社が気に入ってくれて、刊行された初写真集。そしてその作品が、カメラマンの芥川賞と呼ばれる「木村伊兵衛写真賞」を受賞する。本物のプロカメラマンとなって、全国各地で家族写真を撮り続ける政志。そこに起こった東日本大震災が起こり、政志は価値観を根底から揺り動かされる。そこで政志が取った行動は。。。
 TikTokで「時を戻そう」という投稿が流行っている。数十年前に撮った家族写真のままに、歳を重ねた家族が同じポーズを取るという趣向だ。Simple Planというバンドの「I’m just a kid」という優しい曲がBGMで流れる。楽しかった家族の思い出を改めて噛み締め、育ててくれた親への感謝の念を新たに出来る。主人公の政志も、家族にとって最も印象深かった事件や、大切な思い出を引き出す工夫をしながら、創作写真としての家族写真を撮る。そのショットは、家族の幸せな時間を切り取ったものだ。そして出演者は有名俳優でもなく、著名解説者でもない、市井のかけがえのない家族である。家族には幸せな時間ばかりではない。その一員が病に倒れることもあれば、欠けてしまうこともある。状況は刻々と変わって行っても、かつてあった幸せの瞬間が存在したことは変わらない。それを証明するのが写真である。東日本大震災の災害救援に来た自衛隊員たちが「瓦礫の中のCDやDVDは踏めても、写真は踏めない」と言ったことは、写真が写っている人々の人生そのものだからであろう。

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