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瀬名秀明「エヴリブレス」

瀬名秀明「エヴリブレス」(徳間文庫)を徳間SFコレクションとして電子復刻。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B093WLKTDV/
 奈良県は大和郡山市の高校時代、文化祭の夜に、久保杏子は生徒会の先輩である野下洋平に連れられて、世界の果てを見せられた。そこから身を翻したことで、思慕する先輩とは卒業後に離れ離れになった。大人になった杏子は、証券会社のクオンツ(高度な数学的手法を用いてさまざまな市場を分析したり、さまざまな金融商品や投資戦略を分析する人)を職業に選ぶ。そのことが彼女の目指した生命の根源を探る科学であった。一方で洋平は世界的なデザイナーとなっていた。その後、BREATHという仮想空間ゲームの中で洋平を求める杏子の分身。しかしやがて分身である自分と杏子は訣別する。杏子の娘である柚希、孫娘である瑞希に、その思いは引き継がれてゆく。
 自分の生きた現実の世界と、パラレルに存在するヴァーチャルな世界。その二つの空間を通して、高校時代から続く慕情を互いに交信を試みる二人。しかし決して邂逅することはない。一方で高校時代に学んだ物理から、生命の意味を解明する人生を選んだ主人公。限りない抽象化の果てに見え隠れする真実。炎のように燃え盛る永遠の愛と、背筋をピンと伸ばした学究の物語である。

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