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笹本稜平「公安狼」

笹本稜平「公安狼」(徳間文庫)。電子書籍版はこちら↓
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 学生時代に、映画同好会を装った極左団体にオルグされた唐沢龍二。映画同好会は、自分の名前を名乗らず、映画俳優名でお互いを呼び合っていたが、リーダーとなる主犯はハンクス。唐沢は久美子にレオナルドと命名された。結果的に恋人の久美子を、自爆テロ事件の犠牲者としてしまった。
 このことをきっかけに唐沢は、公安組織に入り、久美子の仇であるハンクスを追う。しかしハンクスは20年も行方が掴めない。ある日突然にハンクスから「レオナルドよ」と唐沢に宣戦布告。その後のハンクスは、国際テロ組織のプロ集団と手を組んで、日本の大企業を狙った同時多発テロを予言。そこから公安の内部抗争を含む、壮絶かつ熾烈な攻防戦が繰り広げられる。単なるテロ攻防戦だけでなく、株の仕手戦まで膨らむストーリーの充実。息もつかせぬ局面の展開。決着は悲劇か、無事解決か? 
 警察小説それも公安小説である。元部下に公安出身者がいたが、毎日毎夜、スパイ容疑のある外国人の住居を見張っていたと言う。それだけ地道な捜査が求められる。本作でも、華やかなドンパチの陰に、公安捜査官の苦労がある。警察が「起こった犯罪を速やかに解決する」のに対して、公安は「犯罪が起きる前に検挙する」という誇りが熱く伝わってくる。

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